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菜食主義?Yes, でもあなたはお好きに。

ベジタリアンという言葉は日本でも新しいものではない。ヴィーガンという言葉も、インターネット上で目にする回数も増えてきた。今わたしが住んでいる国、ドイツでは数々のSNSユーザー、YouTubeチャンネルだけではなく、マスメディアも日々ベジタリアンやヴィーガンをテーマに発信している。友人知人との集まりがあると、彼らのうち最低1人はヴィーガンである割合はほぼ100%だ。そのような環境にいることもあって、肉食と菜食主義について考えることが、5年前は考えられなかったほどに増えた。

(当記事では「菜食主義」という言葉をヴィーガン、ベジタリアンと同義として扱う。他の菜食主義のバリエーションや、食以外のヴィーガニズムについては詳しく述べない。)


まず、わたしの立場を言うと、菜食主義を否定する理由はないんじゃない?である。なぜ菜食主義者が攻撃されるのか(フェミニズムのように)、わからない。そして肉食については、減らしていこう、肉や魚の背景を見て選ぼう、という立場。肉も魚もうまい。乳製品も食べる。だが牛肉はしばらく食べていないし、朝食で使う牛乳はオーツ麦ミルクか豆乳か、ほかの植物性の白い汁に替えた。卵料理は臭くて元々食べられない。

以下、わたしが肉食を減らしている理由について大まかに書きたい。それには大きく分けて3つの柱があって、「環境保護」、「実用性」そして「倫理」だ。


1.環境保護

肉牛に限らず動物を育てるのに必要なのは、人間と同じく食糧、つまり飼料となる植物(多くは南米産の大豆)、水、土地、酸素だ。また同様に、二酸化炭素と糞尿を排出する。動物の大量飼育ではその量と規模が問題とされている。

さらに気になるのは、そこにかかる人件費や労働環境はどうなっているのか。これは環境保護とは別の観点になるため今回は言及を避けるが、食料に限らず現代の先進国における大量消費の流れを批判する際には必要だと思う。


2.実用性

肉は高い。牛丼一杯、ハンバーガー1個はとても安く売られているし、老若男女問わず人気が高い。そういったファストフードは膨大な仕入れによってその安さが保たれているのだろうが、自分で作るとわかる。肉は高いものだ。

ディスカウントスーパーで肉はもちろん買えるが、その肉に疑問があって、わたしは買っていない。スーパーで売られている肉(と肉加工食品)の元になった牛なり豚なり鶏なりは、精肉店で売られている肉と比べて、運動量が明らかに不足しているだろうし、餌もいいものを食べていなかったろうし、そこまで美味しくないんだろう。そう思っている。

ドイツ料理として有名なシュニッツェル。動画では学生が1キロのシュニッツェルの早食いに挑戦し、自己記録更新に失敗している。また、養豚家2名の対比が面白い。一方は一般的な養豚家で、飼育規則を最低ラインで合格するだけで終わり。豚は純粋に食べ物として大きくされ、大量飼育は経済を回す上で当然かつ必要なものであるという立場。それに対し、規則の2倍広い敷地と豚小屋を構えた養豚場が紹介されている。飼育されている豚たちは自分らの行きたいスペースに移動できるようだ。そこではコストも手間も一般的な養豚よりもかかるが、肉に大きな違いが出ている。


あと実用性というか、好みの問題だが、肉や魚より野菜の方が美味しく感じる。これが大きいポイントとなっている。生でも火を通してもいけるし、多少腐りかけているように見えてもいけるのだ。なにより臭いがほとんどない。牛肉は「ちちくさい」と祖母がこぼしていたのを、今はパクっている。

味の好みに加えて、消化器官の問題だが、肉料理は使われる油が多いと18時間ほど次の食事が摂れない。焼肉は6年ほど食べていないので分からないが、おそらく危険だ。ただし茹でる料理、しゃぶしゃぶや蒸し料理はほとんど大丈夫だろう。


3.倫理

倫理というと、動物愛護や殺生反対の立場を想像されることが多いとおもうけれど、わたしの場合、マイ野生ルールによって肉食を減らしている。

わたしは四足動物一頭を自力で捕獲も出来ないし屠畜も出来ない上に、筋肉しか食べられない。内臓や骨皮、脂肪は食感や臭いが苦手で、屠れたとしても一頭から出る無駄が多くて、とてももったいない。牛スジ煮込みはプルプルも加わって、口に合わない。とんかつの脂肪、砂肝や鶏皮も残念ながら喉を通せない。こんな奴が肉を食べるなんて贅沢すぎでは?というのが私のモットーである(今、ゴールデンカムイのアシリパさんを思い出す)。

以下、広島市のサイトで「一頭の牛からとれるもの」がイラストで見られる(2020.02.19 読込)。


さいごに

日本語でTwitterを見ているため、情報が偏るが、日本人の反応は菜食主義に対して懐疑的もしくは否定的であるように見える。肉を食べたいけど痩せ我慢している偽善者といった意見が多い。それに対し、YouTubeや日常生活はドイツ語で情報を得ることが多く、日本とは若干異なる視点が見られる。ヴィーガン人口が増えてはいるけれども、肉食文化が根付いたこの国では賛否両論である。よく見かけるテーマは「菜食はトレンドで終わるのか?」「菜食は雑食主義者より健康なのか?」「ヴィーガンバーガーは大の肉好きを納得させられるか?」「ドラッグストアで買えるヴィーガン製品のレビュー」など、専門家がまじめに検証したり、街角インタビューをしたり、面白半分だったりする。どれも面白く、あるドイツ人の動画は日本語字幕をつけようかと思いついたほどだ(今はキャパオーバーなので出来ない)。

大事なことで忘れがちなことだけれど、食生活は家族構成と場所、生活環境によって大きく変わる。わたしの現在の食生活はとても気に入っているが、それはわたしが今、自分だけのために食事を用意するだけで良いからだろうと思う。パートナーは筋トレが趣味で、タンパク質を(私が好きな豆腐やナッツ類よりも)容易に摂れる肉が必要だと言い、異論はない。また子供のいる家庭でも、もしかしたら肉が必要なのかもしれない。だが、それについては生まれた時から肉を食べたことがない友人を見ていると、「肉なくても大きくなるんだな」と思う。

個人がそれぞれ違った身体、体質、思考と嗜好をもっているのだから、一概に菜食主義の善悪を唱えることは不可能だろう。そもそも、すべてのものが善悪で分けられないように、この議論も二極ではないと思う。ひとは好きにやればよい。


最後に本のおすすめ。

日本で学生をしていた頃、病院の待合室で読み始め、診察に呼ばれて中断されたため翌日に市の図書館で借りて続きを読んだ。屠畜業とは何をやっているのか、どういう人が携わっているのか。面白く一気に読める。


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