COVID-19ワクチンは「2000万人を殺した」わけではありません。

COVID-19ワクチンは発売以来「2000万人を殺した」のでしょうか?いいえ、それは事実ではありません: この主張をしている記事は2022年の研究を引用したもので、そこではCOVID-19ワクチンはパンデミック初年度に約2000万人の命を救った(殺したのではない)と推定している、とこの研究の筆頭著者はLead Storiesに語っています。また、2000万人の死者という数字を出すために使われた計算は、専門家によって行なわれたものではなく、正当な研究の一部でもなく、査読を受けたものでもありませんでした。

その代わりに、オリジナルの主張ソースの著者は、米国CDCのワクチン有害事象報告システム(VAERS)のデータと欧州医薬品庁(EMA)のEudraVigilanceのデータを誤って使用したのです。これらは、「新規、異常、または稀なワクチン有害事象」を検出するための報告メカニズムとして機能する自己報告データベースです。ワクチンが健康問題を引き起こすかどうかを判断するためのものではありません。

この主張は、《Exposé》が2023年9月15日に発表した記事「専門家の推定では、COVID-19ワクチン接種が原因で既に2000万人以上が死亡し、20億人以上が重傷を負っている」(アーカイブはこちら)に掲載されたものです。冒頭は次のような物でした:

誤魔化しと隠蔽のレイヤーを剥がすと、情報通の読者にはそれほど衝撃的ではないかもしれないが、衝撃的な事実が明らかになる: COVID-19「ワクチン」は、政府が公表しているよりも遥かに多くの人々を傷つけ、殺しているのだ。

データを組み合わせて作られた推定によれば、これまでに世界中で2000万人もの人々がこのワクチンで死亡し、更に22億人もの人々が負傷している。

Experts estimate over 20 million are already Dead due to COVID-19 vaccination & over 2 billion are Severely Injured – The Expose (expose-news.com)

以下は、記事執筆時における掲載内容です:

(出典:2023/9/21 木曜日 22:08:07 UTCに取得されたThe Exposéのスクリーンショット)

記事は、Peter Halliganが2022年8月19日にセルフパブリッシングプラットフォーム《Substack》に投稿した「2000万人が助かったか、2000万人が殺されたか」というタイトルの記事を引用しています(アーカイブはこちら)。

Halliganの投稿は次のように始まっています:

Lancet誌に掲載された論文によれば、注射によって2000万人の命が救われたということだ。(注:注射されたのは「ワクチン」ではなく、 遺伝子治療であり、 それはイベルメクチンのような治療薬であり、本来は治療薬として規制されるべきものである……

20 million saved or 20 million killed - by Peter Halligan (substack.com)

どちらの記事も2つの情報源を引用しています:一つ目は『ランセット』誌に掲載された研究で、二つ目はCDCとEMAが独自に分析したワクチンの副反応データです。

Lancet誌の研究の著者であるインペリアル・カレッジ・ロンドン感染症疫学部のOliver Watson研究員は、Lead Stories誌の取材に対し、これは彼の研究の正確な表現ではないと述べています。

「我々の研究では、ワクチンによって2000万人の命が救われたと推定しています。この研究は、ワクチンの有効性の推定値を用いて、各国の伝染病がワクチンがなかったらどれだけ悪化していたかを算出したものです。遺伝子治療やイベルメクチンについては言及しておりません」、 とWatson氏は2023年9月20日付の電子メールにてLead Storiesに記しています。

この研究をワード検索してみましたが、「遺伝子治療」、「イベルメクチン」、「治療薬」についての言及は一切ありませんでした。

CDCとEMAは共にLead Storiesに対して、VAERSとEudraVigilanceのデータに関するHalliganの見解は誤りであり、彼はそのデータを本来の目的のために使用しておらず、彼の結論はいかなる証拠によっても裏付けられていないと述べています。

アイオワ大学カーバー医学大学院の微生物学・免疫学教授であるStanley Perlman博士は、この研究には関与していませんが、Lead Storiesの取材に対し、「ワクチンが2000万人を殺したことを示す証拠はありません」と答えています。

Watsonの研究はワクチンが命を救うことを示しています。

Halliganの投稿は、Lancet誌の2022年9月号に掲載された「COVID-19ワクチン接種初年度の世界的影響:数理モデル研究」というタイトルの研究を引用しています。

Halligan は、この研究が「遺伝子治療」や「イベルメクチンのような治療薬」を評価していると誤って主張しました。

対照的に、この研究はCOVID-19ワクチンプログラムの世界的影響を定量化することによって、ワクチンの有効性と安全性を評価したものです。そのためにWatsonらはCOVID-19の伝播とワクチン接種をモデル化し、185の国と地域の死亡率と比較検討しました。そして、ワクチン普及目標が達成されていれば回避可能であったと思われる、追加的な死亡者数を算出したのです。

公式に報告されたCOVID-19による死亡に基づき、研究チームは2020年12月8日から2021年12月8日の間にワクチンによって1,440万人の死亡が回避されたと推定しました。この推定値は、超過死亡(特定の期間に観察された死亡数と、同じ期間に予想された死亡数との差)を含めると、1,980万人に増加すると推定されます。

「COVID-19のワクチン接種は、パンデミックの経過を大きく変え、世界で数千万人の命を救いました。しかしながら、低所得国ではワクチンへのアクセスが不十分であるため、このような状況での効果は限定的であり、世界的なワクチンの公平性と接種率の必要性が強まっています」と、研究著者らは結論付けています。

この研究のどこにも、COVID-19ワクチンや 「遺伝子治療」が死亡の原因であるとは書かれていないし、ましてや2000万人の死亡の原因であるとも書かれておりません。

「ワクチンは遺伝子治療ではありませんが、これは反ワクチン派が主張することです」とPerlman氏は2023年9月20日に受領した電子メールに記しています。

データが意図しない目的で利用されています

自分の主張を通すために、Halligan氏は米国CDCのVAERSとEMAのEudraVigilanceデータベースを参照し、ワクチンが2000万人を死亡させたと主張しました。しかしながら、このようなデータの使用は意図されていません。

VAERSデータは追跡ツールに過ぎず、因果関係を証明するものではありません。つまり、誰でもワクチン接種後に起こりうる健康問題(「有害事象」とも呼ばれる)を報告することが可能なのです。このような報告は、医学の専門家によって検証されることはありません。

Lead Storiesが以前お伝えしましたようにVAERSの早期警告システム」は米国CDCと米国FDAによって共同管理されており、米国で使用が許可された後のワクチンの安全性を監視するためのものです。

このシステムは、ワクチンが健康問題を引き起こしたかどうかを判断するために設計されたものではなく、むしろ「新しく、異常な、または稀なワクチン有害事象」を検出するためのメカニズムとして機能するものです。

加えて、ワクチンの副反応は、米国保健当局が追跡している死因のカテゴリーには含まれていません、とCDCの広報担当者は以前Lead Storiesに語っています

「VAERSは自己報告の集大成です」、「また、VAERSからワクチンによる有害事象とワクチン事故による有害事象を区別することは不可能です」
、とPerlman氏はLead Storiesに語っています。

VAERSウェブサイトに掲載されている利用上の注意は以下の通りです:

VAERSのデータを評価する際に重要なことは、報告されたいかなる事象についても、因果関係は確立されていないということです。VAERSでは、ワクチンと有害事象(起こりうる副作用)との関連性が全て報告されています。そのため、VAERSでは、ワクチン接種後のあらゆる有害事象について、それが偶然のものであれ、本当にワクチンによって引き起こされたものであれ、データを収集しています。VAERSへの有害事象の報告は、ワクチンがその事象を引き起こしたことを証明するものではありません。

VAERS - Guide to Interpreting VAERS Data (hhs.gov)

CDC予防接種安全局はLead Storiesの取材に対し、ワクチンは依然として安全かつ有効であると考えられており、2023年1月に発表された研究は、ワクチンが2000万人を死亡させたという Halliganの主張と矛盾するものであることを示しました。

「COVID-19ワクチンの安全性に関する誤報が続いていますが、ワクチンの安全性に関する過去最大級の研究結果が発表され、COVID-19ワクチンが安全で有効であることが改めて示されました。CDCの研究結果は、COVID-19ワクチン接種後に死亡リスクが増加することはないことを明確に示しています。ワクチンを接種した人の死亡率は、接種しなかった人よりも低かったのです」と、広報担当者は2023年9月21日付けの電子メールでLead Storiesに回答しています。

「この研究結果は、全てのアメリカ人を、これらのワクチンは安全であると安心させるものです。この研究結果は、COVID-19ワクチンが広範な死亡を引き起こしたという根拠のない主張にも対抗するものです」

Lead Storiesは、VAERSを悪用したワクチン死亡に関するいくつかの主張を論破してきました

EUDRAVigilanceは、直接的な関連性ではなく、疑われる副作用を特定することを目的としたものです。

同様に、EMAのEudraVigilanceデータベースは、必ずしもワクチンとの関係やワクチンによるものではないものの、ワクチン投与後に観察された副作用の疑いに対する「安全シグナル」として機能すると、EMAの広報担当者はLead Storiesに語っています。

「患者や医療従事者から提出された副作用の疑いに関する報告は、ワクチン使用後に観察された医学的事象を記述したものであることを理解することが重要です」、「ワクチン接種後に医学的な問題が発生したからといって、それがワクチンによって引き起こされたとは限りません」、 と広報担当者は2023年9月21日付の電子メールで述べています。

「致死的な転帰を辿った症例については、たとえ剖検結果を含む全てのデータが入手可能であったとしても、本当の死因を確実に述べることは困難です。死因を判定するのはEMAの役割ではないことにご留意下さい。大部分の医薬品では、疑われる副作用の大部分は最終的に副作用として確認されることはありません」

EUDRAVigilance のウェブサイトでは、致死的転帰が報告された症例の総数は提供していません。心疾患等の特定の反応グループや心筋梗塞等の特定の反応について、致死的と報告された症例数を提供しております。1つの症例に複数の副作用が疑われることがあるため、反応群ごとの致死的症例数の合計は、致死的症例数の合計よりも常に多くなります。

ワクチンの安全性と有効性の評価には、患者の病歴、一般集団における頻度と比較した被接種集団における疑われる副反応の頻度、ワクチンがその事象を引き起こした可能性が生物学的に妥当かどうかなど、自己申告による事象以外の要因も考慮しなければなりません。

「入手可能な全てのデータを詳細に評価することによってのみ、COVID-19ワクチンの有益性と危険性について確かな結論を導き出すことが可能となります。ですから、症例報告はジグソーパズルの1ピースと考えるべきです。EMAは、臨床試験、疫学研究、毒物学的調査からのデータを含む、入手可能な全てのデータを考慮して、全体像を把握します」、とEMAの広報担当者はLead Storiesに語っています。

Lead Storiesは、2023年の研究でPfizer社のmRNA COVID-19ワクチンが「ターボ癌」を引き起こすことが証明されたとか、VAERSのデータでCOVID-19ワクチンが「1,000回接種あたり推定1人を死亡させている」ことが証明されたといったような、Pfizer 及びModerna社のmRNA COVID-19ワクチンは、重篤な有害事象のリスク増大と特に関連しているとの主張を含む、 ワクチンデータに関連する他の虚偽の主張を論破しました。

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