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【アマチュア大喜利プレイヤー列伝】栃木ゆに-始まりは泥臭い思い切り-

はじめに

2024年08月13日、「女流大喜利トーナメント“喜羅星”」という大喜利大会の実施が「大喜利企画ROSE」により発表された。参加者を女性プレイヤーに絞った大会である。

この連載を始める際に、私の頭の中に2冊のルポルタージュがあった。一冊は浅草キッド・水道橋博士の「藝人春秋」で、もう一冊は髭男爵・山田ルイ53世の「一発屋芸人列伝」である。

詳細は省略するが、後者の本の「キンタロー。」を取り上げた章には「なぜ一発屋芸人は男性芸人ばかりなのか」というジェンダーの領域に踏み込んだ文章が書かれている。山田氏が男性学を専門とする教授に取材した結果、「『お笑い芸人になる』という『逸脱』した行為をすることで、男性はそれなりの成功者と周りの男性から認められるが、『一発屋になる』という行為に関しては『逸脱に逸脱を重ねる』行為であり、『みんなで仲良くしましょう』と育てられる傾向のある女性にとっては『恥の上塗り』とも言える」というようなことが「あくまで全般的な傾向」として語られている。

ただ、それは本書が刊行された、2018年当時の話。芸人の世界の内情は知らないが、芸人になることが、必ずしも「逸脱」した行為とは言えなくなり、「逸脱」した行動を取らずとも、笑いを獲り、ご飯が食べられるようになることが、数多くの芸人によって証明されている。もちろん、男女問わず。

大喜利界隈に関しても、数年前までは女性のプレイヤーは少なかったが、2024年現在、様々な要因で増加しており、大会等で活躍するプレイヤーも増えている。女性が大喜利を始めることは、決してレアなことでは無くなった。このような大会が開かれるようになったのも、喜ばしいことであり、面白い試みだと私は思う。

そんな状況が変わりつつある今から8年前、2016年の2月に、女性限定の大喜利大会で生大喜利を始めて、優勝した人物がいる。

それが、本記事の主役、栃木ゆにである。

関東のプレイヤーである栃木ゆに。「大学のお笑いサークルの部員」というバックボーンを持ち、近年ではタッグやチームの大会で善戦。同じく学生芸人だった、同期で同い年のヨシダin the sunと「かるがもだもの」というコンビを組み、ライブに出演するなど、精力的に活動している。

最近は彼女は関東の女性プレイヤーの中でも、比較的大喜利歴が長い。活動内容と歴の長さ等を考えて、彼女にインタビューのオファーを行うと、非常に驚かれてしまった。

ここで言っておきたいのは、「列伝」という看板を付けてしまってはいるが、このルポはあくまで「紹介文」に過ぎず、「大喜利偉人伝」ではないということだ。

2024年08月27日20時、インタビュー開始。

生大喜利に挑戦するまで

「お笑いオタク」を自称する栃木ゆに。その歴は長く、中学生時代に遡る。当時「爆笑レッドシアター」(フジテレビ系)全盛期だった時代に、「ロッチと我が家が面白い」となった彼女は、二組が所属している「ワタナベエンターテインメント」の芸人に夢中になる。

「段々ワタナベの若手が好きになって、高2くらいの時には『ワタナベの養成所出身の人が事務所に所属できなかったから所属を目指すライブ』の昼間だけ観に行ったりしてました」

”少しだけ”厳しい家庭だったため、夜の部のライブには行けなかった。しかし、ライブの構造としては、昼の部と夜の部では、夜の部の方がランクが上の芸人が出演していたらしい。

「面白いと夜の部に昇格していくんですよ。好きだったコンビが、面白くなることによって見れなくなって。『昇格は嬉しいんだけど、もう見れないな』みたいな時もたまにありました」

その時に、大学でお笑いサークルに所属しながら、もしくは「大学お笑い出身です」という人も養成所に通っているということを知る。

「大学でそういうやつがあるんだーって知って、大学生になったら、そういうのも良いなーと思って」

大学に入学し、複数の大学の学生が所属する「インターカレッジサークル」通称「インカレ」のお笑いサークルに所属する。6年制の大学で、1年から4年の時に所属していたサークルと、3年から6年の時に所属していたサークルがある。3年から4年の時期は、掛け持ちということになっていた。

当時、サークルのTwitterアカウントを運営していた彼女。他の大学所属だったので、部長や会計などの重要な役職は任せられなかったので、そういった役割が回ってきたと彼女は推測する。

少し話は飛ぶが、彼女が初めて生大喜利の大会に出たのは、お手てつないで主催の「オオギリダイバー」の女性限定大会「なでしこダイバー」である。それに出ようと思ったきっかけに繋がる話が聴けた。

「一時期大学のお笑いサークルに、お手てさんがDMをしてたんですよね。大会の存在は知ってて、皆に呼び掛けたりしてて。あと、1回同期が参加してて、『良いなー』っていうのはあったんですけど…」

これは深堀りも確認もしようがない話であり、レイを挙げることが出来ない話なのだが、大学お笑いの大会などで結果を残しておらず、女性部員も少ない中で、必死になろうとして空回りしていたこともあり、「同期にバカにされていた」状況だったらしい。

オオギリダイバーには出たいが、同期には知られたくない。そんな中で、Twitterで流れてきた次の開催情報が、大阪で開催される「なでしこダイバー」だった。

「女の人だけの大会です、大阪ですって見て、なんかわかんないけど『出よう!』って思って。全然旅行とかも一人でしたことないけど、衝動でエントリーして」

学生芸人の活動とは違う名義でエントリー。ちなみにその時点では、サークル内でも、フリップを使用した大喜利の経験はほとんどない。

いざ大阪へ

大会前日、栃木ゆには学生芸人のライブに出ていた。大阪へは、夜行バスで向かう予定だったので、ライブ終わりに当時の相方(荷物を持ってくれていた)と共に乗り場に行ったは良いものの、そこは正しい乗り場ではなかったというまさかの事態が。そうこうしているうちに、すでにバスは発車していた。

予想外のトラブルに、新宿で途方に暮れていた彼女。バス会社に連絡すると、「1時間後にバスが横浜を通るので、そこに間に合ったら乗っても良いですよ」と言われたため、必死になって停留所まで走った。

「『なんのために?』みたいな。なんで私は大阪に大喜利したいとか言って、こんな走ってるんだって思いながら」

ギリギリ間に合い、バスの乗り継ぎには成功。朝に到着して、ネットカフェで仮眠を取り、会場である「なんば紅鶴」には早めに着いてしまった。

入口で、緊張しながら開場を待っていた。学生芸人として舞台を踏んでいたとはいえ、初めての生大喜利。スズしい顔ではいられない。その時に、ありがたいことに話しかけてくれた人物がいるという。

「『初めてですか?』とか声を掛けてくれたんですけど、緊張しすぎて『はい、はい』みたいなことしか言えなくて。『あっ』と思った相手がそのままスッと離れてくれて。その後に『これは失礼過ぎるな』と思って、『すみません、緊張してただけで話したくないわけでは無かったんです』って話しかけに行った記憶があって」

ただ、今となっては、その人物が誰なノカは覚えていない。

「名乗り出て欲しいくらいありがたかったんですけど」

「なでしこダイバー」の出場者は15人。女性限定とは言いつつも、蓋を開けてみれば、女装した男性も出場しているという状況だった。

栃木ゆには15番のくじを引いたため、1回戦は唯一シードだった。2回戦の最終試合、自分の出番が来る。

「一番最初の回答が、実話に基づいた回答で『本当に大喜利してない人の回答だ』って。それが割とウケて『ウケるんだ』というか、そう思った気はします。動画で見返すと、やっぱり出し方とか下手だなとは思いました」

ほぼ初めての大喜利に苦戦しながらも、トーナメントを勝ち進んでいく。

「自分でもこんな勝つとは思ってなかったですね正直。夢中に答えてたって感じが強いかもですね」

そのままの勢いで、決勝まで進んだ彼女。対戦相手は九州のプレイヤーであるsami(現・sami三)。心の準備が不十分な中でも、必死に答えを出して、栃木ゆには優勝する。

「普通にビックリの方が強かったですね。嬉しかったけど、初めてだったし。終わった後に色んな人が褒めてくれて、凄く嬉しかったです」

昼に行われた「なでしこダイバー」の後の夜の部は、同じくオオギリダイバーのタッグ戦が行われる予定だった。そこに出場する、当時から面識があったFANと出くわし、彼を大いに驚かせることになる。

「『知らない人が優勝してると思ったら、お前かい』って言われました」

「大喜利界隈」に溶け込むまで

「ダイバーっていうライブみたいな大会に溶け込んだせいで、その後どうしていいか分からず…なんとなくその時にいた人とか、Twitterでフォローしたんですけど、大阪の人が多かったので。そこまで界隈の会に参加出来るわけでもなく…」

2016年当時は、大喜利界隈に徐々に人が増え始めて、新しい大会も生まれ始めていた時期だったはずである。しかし、「なでしこダイバー」を優勝してからは、すぐに会議室で行われているような大喜利会に参加することは無かった。

代わりに、「オオギリダイバー」主催のお手てつないでから、「ダイバー優勝者が集まるライブ」に呼ばれたり、FANが学生芸人の時から行っている「大喜利メランコリー杯」に出場したりしていた。他にも、レッドブルつばさ(現・谷口つばさ)によるライブ「大喜利マジック」にも呼ばれて出演するなど、大喜利経験はゼロでは無かったが、界隈のこともあまり知らなかったうえに、学業や学生お笑いとの関係で、いわゆる「大喜利界隈」のイベントにはほとんど参加していなかった。彼女が界隈に混じり始めたのは、優勝から1年後の2017年の頃である。

「いわゆる界隈の会にちゃんと参加するようになるまで、1年弱はかかりましたね」

少しずつ大喜利の現場に行くようにはなったが、初優勝の時のように、良い結果を出し続けることは出来なかった。

「段々大会とか大喜利会とかに参加しつつって感じですね、でも結果は『う~ん』って感じでした」

印象的なイベント

この章では、印象に残っている大喜利の会や大会を、思いつくままに話してもらう。

まず挙がったのは、2020年の12月に六角電波主催で行われた「運命戦」である。出場者全員を、抽選によってチーム分けをして、競い合うこの大会。関西で年に一度開催されている、大規模なチーム戦「戦(いくさ)」のソフトを所持している六角電波が、戦とほぼ同じルールで行っている。

栃木ゆにのチームメイトは、後に「8月22日の彼女」としてフリーで芸人活動を行うことになる、FANと千代園るる(現在は無期限の活動休止中)。そこに当日、急遽いわいまさかが加わった4人で挑むことになった。

「FANさんと千代園と3人で始まる前にご飯食べて、得意なお題とか話していた時に、急にいわいまさかさんが来てちょっと面白かったです(笑)」

本家の戦は、予選と本戦と決勝戦があり、予選はチームが一回ずつお題のジャンルを選べる「点取り合戦」で、本戦と決勝戦は「勝ち抜き戦」だが、運命戦は、決勝戦も戦の予選ルールを使用するのが通例である。お題のジャンルは「文章」「画像」「穴埋め」「リズム」「一問一答」「???」であり、それぞれ「文章の30点」「一問一答の70点」と言った具合に、そのお題でウケて、ノルマを達成した時の獲得ポイントが割り振られている。

「リズム」は、替え歌で答えるお題が出やすい傾向にあり、替え歌は得意だという自負があった彼女は、他のチームが「リズム」を選んだら、代表として回答席に座ると宣言していた。

「替え歌お題で出て、最初ちょっとウケて、でもまあほどほどと言うか『こんな感じか~』ってなって。で、2回目もう一回出た時に結構ウケて、それは凄く褒められることがその後多くて、それは替え歌お題凄く好きだなって、自信になった気がします」

ただ、直近で再び行われた運命戦では、替え歌お題に挑戦するも、替え歌が出来なくて負けてしまうという苦い経験もしている。

「もう得意って言わないって思ったんですけど。全然そのスイッチが入ってなくて」

また、「替え歌で答えるお題が面白い」と明確に気付かされた会がある。それが「EOTスパーリングvol.5」である。

o、羊狩り、星野流人の3人が主催を務める「EOT」。これまで10回行われてきたが、公式なナンバリングではない「スパーリング」が、同じルールでこれまで8回行われてきた。彼女の言う「vol.5」は、タッグ戦で行われたEOTスパーリングである。

その中で「もしも草野マサムネが食べ物にしか興味がない人間だったらスピッツはこんな歌を歌っていたはずだ」というお題が出題された。代表曲の多いスピッツ、様々な曲の替え歌回答が飛び交い、非常に盛り上がった。

「動画でも凄い観ました。それが凄い面白くて、それで『リズムお題いいな』って思いましたね」

他に印象に残っているのは「アイドルマスターシンデレラガールズ大喜利会」である。「アイドルマスターシンデレラガールズ」通称「デレマス」に関するお題が出題されたり、アイドルになりきって大喜利を行うトーナメントが、デレマスファンの大喜利プレイヤーから大好評のこの企画大喜利会。栃木ゆには元々このコンテンツをよく知らなかったが、この会をきっかけに、デレマスにハマることになる。

「(デレマスに)詳しくない人が参加する会に参加して『参加したからにはやるか~』と思って始めて、そのまま普通にハマってって感じで。今はゲームのデータが飛んじゃったので、どっぷりはやってないんですけど、今も好きで、今度ライブにも行くので」

デレマスにハマっている大喜利プレイヤーは、基本的に男性がほとんどなので、デレマス大喜利に参加してみると、「男女比が昔の大喜利会と似ている」という現象が起こるとのこと。

「昔の大喜利会くらい女の人が少ないので、デレマス大喜利って行くと”懐かしい”比率をしてて(笑)」

会の最後の恒例企画となっている、アイドルになりきる「憑依トーナメント」。男性プレイヤーも、女性アイドルの口調を真似たり、それなりにアプローチをしなければ勝てないが、栃木ゆには女性プレイヤー。キャラクターに髪型を寄せたり、カラーコンタクトを付けたりするなど、男性プレイヤーには出来ない”憑依”の仕方が可能である。

「それも凄く楽しかったし、割とキャラに乗っかるみたいなのは好きなんだなとは思いました」

栃木ゆには、近年まで主催の会を開いたことが無かったが、以前に一度「ためしのり」という名前の会を開いたことがある。それについて詳しく聴いてみる。

「(他の人の会に)参加してることが多かったので。出来そうな時がちょうどあったので、1回やってみようと思って。それで、替え歌お題をやる企画を後半に設けて、お題を先に出して、やりたい人だけ出てきて答えるみたいな。楽しかったんですけど、全然出られない人もいたので、ちょっとお題も偏りあったかもと反省しました」

初めての主催だったので、お題作りは難航したが、それなりに会の進行はこなせたそうだ。

また、コロナ渦以前に、スパでのスペースを使用した大喜利会に参加したこともある。

「大喜利の人と(大喜利以外で)遊ぶのも、段々楽しくなっていって。知り合いとか友達も増えて。(タックスマンさんが)何人か集めて、スパにある大きい机があるスペースで大喜利して、卓球してみたいな」

その時の写真を何枚か見せてもらったのだが、館内着で楽しそうな表情を浮かべている知り合いの様子が伺えた。

「そういう企画、最近は増えてるじゃないですか。それこそ合宿みたいなやつとか。あれ計画とかするのも凄いなって思うし、良いなって思いますよね」

そして、成功体験として心に残っているのは「真・大喜利文化杯」での1回戦突破である。

「大喜利やってて、私多分そんなに勝ったりとか無いので。それは落ち込むのは落ち込むんですけど、同時に、そこまで自分に期待していないのがあって。『それはそれとして』みたいな感じで、観覧側も楽しめるのは、良くも悪くもだなって思う時があって。どうしても他と比べてみたいなのはあるんですけど、基本楽しく大喜利出来て、もちろんウケたら嬉しいしっていう感じで出来てるなとは思います」

2022年の文化の日に開催された、これまで何かしらの大会で優勝経験のある者だけで競い合う、真・大喜利文化杯。栃木ゆにも招待されて、出場を決めたのは良いものの、周りが強豪揃いであるため、勝ち抜ける自信は無かった。

「『皆優勝してるし、そりゃどこも厳しいから、楽しくやるか~』って思って。で、その時1問目でウケて、2問目そんなだったんですけど、初めて大きい大会の予選で上がれたんですよね。それで『自分でも1個上がるとかは出来るんだ』って思った気はします」

かるがもだもの

「組んだのは大学6年生の時で」

前述の通り、栃木ゆにはインカレのお笑いサークルを2つ経験している。6年制の大学の5年生の際に、先輩から引き継いだフリーエントリー制のライブの主催をしている時に、現在も精力的に活動している「かるがもだもの」の相方である、ヨシダin the sunと知り合った。

ヨシダin the sunの紹介を軽くしておくと、彼はお笑い活動で培ったであろう表現力と大きな声で、現在様々な大喜利大会で好成績を収めている。「第17回大喜利天下一武道会」では本戦進出、また、過去にインタビューしたMAも出演していた、出演者固定の大喜利ライブ「8 MELODIES」のメンバーでもあった。

栃木ゆには、最初彼と知り合った時は、彼の事を大学院生だと思っていた。「思っていた」というのも、とある学生芸人の大会で、MCから何年生か聞かれた際に「4年生です」と答え、「じゃあもう卒業だね」と言われた際に「院に行くのであと2年あります」と答えていたのを知っていたからである。

後になって、彼は院に行くのではなく、留年を控えていたことが発覚する。大会の場で嘘をついたことにより、彼のサークル仲間からは白い目で見られたことは言うまでもない。

一方栃木ゆには、4年生の時にすでに卒業ライブを行っていたものの、6年生の本来の卒業の時もライブはしたいと思っていた。「一人でするのもな」と思っていた5年生の時に、「一緒にライブやりましょう」と、卒業のタイミングが同じである(はずの)ヨシダに声をかけた。ちなみに結成日となる初舞台は、6年生の時に出場した、大学お笑いの大会である。

「やっぱM-1の2回戦に行けたりとか、社会人お笑いの漫才の大会とかは、ちょこちょこ勝ち上がらせて頂いているので、それは本当にヨシダ君のおかげだと思いますね。今までお笑いで勝ち上がりとか無かったので」

かるがもだものの武器は、間違いなくヨシダのキャラクターであるが、最近では栃木ゆにの良さもアミ出せるようなネタも出来るようになってきたという。

「ネタもだいぶヨシダ君のおもしろが主軸ではあるんですけど、私のキャラを出すやつも書いてくれたりとかもあるので、結構楽しくはずっと出来てますね」

最近ではそれぞれの仕事が忙しくなり、ネタ合わせの時間が取れないという事態も起きてしまっているが、ライブに出演するなどの活動も続けているし、何より「M-1グランプリ2024」への出場も控えている。また、コンビ仲も良く、最近もお互いの大喜利での遠征先で購入したお土産を交換したとのこと。

「ヨシダ君が最近、新しいコンビを後輩さんと始めたらしくて。冗談ではあるんですけど、そっちの方を相方って呼び出すっていう、『本コンビ移そうとしてませんか?』みたいなムーブをしだして最近。だからちゃんと『本コンビ移そうとしてませんか?』『そちらの方を”相方”と言っていますね』って言えるくらいは仲良いです」

好きなプレイヤー

ここからは、栃木ゆにが好きな大喜利プレイヤーを訊いていく。「言語化があまり得意では無いので、ふわっとしてしまうかもしれない」と前置きしたうえで、挙がった名前は3人。

「まず蛇口君。長い付き合いっていうのもあるし、見てて楽しそうに大喜利をするっていうのもあるし。ふざけ方というか、外し方が好きというか。その外し方に若干影響されてるとこあるかもって自分でも思います」

言わずと知れた強豪プレイヤーである蛇口捻流。10月13日開催予定の「大喜る人たちトーナメント2024」の決勝にも進出している。その「無駄がなく面白い」スタイルに、憧れを抱く者も多い。

「あとベランダさんは本当に多分…”関東の女”で一番面白いと思う(笑)。もちろん大喜利も面白いんですけど、詳細は忘れたんですけど、少人数で飲んだ時に、なんか凄い”大回し”をしてて。4、5人のテーブルを回して凄い面白くて、勝負してないのに『勝てねえ』って思った記憶があって」

2019年に、デリシャストマト主催の女性限定の生大喜利初心者会「つぼみの会」でデビューしたベランダ。本人は自分の大喜利に関して悩んだ時期もあったそうだが、最近は安定して自分の中にある面白さを発揮しており、一つのお題で爆笑を獲れる回数も増えてきた印象にある。

「あと、ちゃんとお話したこととかもあんまり無いんですけど、最近の若手だとラブワナさん。本当にあの人面白すぎるかも。ふわーっとした雰囲気で、ちゃんと聞いたら変なこと言ってるぞみたいな。人柄も相まって、魅力的な大喜利をするのも凄いなーって」

栃木ゆにが初めてラブワナを認識したのは、「大喜利カフェ ボケルバ」の平日の会。「EOT第10章」の予選や、「第五回大喜利参集」の動画では、独自の発想と特殊な回答の出し方で、爆笑を獲るラブワナの姿が拝める。

「今みんな多分ラブワナさんにメロメロだと思うんですけど(笑)」

今後の展望

「普通に楽しく(大喜利を)やりたいなとは思うんですけど。もちろん大会とかで結果を残せたらとは思うんですけど…」

最後に、今後について自由に語ってもらう。「楽しく大喜利やお笑いの活動をする」というのが優先ではあるが、栃木ゆには元々学業や仕事の関係で、頻繁に会に参加出来ているわけでは無かった。

「参加する機会も少なかったし、大会とかで勝てたとかもそこまで無いんですけど、でも楽しく出来ているのは、周りが暖かったりっていうのもあるし。楽しく出来たらっていうのが一番ではありますね。その上で、お笑いの方も頑張りたいし、企画とか楽しいことも自分で出来たら良いなっていうのはあるんですけど、実生活がどうしても忙しいので、今は『これやりたい』っていうのは難しいんですけど。本当に、自分のペースで出来たらなって思います」

また、近しい人が大喜利ライブに呼ばれているのを見ると、少し悔しく思うこともあるとのこと。いつか呼ばれるために、普段から自分も周りもメイっぱい楽しくさせる大喜利をして、今後に繋げていきたいというのが、ユメであり、目標でもある。

「今ホントに人が増えてて『周りの人凄すぎて…』みたいな人多いと思うので。焦りじゃないけど。今は競争が激しいので、みんな大変だと思うんですけど『こんな人もいるよ』って思って頂けたらって感じです。焦りすぎないで欲しいなって思う時はあります」

おわりに

今年の8月17日に、「岐阜大喜利合戦『両面宿儺~裏面~』」に出場するために、栃木ゆには数年ぶりに大喜利のための遠征をした。

結果は振るわなかったが、色んな地域の人と話が出来たことは、楽しい思い出として残っている。

大喜利デビューした頃から、周りの人間に助けられてきた彼女。優勝したタッグ戦やチーム戦の大会にしても「チームメイトの調子が良かったから勝てた」と語る。

それでも、その大会の中で、彼女が爆笑を獲る瞬間も確実にあった。

最初に書いた「喜羅星」には彼女は出場しないが、出ていたらきっと、大会を盛り上げる存在になっていただろう。

今回、それなりに長い大喜利歴や実績を持ち、精力的にお笑いの活動もしているという理由で、インタビューのオファーをさせてもらった栃木ゆに。大喜利界隈を楽しみ尽くすのは、まだまだこれからなのかもしれない。

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