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#26 「恋バナ(持てるものは2つfeat.Oyaji)」3

彼女は、キラキラした眼差しで、『それで!それで!』と言わんばかりにニコニコキラキラしていた。
という表情はしていたが、真剣に聞いてくれているのを感じたのはいうまでもなく、
言葉を選びつつ、多少の脚色をして説明をした。

「生徒会の仕事が、そのあとすぐに終わってさ一緒に帰ることになったんだけどさ。俺も若くて、いろんな話をしながら帰ったんだよ。
あ、これが付き合うと毎日できるのかーなんて思ったりましたんだよね。悪くないなーって。」
「そうだよねーなかなか異性と二人きりになるケースって中学生ってないしねーそれで?」
相槌が思春期の女子目線でこそばゆくなる。

「【どうして俺なのか】とか【いつからなのか】とか、当時の俺を振り返るとほんと【がきんちょ】だなーって思ったんだけど、今考えたら、ホント絵に描いたような青春のワンカットだなーって」

「…」

真剣に俺の次の言葉を待っている。
なんで、そんな真剣なのか。

「学校の裏から少し遠回りして帰ってたんだよ。そしたらさ、なんと、仕事帰りの親父の車が通るわけ…そしたら、親父はこっちを凝視しながら通り過ぎてったんだよ。あの時は『見られたー』って思うと同時にさ、脂汗が出てきてさ…」
「お父さんと仲悪いの?」
「仲悪いなんてことはないけどさ、なんかこういう時って見られるの嫌じゃない?」
「まぁねーでも、私は結構オープンだったから、付き合ってた男の子はみんな家族知ってたよー」
「まー経験値のない俺だからさ…そこはそういう状況だったんだ。まーそれで、その女の子を家まで送り届けてさ、帰ったわけ。そしたら…」
「そしたら????」
「親父が仁王立ちして待ってるんだよ…だけど、怖いっていうよりは、なんか一教師のようなさ。ちなみに親父は中学校の体育教師なんだけどね」
「そうなんだねー親としてもだけど教師のオーラも見えちゃったんだねー」

「ただいま、おかえりの恒例をしてさ、家に入ろうとすると、「あの子は誰なんだ」って、聞いて欲しくない確信に迫るわけさ。俺は何を動揺したのか「告白されて一緒に帰ってた」
正直になぜか言っちゃうわけ…ごまかせないのがわかったからだと思う。「それでゆーたはどう考えてるんだ?」って聞かれればさ、「2年生の時まで、一緒に生徒会で書記やっててさ…」って言ってたらさ、喰い気味に「そういうことじゃなくて、お前の立場とどうしようと考えてるんだ」って…」
「えーそんなこと言われたんだーいーなー私なんか、親に「どこまでいったんだよー」とかぐいぐい聞かれてたけどねー」

「それがいいよ。でさ、「お前は生徒全員から票を得てなった唯一無二の生徒会長だよな。みんなを同じように対応するべきなんじゃないのか?」って言われたけど、思春期真っ只中な俺は『俺も恋愛くらいしたって…』と思ったのが表情に出たのがわかったのか、諭すように今の俺の教訓になっていることを言ったんだ。」

真剣に彼女は俺の親父の次の言葉を待っていた。

Q .今一番やるべきことはなんだ
A .学業
Q .次にやるべきことはなんだ
A .部活で県大会に行くこと

これを踏まえて聞いてほしい
今1番やるべきことを右手(利き手)
次にやるべきことを左手(逆の手)
人間の手は2つだ
その2つが埋まっている状況で、どうやってその女の子を持つつもりなんだ?抱えたとしよう。
抱えることに必死になって、手にある物が疎かになる
そしたら全て中途半端でダメになってしまう。

「「よく考えなさい。」と言われてさ、俺は妙に納得をしてしまったんだ。
そのあと家に入ってご飯をいつもと変わらずに食べてさ、ベッドの上で、考えたんだんだーいわゆる天使と悪魔(笑)
天使は、
『大事なことを犠牲にしてまで付き合う必要があるの?』と言う。
悪魔は、
『彼女とこっそり付き合ってもバレないし、ゆーたならこなせるさ』と言う。
悪魔の言い分で、【こなす】って出てきてさ。
こなすって、100%ではないよね。よくて各30%だよね。
どれかの比率を上げればどれかが疎かになる。」
間が開き…目頭に涙が溜まっていた。
『え???』と思って、声を彼女にかけようとすると、

「それでゆーたさんはどうしたの」

「断ったんだ。もちろん親父に言われたんじゃなくて、俺が決めたことを伝えたよ。勉強も野球も全力で頑張りたい。それに好きだけど…だけど、付き合えないって。ね。」
「辛かったね…ゆーたさんも彼女も…」
その時の心情を言葉にしてくれた。

けど、その話には続きが。

「断った3日後にさ、野球部のチームメイトのけいごと付き合ってるわけ(笑)でも、それを知ったのは1週間後なんだけどさ、
友達の友達の話だけど、二人して同じ物を身につけてたからわかったんだーそして、俺に告白したことは、俺が言わない限り、その子とその友達と、俺しか知らない秘密ーなんだってさー」
「え?切り替え早すぎじゃない?まさかゆーたさんじゃなくてもよかった的な?」
「どうだろうねーでも、彼女がハッピーであればいいしさ、思春期の俺たちはこんなもんでしょ」
「ゆーたさん、なんかかわいそう…だって、そこまで好きじゃなかったってことでしょ?」
「それは、わからないよー切り替えの早い乙女だっているでしょ?」
「そうだけど、3日後って…」
「だから、ケイゴには言ってないよー本人がケイゴに言ってない限りはねー(笑)」
「そか。でもお父さん素敵なことを教えてくれるんだね…私の周りはそんな諭してくれるような大人はいなかったね。うらやましい。」
「その時は『何を言ってんだよ!』って思うけど、後から考えたら『よかった』って思うことばかりだよ。」

話をしていた。

あっという間に時間は過ぎ、
よの飲み会は1次会が終わろうとしていたに違いない時間になっていた。

さりげなく空になった紙コップとおしぼりを俺が使っていた、コップに重ねた。
「そろそろ出ようか?」
「え^もう20時なの!」
PCをリュックにしまい、席を立とうとすると、彼女はリップクリーム塗り一緒に席を立った。
ダストボックスに向かうと、彼女もついてきた。

店員さんに「ごちそうさまー」と伝えると。
「またのご来店をお待ちしてます」と丁寧に返答があった。

そして、彼女の手をさりげなく奪い、
店を後にした。

To be next story…

(あとがき)
さて、先ほど投稿前に自爆をしてしまい、本当だったら2時間前には投稿できたのですが…
お待たせしましたーって待ってないかー笑

ゆーたの親父はいろいろ介入してきますねー格言というか、説得力があるというか、そういう温かく諭すような大人になりたいものです。
ただ、恵さんが『涙を浮かべていた』のはなぜ?

また、20時この後の展開はどうなることやら…

引き続きよろしくお願いいたします!

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