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「介護離職問題」についてクリエイター目線で考える

私たちのような個人事業主、あるいはひとり社長にとって、介護離職(介護の関係で仕事を辞めること)は無縁に感じるかもしれません。

しかし、私も齢30。母や義両親はまもなく還暦前後の年ごろになり、いよいよ介護というフェーズを想定するころに入ると考えています。実際、普段の会話の中でも「もし介護がはじまったら」のような話が出てくるようになりました。

また、現状仕事を依頼しているライターさんにも同じ問題が起きても不思議ではありません。すでに直面している人もいるでしょう。

もし、私たちが「介護離職」すれば、それすなわち「廃業」を意味します。

今回はそんなソーシャルイシューと、とあるご縁で結んでいただいた方のシンポジウムのご紹介をさせてください。

楽観視できなくなった親の介護

私は完全在宅で仕事をしていますが、母や義両親とは離れて暮らしています。特に私の実家の方が遠いため、コロナ拡大後は1度しか帰省していません。何かあったら直行できるものの、普段から行き来するには少々面倒くささが勝ってしまう距離です。

また、母が一人暮らしという事情もあって、まめに電話をしているつもりです。しかし最近、何かとこちらの不安をあおる言葉が出てくるようになりました。

今日はしんどいから1日寝てるわ。

薬の量が増えてん。まあしゃーない。

来週、検査いくねん。

事後報告してくる母に「なんで最初に言わへんねん」と怒ったこともあって、最近では検査前のカミングアウト(?)も増えてきました。

そのたびに募る不安。私にとっては遠方在住の弟を除けば唯一の血縁者なので、内心、気が気ではありません。徐々に介護が他人事ではなくなってきた「いい事例」だと思います。

混同される法律

少し会社員に適用されるお話をします。企業の介護離職問題に関しては、政府が声を上げたほか、法整備も順次進められています。

しかし、これが非常に難解

たとえば介護休業で取得できる日数が93日間あり、それを3分割できる。ここまではわかります。また、ネットで検索すると「要介護2が判断基準」であると書かれている記事もあります。

引用:厚生労働省

これだけ見るとわかりやすいじゃん?となりますが、実際はそんな簡単な問題ではなく…

  1. 育児介護休業法では父母・祖父母・きょうだい・子ども・孫および配偶者と配偶者の親族を対象としているのに、そこに介護保険法で定める介護区分を判断基準として持ち込んだ結果混乱を招いている

  2. そもそも、育児介護休業法と介護保険法が別物であることがわかってないからミスリードされる

結局、法律の文言だけ読んでも何の理解もできないしできるほうが珍しい内容になっています。私も理解できるまで、かなりの時間を有しました。ググった際に出てきた記事を書いた人(本職のライターさんかどうかは置いておいて)も理解できていない可能性「大」です。

もしこのことを雇用する側が理解しきらないままだと、いろいろなところで問題が起こるかもしれません。

「在宅だからできるだろう」という油断

話を事業主に戻しましょう。単刀直入に言えば、ほとんどの独立したクリエイターには、育児介護休業法は関係のない法律です。

また、頭の片隅に「在宅だから仕事と両立できるだろう」とか考えている人はいませんか?私もそのひとりです。

冷静に考えてほしいのですが、仮に法律が適用される条件下で事業主やひとり社長が介護でお休みしたとすると、最大93日×24時間=2,232時間が介護に費やされることになります。

仮に1日8時間労働としていても、2,232時間÷8時間=279日分の労働時間が失われる計算です。一年の約8割が介護に持って行かれてしまいます。

「それなら介護施設に入れたら…」と考えた人もいるでしょう。以下を見てください。

引用:JOINT

平たく言えば、施設介護職員・ヘルパーともに業界が求めている数字のほうが大きい状況。つまり、超深刻な人手不足なのです。

言い換えれば、施設に入れたらいいと言うのは簡単なものの、介護してくれる人があまりにも少ないため頼りきりにするには無理があるという証拠。私はこの数字を見て、かなりヤバイと思いました。誰にでも家族介護の可能性がある裏付けではないでしょうか。

下手をすれば「介護離職」ならぬ「介護廃業」の可能性もあるなと、恐ろしくなった気がしています。

個人事業主・ひとり社長だからこそ仕事と介護の両立を考える

ここまで長々と書きましたが、要するに雇用保険に加入できない個人事業主・ひとり社長こそ、介護のことを考えていく必要があると思っています。

そんな悩みを持っていたときに巡り合ったのが、一般社団法人 法人介護離職防止対策促進機構(KABS)の代表理事である和氣美枝さんでした。

法人向けのセミナーや研修を中心にされている方でテレビやラジオへの出演経験のある和氣さん。ご自身もお母様を介護されている身として、実体験に基づくさまざまな問題提起や発信を続けていらっしゃいます。

今回、和氣さんが5月24日(火)に実施されるシンポジウムが、私の書きたかった内容と一致したため掲載の許可をいただきました。

「経営者や労務・人事担当者向け」とおっしゃっていましたが、すべての役割を内包するクリエイターは無関係ではないと思っています。特に2部は…。また、時事問題を扱うライターさんにとっても大きな関心事でもあるでしょう。

そして実際、介護廃業は起きているそうです。ますます他人事ではありません。

将来人を雇ったり、法人になろうと思っているクリエイターさんはもちろん勉強や対策になります。そして、明確な答えはなかったとしても何かしらのヒントがあると思います。

クリエイターの「介護離職」ならぬ「介護廃業」に陥らないために、必要な考え方や観点を知ることができるかもしれません。介護する人もされる人も笑顔でいること。そのために学ぶのもいいのではないでしょうか。

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