立ち直り

 コロナ感染からの立ち直りがいまひとつ思わしくない。
 人と話すと咳が出るのは仕方がないとして、困っているのは気力が戻らないことだ。元からこんな感じだったか、と訝しく思うほど力が入らない。退社後、自室に戻り、食事と入浴を済ますとあっさり寝落ちしてしまう。そのせいで、買っておいた夜食が手つかずで残っている。

 感染前は、働いて、残業して、休日出勤して、転職活動して、資格の勉強もして、という日常だった。それが一旦全てキャンセルされた。全くのゼロだ。別にやりたくてやっていたわけでなく、やらざるを得ない状況に追い込まれていただけだが、どうやって元の生活に戻せばいいのか途方に暮れている。求人を探すだけのパワーがない。転職活動については、止めたらもう再開できないだろうとは感じていた。応募書類を作成して、お祈りされて、たまに面接に呼ばれての繰り返しだ。今は、いろいろな職場を見ることと、多くの人に会うことを目的のひとつとしている。自分の見ている景色だけでなく、世界は広いと実感する必要がある。そうでないと、ほんの些細なトラブルで即座に詰まされるような感覚が拭い去れない。きっと、PTSDか何かなんだろう。

 立ち直りのために、まず、症状が治まって人にうつす恐れがなくなったあと、髪を切った。いつまでも汚すぎるおっさんでいるわけにはいかない。そして、少しずつ転職活動を再開した。連絡を取っていたエージェントの方に、事情を説明し、再度アポを取ったり、面談の日程調整を行った。

 久々の面談は、コワーキングスペースでのWEB面談だった。薬を飲んでいたが、面談中も再々咳が出た。しかも、面談中に当該ポストは既に埋まっていることが判明した。時間を戻すことができるはずもなく、今、面と向かってそんなことを言われてもどうすることもできない。それでも、面談中に表情に出してはいけないと思い、必死で堪えた。コロナ感染で面談が延びてしまい、競争の土俵にすら上がることができなかった。咳は止まらないわ、転職活動はうまくいかないわ、踏んだり蹴ったり、いや、踏まれたり蹴られたりだ。

 しかし、嘆いていてもはじまらないので、少しずつ元に日常に戻す。元の日常が苦痛に満ちていると、まだ病気のほうがマシだったような気すらしてしまう。それでも、まだ寿命があるのなら、無駄だろうが何だろうが戦い続けなければならない。あがき続けることだけは止めることができない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?