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問題そのものによりそい根と向き合う力=現代に求められるネガティブ・ケイパビリティ

こんにちは、noteコーディネーターの玉岡です。
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本書は「どうにも答えの出ない、どうにも対処しようのない事態に耐える能力」「性急に証明や理由を求めずに、不確実さや不思議さ、懐疑の中に留まり続けることができる能力」とネガティブ・ケイパビリティを説明しています。次の7章で構成されています。


第1章 さまざまな分野でのネガティブ・ケイパビリティ
第2章 ネガティブ・ケイパビリティが必要になっている時代背景
第3章 対人支援とネガティブ・ケイパビリティ
第4章 対人支援場面におけるネガティブ・ケイパビリティの発揮
第5章 対人支援職エキスパート10人のインタビューから見えるネガティブ・ケイパビリティ
第6章 対人支援職の中のネガティブ・ケイパビリティ(第5章のインタビューのまとめとして)
第7章 ネガティブ・ケイパビリティを身につけるための研修とその結果(キャリアコンサルタント対象)



第1章 さまざまな分野でのネガティブ・ケイパビリティ

本書は、「ネガティブ・ケイパビリティ」の由来から始まります。

ネガティブ・ケイパビリティという言葉は、1817年にイギリスのロマン派の詩人キーツ(ジョン・キーツ:1795~1821年)が弟たちへの手紙の中で初めて使った造語です。(中略)ネガティブ・ケイパビリティには、4つの要素があります。前者からは、
① 答えを急いで求めないこと
② わからない状態に留まること
そして後者から、
③ 自分の考えや気持ちを消すこと
④ 他者の中に入って共感すること
です。

14P

本章では、芸術、宗教、哲学といった人間の営みの中で、ネガティブ・ケイパビリティがどのように作用してきたかを説明します。
下表は、人間の思考法を水平と垂直の2面でまとめており、この「水平思考」がネガティブ・ケイパビリティであるとしています。「垂直思考」と比べると、その違いがよくわかります。

28P


第2章 ネガティブ・ケイパビリティが必要になっている時代背景

今、なぜネガティブ・ケイパビリティが求められるのか。その背景を本章では説明します。
ダイバーシティやAI等の発展は、社会に新しい振興と問題をもたらします。それゆえに、環境変化に対応するための技術としてネガティブ・ケイパビリティが重要であると説きます。

40P


第3章 対人支援とネガティブ・ケイパビリティ

俯瞰的に問題を見つめその本質を見極めようとする能力がネガティブ・ケイパビリティであるとしたとき、それが効果的に適用される状況のひとつは対人コミュニケーションでしょう。
本章では、アメリカの職業心理学者ホランドによる6つの職業タイプを挙げ、各タイプの代表的な職種とステークホルダーを取り上げていきます。

61P

第4章 対人支援場面におけるネガティブ・ケイパビリティの発揮

本章では、ネガティブ・ケイパビリティが効果的に働く対人支援業務において、筆者の専門分野であるキャリアコンサルティング業務を例にその実用例を説明します。
下表は、対人支援業務のステージとネガティブ・ケイパビリティの関与を端的に示したものです。

132P


第5章 対人支援職エキスパート10人のインタビューから見えるネガティブ・ケイパビリティ


本章では、対人支援のエキスパートと呼ばれている10人(元·幼稚園教諭、保育士/元·私立中学高校一貫校教諭/通信制高校教員、教育関連会社役員/精神科クリニック院長/精神科医/看護師/臨床心理士/柔道整復師/介護福祉士/元·国際線チーフパーサー)に対して行われたインタビューを掲載しています。各人が抱く課題とその解決に向けて、ネガティブ・ケイパビリティがどう作用しているかが、実際の言葉で語られています。

第6章 対人支援職の中のネガティブ・ケイパビリティ(第5章のインタビューのまとめとして)

続く本章では、第5章で取り上げられたインタビュー内容を整理し、10名に共通するネガティブ・ケイパビリティの要素を分析します。

読み進める中で、次の一文はネガティブ・ケイパビリティの実践を示した言葉として心に残りました。

人はすぐには変わらない、変えることはできないと頭ではわかっています。それでも駆出しの支援職は、早く結果がほしくなります。エキスパートたちの語りには、時間というものの大切さが表れています。時薬の力は将来への希望であり、それを信じることもネガティブ・ケイパビリティを支える1つなのです。

283P

ストレスフルな状態に陥ったとき、人は早くその状態から脱しようとして安易な解決策を手に入れようとします。その解決策によって、その「状況」はいったんは収束するかもしれませんが、問題の根は残ったままになるでしょう。本書で説かれるネガティブ・ケイパビリティは、問題そのものに向き合い、その根と寄り添うための姿勢を丁寧に解説した一冊だと言えます。


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