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白鷹お召


昨日のnoteは お召のお話をしましたけれど
お召の中でも 変わり種の白鷹お召について お話しておきます。 

白鷹お召は山形の白鷹という地区で織られています。
米沢藩主であった上杉鷹山によって
米沢は織物産業が盛んになり また染料の紅花の産地でもあります。
米沢よりずっと奥にある白鷹で織られる白鷹お召は
独特のシボがある紬のお召で 絣の北限と言われています。
時には熊も下りてくる、という佐藤さんのお宅は
広い畑もありますが(おばーちゃんのお漬物が美味しい!)
一階に染めば、2階に機があり
一家で白鷹お召を作っています。

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白鷹お召の絣は板締めという技法で
薄い板に溝を彫り、その板に糸を巻きつけたものを
20枚ほども重ねて面万力で締め上げた上から
熱い染料を注ぎかける、というものです。
絣の柄をそのまま板に彫るわけではなく
絣柄の点と点が経緯で重なって柄になるように分解して
板の上に設計されて彫られます。
板の厚みも計算に入れて設計されるのですが
この板に溝を彫る職人さんが居なくなり
今は宮大工さんが苦心して彫れるようになった方が
一人だけいらっしゃるそうです。

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この、反端に飛び出ループ状の糸が板締めの板の厚み分。
これこそが 板締め白鷹お召の証です。
白鷹お召の絣柄は越後上布や弓浜絣に見られるような
絵絣ではなく 亀甲や十字を並べて表されるものです。
武士にも好まれたというのが頷ける 
きっちり感のある端正な柄になります。

彫られた板は糸を巻きつけて重ねられ
万力で締め上げると大きなブロックのようになります。

20190714白鷹板締め
これにもうもうと湯気の上がる染料を注ぐのですが
「ぶっかけ」と呼ばれるこの工程、
染め担当のおじいちゃんは「ぶっかけなんてしないで
丁寧に大切に染めるんですよ」とおっしゃいます。
でもお風呂場みたいなタイル貼りの染め場で
均等に染めるためにブロック状の板の束を
転がしながら染める様は「ぶっかけ」と呼ぶに
ふさわしい光景でした。

染められた糸は板を外すと
彫られた溝の凹凸によって染め分けられた絣糸になります。
お召ですから右撚りと左撚りの二種類の撚り糸と
絣糸との3種類の緯糸で絣合わせをしながら 
独特の高機で手織りされます。
広めに織られてお湯で揉んで縮ませることで
シボの立ったサラリとした風合いが生まれます。

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自宅より少し離れた場所にある離れの機場には
数台の機があり 若手で60台半ば、という織り子さん方が
通いで織りをしておられます。 
お召は手間がかかり量産できず それだけでは生活できないので
他にも紬や帯なども織っています。

サラリ、とした風合いは 強撚糸のシボゆえ。
本塩沢にも似て非なる白鷹お召。
単衣がお勧めですが 黒地のものなどは袷にして絣を楽しむことも。

 
 

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