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西陣織ってなに?


「これは西陣織りの帯です」などと言われますが
西陣織り、という織物がある訳ではありません。
京都の長い歴史と共に歩んできた織物の総称なようなもので
帯以外にもいろいろとあるのです。

京都での織物の歴史は古く
平安京が築かれるよりも前の5世紀頃に遡ります。
平安の遷都と共に宮廷の織物を管理する「織部司(おりべつかさ)」という
役所が設置され 高級な織物の生産が発展しました。
平安も半ばを過ぎると 官営の織物工房も衰退を見せますが
宮廷の管理を離れ 神社や寺院の装飾用として
重厚な織物が開発されていきます。
やがて応仁の乱が起こり 織物工房も離散しますが
戦が終わると京都へ戻り 
戦乱の時に西陣の陣地があった辺りで 工房を再開したので
西陣の織物・・・西陣織り、と呼ばれるようになりました。

江戸になると幕府の保護もあり
西陣黄金時代を迎えます。
ところが 享保15年(1730)6月
一軒の織物工房からの出火が広がり
西陣の半数近い機が消失してしまいました。
この頃から西陣以外の地域でも絹織物が行われるようになっていたので
技術や職工も地方へ分散していきました。

明治に東京遷都になると 
西陣織物はますます衰退します。
そこで京都府が保護生育を目指して
数名の職工をフランスのリヨンへ織技術の留学をさせました。
当地でジャガード(紋紙による紋織)や
飛び杼などの操作の学習と共に機械を輸入しました。
洋式技術の導入・定着により
西陣織は再び 絹織物の産地として名を挙げることになったのです。

現在の西陣は 高度の機械化により
細かく分業され それぞれの一工程を 別々の中小企業で
担っているものがほとんどです。
高齢化が進み、このコロナで廃業する職人さんも多くて
分業なので 1か所抜けると変わりが居ない、という状況です。
作れなくなった技術も出てきましたので
この先が本当に危ぶまれます。
  
昭和51年に伝統工芸に指定された 
京都の西陣織りは 次の12種です。

1.綴   織 (つづれおり)

西陣つづれ

 平織を応用した綴織は、経糸3倍から5倍も密度の大きい緯糸で
 経糸を包み込むようにして織ります。
 そうすると 織り上がった織物の表面には、経糸はみえません。
 柄ごとに織り上げてゆくため 色糸と色糸の境目にハツリと呼ばれる
 スキ間ができているのが特徴です。
 爪掻き綴れはノコギリの歯のようにとがらせた爪で、
 糸をたぐり寄せるように織っていくので非常に手間がかかります。
 
2.経錦織 (たてにしきおり)

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 経錦は文字通り2色以上の経糸を一組として裏表を交互に織るもので、
  伝えられるいくつかの錦織の中でも、
 もっとも古い歴史を持つと言われています。
 例えば、3色の配色によるものであれば3色3本の経糸を1組として、
 これが互に表裏浮沈交替して地や文様を織り出しているわけです。
 色数が多くなれば、経糸の本数も増すことになり、
 開口の操作も容易でなくなりますから、
 自然配色にも限りがあり、また大きな紋様も織り難いという結果にもなり ます。

3.緯錦

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 数ある織物の中で、もっとも秀麗なものの代名詞にもなっています。
 錦といわれる大部分がこの緯錦のことで、
 経錦に比してのみ緯錦と呼ばれます。
 金銀糸やさまざまな絵緯(紋様を表すため緯糸として用いる色糸)を
 用いて、美しい紋様を織りだした紋織物です。
 唐錦、倭錦、綴錦など、
 その技法や紋様によって固有の名称を持っているものもあります。

4緞子 (どんす)
 経(たて)糸に本撚糸、緯(よこ)糸に連糸を用い、
 繻子の表裏組織によって模様を表わす織物。
 5本の経緯糸を組み合わせ、その組織点をなるべく連続しないように
 分散させて織り込むため、布面が重厚で上品なのが特徴。
 中国で生まれたと考えられており、室町時代には盛んに輸入され、
 やがて西陣がその生産の中心となりました。
 茶の湯の世界でも重用され、名物道具の表装や
 茶入れの仕覆などに使う名物裂として現在に伝えられています。

5朱  珍(しゅちん)
 繻子織の一つ。七糸緞(しちんたん)が転じたともいわれます。
 地糸のほかに数種の絵緯糸(えぬきいと)を用いて、
 模様が浮き出るように織ったもので、
 経(たて)糸と緯(よこ)糸を1本ずつ交互に織る平織に対して、
 緯糸何本か飛び越して経糸を織り込んでいく独特の方法を採用します。

6紹巴帯 

西陣 しょうは

   千利休の高弟だった連歌師の里村紹巴が愛玩した名物裂金襴の一つで、
 やがて西陣でも多く織られるようになりました。
 緯(よこ)糸が経(たて)糸を包み覆うような織り方が特徴で、
 緯糸によってのみ表面の紋様を表現します。
 経緯ともに強撚糸を用いるため、比較的しわができにくく、
 柔らかでむっちりとした風合い。
 主に羽織裏や袋帯などに多く使用されます。

7風通
 普通の織物の断面は一重ですが、風通織は多層組織になっているのが特徴。
 二重、三重織で、上下あるいは、上中下の
 それぞれ色の異なった織り方を交互に表面に出して模様を表します。
 二重織のものを二色風通といって表裏反対色の紋様を表すことができ、
 精緻で上品な模様を表すことができるので西陣の着尺や、
 袋名古屋帯などに使われています

8もじり織り
 経糸と緯糸を直角に交差するように織っていく平織に対し、
 綟り織では経糸をひねりながら緯糸の間に織り込んでいくため、
 布面にすき間が生まれ、独特の透け味が表現される。
 隣り合う経糸が絡み合って編物のような特色を示すことから、
 からみ織とも呼ばれます。
 絽、紗、羅などがあります。

9.本しぼ織り

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 経緯ともに練染した絹糸を用い、
 経糸は甘撚り緯糸は御召緯といって練糸を適当な太さに引揃え、
 下撚りをかけ糊を施し、これがまだ乾かないうちに強撚りをかけたもの。
 右撚り・左撚りを二越ずつ交互に織り込み、
 製織後、ぬるま湯に浸して強くもみ、布面にしぼを出します。
 縮緬や紋御召しなどがあります。

10輪奈ビロード 

西陣和奈

 
 西陣のビロードは特有の羽毛や輪奈をつくるため横に針金を織り込み、
 後で針金の通った部分の経糸を切って起毛したり、
 引き抜いて輪奈を作る有線ビロードです。
 羽毛のなめらかな手触りと柔らかな光沢が魅力。

11.絣

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 経糸と緯糸を部分的に防染し、その糸で絵紋や幾何学紋を織りなしたもの。
 かすれたような模様が特徴。
 経糸だけに染色をほどこした経絣、
 経緯糸ともに染色した経緯絣などがある。
 西陣では、お召の矢絣や能装束の段替りなどに絣織りの技術が生かされました。
 
12紬
 紬糸や玉糸で織った平織の絹織物。
 真綿の繊維を手つむぎでひねり出し、撚をかけた糸を使用して織ったもの。
 糸が丈夫で織り方も簡単なため、着尺や裏地などに用いられる。


ビロードやお召など西陣ではほとんど廃業してしまったものや
綴のように ほとんどが中国産になってしまったものなどもあります。
また西陣の地域が住宅地になり 機音が嫌われて郊外や京都市外に
機場を移転した工房も多く
今や西陣で機音が聞かれることはありません。
京都を支えてきた西陣の織物が消えていくことは
技術が途絶えてまうことでもあります。
着物業界の斜陽、技術者の高齢化、育たない後継者・・・
着物ファッションのの発信地であった西陣が
元気になってくれることを切に願います。

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