見出し画像

東京の不動産はなぜ高いのか

ようやくコロナの緊急事態宣言も終わりを告げた。

これでワクチンが普及すればコロナも終わるかもしれない。

コロナが広まり始めた時は、

『東京のオフィスは空室だらけ。飲食店もバタバタ閉店している。不動産価格が下がるのは時間の問題だ』

なんて言われていた。

実際に大企業を中心にテレワークが普及して、東京に住んでなくても仕事できてしまう環境が整備された。

僕自身も完全テレワークになり、1年近くオフィスに行ってない。

大学もオンライン授業が主体になって、学生が東京から脱出し、実家がある地方に戻る動きも出てきた。

『いよいよ東京の不動産が下がる時が来たか』

僕だけでなく、東京に物件を持っている大家さんは少し警戒しつつも、これから掘り出し物の安い物件が買える時代が来ると思ってワクワクしてたんじゃないかと思う。

ただ、結果として東京の不動産価格はコロナになってから上がり続けている。

賃貸市場だけを見てみると、東京から周辺の神奈川、埼玉、千葉に移動する動きが見受けられる。

いつになく東京の賃貸では空室が増加している一方で、周辺の神奈川、埼玉、千葉では入居希望者が増えて空室が減っている。

実際に東京の人口は何十年化ぶりに転入超過から転出超過に変わった。

このように東京の賃貸市場は弱まっているんだけど、東京の不動産を買いたいという人は大勢いる、というかむしろ増えている。

そのおかげで、借りる人は減っているけど、不動産価格自体は上がり続けるというヘンテコな状況になっている。

こんな状況を見ていると、素朴に『どうしてコロナで人が減っているのに、東京の不動産価格は上がり続けるのだろうか?』と疑問が芽生えてきた。

法人の決算も終わり時間ができたので、今日は僕なりに答えを考えてみたい。

コロナが終わったら東京に人が戻ってくるさ

人口が減っているのに東京の不動産価格が上がっているのは、簡単にいうと「どうせコロナが終わったら東京に人が戻ってくるよ」と考えている人が大勢いるということだと思う。

今は東京に家を買いたいけど、不動産価格が高くなりすぎて家を買えない人達がたくさんいる。

マスコミはこのような人達の興味を引けばページビューが稼げることを知っているので、『コロナで東京のマンション価格が暴落する』なんてWeb記事を大量生産している。

でも、プロの不動産ディベロッパーや不動産ファンドの人達はこのようなマスコミの記事を一切無視して、割安な不動産があればガンガン買い進めている。

それはプロの目から見れば、コロナが終われば東京に人々が戻ってくるのは自明のことだからだ。

『テレワーク、オンライン授業が普及すれば、東京に住む意味はなくなる』

このように考える人もいるかもしれない。

でも、残念ながらこれは東京の不動産が下がることを願っている人々が創り出した神話でしかない。

テレワーク、オンライン授業が普及しても、東京に住む必要性はたいして変わらないというのが僕の考えだ。

東京の魅力は巨大なサービス産業

なぜ東京に住む必要性が減らないかというと、東京というのは巨大なサービス集積地だからだ。

足立区とか大田区にいくと今でも町工場は残っているけど、東京の主要産業は明らかにサービス産業だ。

サービス産業には次の3つのタイプがある

1.消費型サービス業

2.事業型サービス業

3.医療・福祉型サービス業

消費型サービス業は一般の消費者を相手にしたサービス業のことだ。

飲食店、キャバクラ、カラオケ、美容室、旅行業、宿泊業、航空、鉄道、タクシーなどなど。あと、教育機関もこれに含まれる。

事業型サービス業は事業者を相手にしたサービス業のことだ。

銀行、証券会社、システム会社、広告代理店、調査会社、コンサルティング会社などなど。

医療・福祉型サービス業は医療や介護に特化したサービス業のことだ。

病院、クリニック、介護サービスなどなど。

東京はこれらの3つのサービス産業の規模が圧倒的に大きい。

東京には多種多様な飲食店が山のようにあるし、美術館、博物館、映画館といったエンタメ施設も一生かけても楽しめないくらいたくさんある。

東京大学や慶応・早稲田を筆頭に、有名大学もたくさんある。

事業向けサービスを手掛けている大手金融機関、システム会社、広告代理店の本社は全部東京だ。

先端医療を提供している専門医療機関の数も圧倒的に東京が多い。

つまり、サービス産業の集積が東京の魅力を創り出しているとも言える。

サービスは地産地消

基本的にサービス業は地産地消だ。

サービスを提供する場所と消費する場所が同じである。

飲食店で美味しい料理を食べたかったら基本的にはお店に行くしかない。

ウーバーイーツのようなデリバリーも普及してきたけど、そんなに遠くにまで配達できない。

キャバクラで女の子からお酌をしてもらいたかったらお店に行くしかない。

オンラインキャバクラなるものも誕生しているみたいだけど、やっぱり味気ない。

コンサートだってYOUTUBEで見ることもできるけど、コンサート会場で聴くのとは臨場感が全然違う。

サービス業は製造業のようにモノを生産する場所と消費する場所が遠く離れても成り立つ産業ではない。

やっぱりサービスを提供する場にいて、サービスの価値を満喫することができる。

今、コロナによって一時的に東京のサービス産業が活動を停止した。

特に消費型サービス業の落ち込みは大きい。

飲食店やキャバクラは時短営業を余儀なくされた。閉店したお店も多い。

大学もオンライン授業が主体になって、キャンパスに行って友達と顔を合わせることもできない。

そのため、今は東京のサービス産業の魅力が一時的に低下し、その結果、東京を離れる人々が増えている。

ただ、コロナが終わってしまえば、サービス産業は復活する。

そして、サービス産業が復活すれば、サービスを享受したいと考える人達が東京に戻ってくる。

なぜならば東京で提供されるサービスの価値を最大限享受するためには、物理的に東京に来る必要があるからだ。

東京に人が戻れば、不動産ニーズも元に戻る

結局、どんなにテレワーク、オンライン授業、オンラインキャバクラが普及したとしても、リアルなサービスには敵わない。

そして巨大なサービス産業が集積している東京には人々が戻ってくることになるのだ。

プロの不動産業界の人達や機関投資家はこの事実を誰よりも理解している。

だから誰も東京の不動産を手放そうとしないし、売り出る不動産があれば買付が殺到する。

おまけに世界中で財政出動・金融緩和が行われており、お金はジャブジャブに余っている。

アメリカではコロナが収束に向かうことが明らかになった今になって200兆円以上の景気対策を行うことが決まった。

このように考えると東京の不動産価格が下がる要素は見当たらない。

コロナが終われば人々は確実に東京に戻ってくる。

しかも今まで以上に人々はお金を持っている。

これで不動産価格が上がらないはずはない。

これを裏付けるように収益不動産価格はどんどん上がっている。

コロナ前は都内の中古アパートの利回りは6%くらいだったけど、今は5%の水準にまで下がってしまった。

こんなに利回りが低い不動産を誰が買うのかと思って横目で眺めているのだけど、1ヶ月もしないうちにポータルサイトから次々と姿を消していく。

しっかりと買う投資家が存在しているのだ。

不動産が買えないと嘆く投資家の苦悩はしばらく消えそうにない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?