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セミナーを毎週開催してPDCAを回して気づいた、セミナー企画で一番たいせつなこと

こんにちは、ユーザベースの酒居です。

前回プライベートカンファレンスについて書いたんですが、思いの外さまざまな方からコメントいただいて嬉しかったです。

それでテンションが上がったので、また記事書いてみようと思い、続いて日頃ぼくやマーケティングチームが一番力を入れている、セミナーについて書きたいと思います。

ぼくたちは現在数十人から二百人規模のセミナーを週1,2回のペースで企画・開催しています。まだまだ完全には程遠いですが、その中で見えてきたことについてシェアさせていただければと思います。

セミナーを始めた背景

(恵比寿オフィス時代。2017年12月、第一回ターゲティングワークショップ風景)

まず、そもそもぼくたちがセミナーに力を入れるようになった経緯についてお話します。

昨年11月、ぼくはユーザベースの新規事業として始まったFORCASで、新たにマーケティング&インサイドセールスチームの立ち上げを行うことになりました。

チーム立ち上げ当初、インバウンドで新しく入ってくるリード(見込み顧客)がほとんどなかったので、商談アポをつくろうにも、そもそも電話をかける先がありませんでした。
そこで、Webからのリード獲得に力を入れ、一気にリード数を増やしていきました。その結果、12月以降はリードがコンスタントに300〜500件程度入ってくるようになりました。

しかし、ここで課題となったのが、「いかにリードからの商談化率を高めるか」でした。自分たちで言うのもなんですが、FORCASって結構ニッチなサービスで、その価値を理解してくださる方を見つけることも、そもそもサービスがどういうものなのかを伝えるのもはじめた当初は結構難しい状況でした。(現在はABM実践でターゲティングを明確化)

なので、新しく入ってきたリードについては、いきなりインサイドセールスのメンバーがコールするのではなく、なるべく一度ナーチャリング(啓蒙活動)をして、FORCASへの理解と興味を高めていただいてから、アプローチしていくことを考えました。

そこで重要になったのが、セミナーです。

サービスの概要や活用方法を段階的に伝えて啓蒙していくステップメール(日ごとや週ごとなど一定のペースで段階的にコンテンツをメールで配信する手法。BtoCでよく活用されている)など他にもナーチャリングの方法はありますが、我々のようにそもそもの保有リード数も少ない状況であれば、メールマーケティングよりも、直接合って会話をして熱量を高められるセミナーというオフラインの手段が、最も効果的だと考えました。

最初はチームメンバーはぼくとあきさんの二人でしたが、二人三脚で社内でも謝りまくりながら、セミナーをまわしていきました。

セミナーを企画・開催する目的

企業がセミナーを開催する主たる目的は、「セミナー参加者からの成約確度の高い商談をいかにつくるか」がポイントになるでしょう。

なので、来場してくださったセミナー参加者に「あー良い話だったなー」って思っていただいても、それでおわり、さよならー!だと目的を果たせていない。つまり、マーケティング活動としてはあまり効果を出せていないことになります。
そこで、セミナーを開催する中で、セミナー参加者からの商談化率をいかに高めるかを日々考えてきました。

いろいろとやっていく中でわかってきたことは、商談化率を高める上で重要なことは、コンテンツはもちろんのことながら、セミナー後のフォローにかかっているということでした。

そのフォローには2つあって、①セミナーのセッション終了直後の参加者フォロー、そして②セミナー翌日のメール及びインサイドセールスのフォローコールです。

特に、前者の参加者と直接コミュニケーションできるセミナー終了直後のフォローは本当に重要です。講演セッション終了後に懇親会や交流会を用意しておいて、そこで参加者へお声掛けをして、そのまま商談につながるケースは非常に多いです。
なので、セミナーのセッションを一生懸命講演しても、それで「以上です。本日はありがとうございましたー」で終わって、お客さんをお見送りするだけではとってももったいないんですよね。

それを前職のイベントの経験からも思っていたので、FORCASメンバーに徹底して参加者のフォローに入ってもらうことにしました。

チーム立ち上げの最初のころは、チームメンバーだけでは人が圧倒的に足りず、営業やカスタマーサクセスのメンバーにも頼み、それでも足りなければエンジニアさんにまでお願いして、フォローしてもらってました(笑) 

今から考えれば、当時エンジニアのメンバーはかなり困惑したと思いますが、とにかく最初は手探りで出来ることを全力でやろうとしてやってみてました。

セミナー参加者残留率をいかに伸ばすか

セッション直後の来場者のフォローが重要であるということは、いかにお客さんをセミナーを聴いてそのまま帰らせるのではなく、その場に残ってもらえるか、つまり「参加者残留率」をいかに高めていくかが重要です。

セミナーを毎週繰り返しながら、「どうやったら参加者がセッション後も残ってくれるか」をメンバーと振り返りMTGでひたすら議論しました。

その中で色んな案が出てきました。それを全部やってみる。そして、その効果をひたすら検証する。この繰り返しでPDCAを回し続けていきました。

例としていくつかピックアップしてみます。

・セミナーは締めない。なぁなぁで終わる。
⇒本日はこちらで終了となります。ありがとうございました!って言っちゃうと、帰るモードになってしまう。だから、以上ですとは言わずに、これから引き続き懇親会です。と言って、自然に名刺交換にもっていく

・資料は配らず、資料やパンフレットを出入口と真反対に置く
⇒パンフレットや事例を入り口と真逆におけば、入口からどんどん離せる。その上で、配布場所にメンバーがいるようにすれば、資料をとりにきてくれたタイミングで声かけして話せる

・セミナー終了直前に食事を出す
⇒いろんなお菓子や飲み物をセミナーでだす中で、どら焼きとの相性がとても高かった。これは別途どこかで話したい

・セミナー時に提供しているコーヒーはどのメーカーが良いか、場所はどこに配置したら良いか

・セミナーセッションの最中に、懇親会があることをちょこちょこ挟む

こんな一見バカみたいなアイデアを皆んなが超真剣に出し合って、「それいいね!やろうぜ!」ってなってました。

その中で、他のセミナーではおそらくやったことがないであろう、セミナーの形式をどんどん試していきました。ただ、この話をすると趣旨がズレてくるので、また別の記事でご紹介しますね。

(恵比寿オフィス時代の振り返り風景:これがあるからどんどん改善のサイクルを回せた。真剣に案を出してくれるメンバーが誇らしい)

方法論に対する疑問。答えはイソップ寓話にあった

ただ、そんなことをやっている中でも、抜本的に大きく目的に影響を与えることができているのかが微妙だと思い始めてきました。

「もっと明らかに、参加者の満足度を圧倒的に高めて、残留率を高めることができる方法ってどうしたらいいんだろう?」
このテーマについて、メンバーと毎日話すようになりました。

そして、他にも色んな案を出してみる。しかし、何かしっくりこない。何が問題なんだろう。
そんな疑問を抱きながら、ずっと考えていました。

そんなある日、あきさんがぼくの席に来て話してた時のこと。

あきさん「昨日他社のセミナーに出てきたんですけど、結構勉強になりましたー。講師の方にも色々聴きたいことあったので、セミナーの後に名刺交換もしていただいて色々質問させていただいて良かったです」

その瞬間にハッとさせられました。

なんてこったいと。

シンプルに考えてみれば当たり前のことをぼくは完全に忘れていました。

セミナーはコンテンツが命であること。
そして、来場者の熱量を高めることができる最良の方法は、来場者にいかに良い情報を提供できるか、ということ。

シンプルに良いコンテンツをつくってお客さんに喜んでもらえるセミナーをつくれば、お客さんの熱量は一番高まり、自ら残ってくださる流れがつくれる。ほんとにシンプルでしかない。

小手先のテクニック論に走りすぎ、一番重要なことを見逃していました。

まさに、イソップ寓話の『北風と太陽』だなと、ふと浮かびました。

北風と太陽が、どちらが旅人の衣服を脱がせることができるかを勝負する、っていうやつです。

ぼくらがやろうとしていたことは、まさに北風でした。
こちらの力でお客さんの行動を強引にコントロールしようとし、その効率化と効果最大化ばかりを考えることに陥ってました。

たとえば、ある回のセミナーでは、懇親会時に「寿司」を出したことがあります。

この意図は、「やっぱり皆寿司は好きだ。美味しい寿司が食べれるなら、残ってくれるんじゃないか」ということでした。そしてビールやお酒もあれば、絶対に残りたいに違いない!ということで、結構奮発して良い寿司を注文しました。

結果惨敗。誰も寿司に手を付けず、運営メンバーと社員で分けて食べました...それでも反省としては、「テーブルの配置が悪かったんじゃないか?もっと席に近くするべきだ」「誰も手をつけないと食べづらいから、まずは俺たちが食べよう」と、まさに北風的な成果最大化を目指したPDCAをまわしてしまっていたんです。

そうではなく、『北風と太陽』の太陽がやったように、相手が自ら能動的に動いてくれるカタチをつくる。そのためには、ぼくたちは自分たちが最高だと思える内容をコンテンツとして、セミナーで発信していくことをやる。
それに気づいた瞬間でした。

ちなみに、これって日頃のマーケ活動でも陥りがちな罠だなと思います。
Webからのコンバージョン(リード獲得)数を増やすために、表面的なCPA(コンバージョン単価)やCVR(コンバージョン率)だけをみて、より成果を改善するにはどうしたらいいだろうか、と判断してしまうことは、注意しないとよく起こりがちなケースです。

なので、「これ一生懸命やってるけど、そもそもそれをやること自体あってるんだっけ?」っていう視点は常に持っておかないといけないなと思います。

これ以降、ある期間、チームメンバーには「北風と太陽計画だ!!太陽になるんだ!」と言い続けました。(おそらくほとんどのメンバーが意味わからなかったと思いますが笑)

開催セミナーの一例

そこからセミナーのカタチもさらにどんどん変えていきました。
テクニック論よりも、とにかく面白いコンテンツをつくっていく。新規開拓が目的ではあるけれど、リピーターさんが何度も来てくださるくらい、おもしろいものをつくろう。さらに既存のユーザーさんにも参考にしていただけるものをつくっていこう。そのためには、どういうコンテンツをつくればいいだろう?それをベースに考えていくようにしました。

一例をご紹介すると、ぼくたちはFORCASの既存ユーザーさんの方々と普段から大変仲良くしていただいているんですが、ユーザーさんの中でおもしろいB2Bマーケティングの取組みをされているマーケターの方々がたくさんいらっしゃいます。

そこで、ユーザーさんにお願いし、「コラボセミナー」というカタチで、我々のセミナーにご登壇いただいて、自社でのマーケティング取組みをセキララにお話いただく事例セミナーを多く開催しています。
その講演の中では、特にFORCASの活用についてだけお話いただくというわけではなく、自社でのマーケティング・セールスの取組みのお話やデータマネジメントの体制づくり等、あくまで参加者の方視点で聴きたいお話を伝えていただいています。

たとえば、マルケトのプログラムマネージャーである湯原さんには、ほぼ毎月『【ABM実践】マーケティングオートメーション活用事例セミナー』を開催していただいており、自社でのマーケティングの取組みについて実践者である湯原さんがオープンにご紹介くださっています。

(株式会社マルケトのプログラムマネージャー・湯原さんのコラボセミナー。毎回大人気です)

また、セミナーの後のQ&Aセッションの形式にもいろいろとトライをしてみています。普通に「質問ある方挙手をー!」と言ってもなかなか質問は出ません。しかし、それぞれ何か課題感や知りたいことがあって、来場してくださっているわけで、講演の中でも疑問に思うことは必ずあるはずです。

そこで、参加者を5〜10人のグループに分け、各グループに講師やFORCASのメンバーが回答者としてつき、最初に質問を集めておいた上で回答し、10分おきなどにローテーションしていくということも行っています。これは、少人数になることで質問が出やすい、密な会話ができるというメリットがあります。

(パーソルグループのMiidas編集長(現:MyRefer COO)の細田さんとのコラボセミナー風景)

方針が見えれば、あとはやるだけ。
我々マーケ&インサイドセールスチーム(現在はABM体制に伴い、マーケティングチーム)は、一丸となってセミナーのクオリティ向上に進めていっています。

誰にとっての"良い"コンテンツなのか

(現在はオフィス移転により、自社イベントスペースNewsPicks Roppongiで開催しています)

セミナーはコンテンツが命だといえば、「なんだそんなことか。当たり前じゃん」と思われるかもしれません。でもよくあるセミナーで、本当にお客さんが心から熱量を高めてくれるようなコンテンツを提供しているイベントは実際はかなり少ないと思います。

そういうぼくたちも、まだまだ発展途上であり、偉そうに言えることはありませんが、しかし大切なことは、「誰の視点からみて、良いコンテンツだと言っているのか」を意識することだと思います。

「自分たちの製品やサービスを紹介したい、わかりやすくて丁寧な内容がつくれたから、これは良い内容だ」と思ってしまいがちですが、お客さんの立場からすると、それがそのまま同様の印象を持ってもらえるとは限りません。

お客さんがセミナーにわざわざ自分の時間を割いて、足を運んでくれるのは、何よりも「自分や自社にとって、有益な情報を得たい」と思っているからです。

お客さん、相手の立場に立って、自社の独りよがりではない、相手に役立つ本当に価値あるコンテンツをつくっていく、これが本当に大切だなと思います。

これができれば、そのセミナーでは商談につながらなくとも、自社に対する良いイメージは持っていただけますし、また他の企業や部門に紹介してくれることにつながる可能性もあります。
実際に、弊社のセミナーにはリピートで来てくださる方がとても多く、多い時は3割程度がリピーターのお客さんだったりします。そして自社の上長の方や別部門の方を一緒に連れて来てくださるケースも多いです。

現在弊社の月間の成約企業様のうち、月にもよりますが、多い時には7,8割の企業様が何かしらのFORCASセミナーにお越しいただいています。
すべてがセミナーの要因だけではもちろんありませんが、お客さんと自社をつなぐ良い機会になっているのではないかと思っています。

おわりに

マーケティング活動として、しっかりと成果を出していくために、セミナーやイベントに対しても短期的な視点で成果を求めることはたしかに重要です。
ですが、サブスクリプションビジネス(継続課金型ビジネス)をやる我々としては特に、中長期的な視点で、お客さんとの関係構築を考えていくことが今後ますます重要になってくるんじゃないかと考えています。

シンプルにお客さんにとって有用なコンテンツにこだわる。これは本当に大切だと思ってます。

一方、北風的テクニック論が全く意味がないかといえば、実はこれはこれでたしかに有益です。
今回は具体的にはご紹介しませんでしたが、お客さんにとっても価値が増す仕組みや方法論であれば、どんどん盛り込んでいくべきだと思っています。

大切なことは、テクニック論に意識を取られすぎず、お客さんに感動してもらえるようなコンテンツをつくり続けるということを、なによりも優先してイベントをつくっていくことだと思っています。

ぼくもチームもまだまだ未熟ですが、これからも日々改善のサイクルを進めながら、来てくださるお客さんにとって、よりおもしろいセミナーをつくっていこうと思います。

ぼくたちの経験が少しでもご参考になれば光栄です。
では今回はこの辺で。読んでいただいたありがとうございました!

(チームメンバーとユーザベース10週年記念イベントにて)


読んでくださってありがとうございます。まだまだ試行錯誤の連続ながら、自分たちの日々の取組みから得た気づきをシェアしていきたいと思っています。