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【短編】チョコボールの行方

男の子は、ピーナッツにチョコレートがコーティングされたチョコボールのお菓子が大好物だった
虫歯になるからと、そんなに頻繁にお目にかかれることはなかったが、時々、母親が買い与えてくれた時は、そんなに頻繁にあることではないので
男の子は、とても幸せな気持ちを感じた
そして、母親の手から渡されたチョコボールの入った箱を振って、箱の中のチョコボールがカタカタと音を立てるのを何度も微笑みを浮かべて聞いた
箱の中のチョコボールが、コロコロと箱の中を動く感触を感じ、確かに見えないけれど箱の中には チョコボールがあるという感覚を男の子は、何度も楽しんだ
そんな男の子の姿を優しく見守る母の顔が見える
そして、男の子の頭を愛おしく撫でる母親の手の 温もりを男の子は、当たり前に感じていた
男の子は、箱の中のチョコボールの音と感触を目一杯楽しむと箱の小さな取り出し口からチョコボールを取り出した
しかし、それはうまくいかず、出てきたチョコボールは、男の子の手から滑り落ちて、コロコロと 音を立てて床を転がっていった
男の子は、夢中で転がり落ちたチョコボールの後を追った
男の子の片手に握られたチョコボールの箱から箱の中に残ったチョコボールが、男の子の動きに合わせて、激しくせわしなく音を立てるのが聞こえる
男の子は、必死で追いかけたが、チョコボールは
勢いよく加速して床の上を転がり、そして、開けてあった庭に続くサッシの窓から勢いよく、チョコボールは庭の芝生の上にダイブした
男の子は、庭に降りて、チョコボールを取ろうとしたが母親の言葉を聞くとそれを諦めた
そして、新たに箱の中から新しいチョコボールを
取り出して口に運んだ
男の子の口の中にチョコの甘さが広がった
そして、チョコの匂いが、男の子の鼻をくすぐる
すぐに男の子は幸福感を取り戻した
そして、またチョコボールの箱を振って、まだ たくさんのチョコボールがあることをしめす音を聞いて微笑んだ
数日後、男の子は、庭で花壇の手入れをする母親のかたわらで遊んでいた
花壇には、色とりどりの花が咲き乱れて、とても 綺麗だった
そして、その花たちが放ついい香りを男の子は無意識に感じていた
もちろん、その花たちの放ついい香りを感じているのは、男の子だけではなかった
その花たちのいい香りに誘われて何匹かの蝶々も 男の子の家の庭に集まって来ていた
男の子は、夢中でヒラヒラと舞う蝶々を追いかけた
しかし、どんなに追いかけても蝶々は、ひらりひらりとからかうように男の子をかわして飛ぶので
男の子は、蝶々を捕まえることはできなかった
それでも飽きずに男の子は、ヒラヒラと舞う蝶々を追いかけた
その時に、ふと、男の子の目が芝生に転がる黒い丸いものをとらえた
男の子は、今まで必死で追い続けた蝶々から一気にその芝生に転がっているものに興味を移した
男の子が、しゃがんで、それを確認すると、数日前に落としたチョコボールだった
男の子が、チョコボールに触ろうと手を伸ばした時、男の子は 、チョコボールの周りにアリたちがいるのを見つけた
アリが、男の子の落としたチョコボールを見つけて、巣に持ち帰ろうとしていることに男の子は 気がついた
そして、男の子は、チョコボールにのびた手をそっとしまった
そして、男の子は、家にはいることを促す母親の声を聞くまで、ずっと飽きもせずに自分の落としたチョコボールを必死で運んでいるアリたちの姿を嬉しそうに眺めていた

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