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「御岳山と日の出山」2020/08/10

都心は35度近い気温。
セミの声が風流だと感じながらも耐え切れない暑さだった。
ここから早く脱出しなければということで、奥多摩の方、御嶽に行った。

電車に乗って1時間30分ほど。見える景色に緑が増え、万緑がいよいよ生命力を見せている。駅に停車するたびに開かれる電車のドア、気怠い熱気が入り込む都会とは打って変わる。奥多摩に近づくにつれ、涼しい、気持ちよい新鮮な風が電車のなかを通り過ぎる。そう、自然の中に入ってきた。

御嶽駅に着くと人の多さに驚く。
みんな夏の暑さを避けるために、そして開放感を味わうためにここに集まったのだろう。ここから早速ケーブルカーを使って、御岳山を移動するのだった。

ケーブルカーに乗ること約6分。
山々を見下ろす高さまでくると、空気がとても涼しい。
山菜そばをいただいて武蔵御岳神社にお参りする。犬連れが多く御朱印帳にも犬が押された紙をいただいた。調べてみるとニホンオオカミが守り神とのことで、そこから犬も来るようになったのだとか。

ここ武蔵御岳神社周辺は宿坊が15軒ほどととても多い。昔の修験者たちはこんな高いところまでケーブルカーなしで登ってきたのかと考えると、自身の非健脚ぷりを嘆かざるを得ない。デスクワークの弊害かもしれない。

お参りを済ませ、日の出山に向かう。森の中に入ろうとすると、植物の涼しげな香りが鼻孔に触れる。木洩れ日は優しい光になって、土の道を照らしてくれる。靴がしっかりと大地をつかむ。やわらかい土、若干の腐葉土が柔らかく包んでくれる。自然の中に入った。

途中急こう配を下るとき、大きく右に左に迂回している道が眼下に見えた。
以前友人から言われたことを思いだした。

「お前はやりたいことを一直線にやろうとする。普通は紆余曲折を経てたどり着くんだ。だからお前は壁にぶつかりやすい」

自身の仕事のスタイル、人と喜んだり人を傷つけたり、まっすぐ行きたくてもきついし、曲がりくねって進む方が良い人だっている。そんなことを道が教えてくれる気がした。ゆっくりと足を動かして、踏みしめて歩いた。

息があがる。帽子は汗でびちゃびちゃになっている。それでも歩き続ける。そうるとだんだんと気持ちよくなってくる。右足、左足、足が前に出る。呼吸が耳の奥に聞こえる。どんどん集中する。なにも考えない。無意識に、無我夢中に、こんなときが必要だった。

日の出山の山頂は、炎天下にもかかわらず一番冷たい風が吹いていた。
熱くなった体を冷ましてくれる。
また来よう。そしていろんな道を進んでみようと思った。

帰りに寄ったつるつる温泉は、すべてを洗い流してくれるものだった。

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