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【序文-1グランプリ】ふずく編

やあやあどうも、ふずくでございます• ᴥ •

いやあ皆さん、

辞書の秋ですねえ〜〜!!!!

改訂や物書堂版のリリースが続き、カレンダーがミチミチになってきました。
(代わりにお財布はすっからかんですが)
辞書尚友も辞書業界を盛り上げるべく、新連載を開始します!
どうぞ最後までお付き合いくださいまし〜〜

🏆序文-1グランプリとは

先日、顔合わせ兼第1回編集会議を行ったときのこと。
メンバーの1人がこう言いました。

辞書の序文、全部読みたくない……?

一同首がもげるぐらいうなずき、推し序文の話で盛り上がりました。
これは「全部読んでみた」の1回モノで終わるのはもったいない……!
ということで、それぞれ推し序文を紹介しよう、というのが本企画です。

⚠️序文-1グランプリのルールと注意点

ルール

  1. 序文の観点のみで辞書を選出する(序文の内容と本文の比較は自由)。

  2. 「序文-1」とうたっている以上、辞書は必ず1冊のみにする。

  3. 辞書は国語辞典に限らない

注意点

これらはあくまで辞書尚友メンバー個人の意見・感想です。

🐻‍❄️ふずく的序文-1グランプリ

それでは、さっそく発表いたします!!!!
私ふずくが選ぶ推し序文は
ドゥルルルルルルルルルル……ジャンッ

新選国語辞典(小学館)

です!!!!
ここで、簡単に新選国語辞典についてご紹介します。

新選国語辞典とは

新選国語辞典
小学館発行の小型国語辞典。初版1959年。『第九版』は2011年刊行。金田一京助・佐伯梅友・大石初太郎・野村雅昭・木村義之編。収録語数9万320語。

小学館 大辞泉プラス

中高生から社会人まで幅広く使えるこの辞書。
最新版である第十版は2022年2月に発売されており、収録語数は9万4000と小型の国語辞典では最大級。

そしてなにより、万華鏡をモチーフにした装丁が非常に可愛らしい。
編集者の方のコメントがステキなのでご紹介します。

この辞典を、万華鏡のようにそっとのぞいてみると、たくさんの知識や言葉と出会えるはずです。きっと、あなたの毎日をすこし、豊かにしてくれることでしょう。

小学館ホームページ

限られた紙幅で最大限の知識を収めた、いわば小さな巨人。
そんな新選国語辞典の序文の魅力をお伝えします。

編者のことば―第十版刊行にあたって―

新選国語辞典第十版には、序文に相当するものが2つあります。
1つは「編者のことば―第十版刊行にあたって―」(1ページ)、
もう1つは「初版 編者のことば」(3ページ)です。

まず前者について見ていきたいと思います。一部を引用します。

しかし、第九版とこの十版との間には、かなり時間が空いてしまいました。いろいろな理由はありますが、その最大のものは、二〇一九年の年末から吹きはじめた新型コロナウイルスによる感染症の嵐です。
(中略)
このような小型国語辞典は、新語辞典や流行語辞典と異なり、新しいことばの全てを採り入れることはできません。「コロナウイルス」という語を一つ加えれば事はすみそうですが、それでは不十分です。「コロナ」「ウイルス」という構成要素は見出しにあります。しかし、その二つをつなぎ合わせても、この語の意味の把握はできません。しかも、一般にはこれをただ「コロナ」と略して、ウイルスや感染症を指す使い方も広まってきました。


この部分ではコロナ禍の影響について述べられています。
やはりコロナには触れないわけにはいかないのでしょうか。

ほかの辞書も見てみましょう。
以下は、本格的にコロナウイルスが流行りだした2019年冬以降に刊行された辞書と、コロナ禍への言及の有無です。

2020年11月 新明解国語辞典 第八版……言及◯

時代に即した国語辞典として、新項目も多数採用した。今、正にその渦中においてこの序文を執筆しているのであるが、新型コロナウイルス関連の新語が多くなったのも当然であろう。全員の命に関わる事柄なのに、一部の人にしか意味の分からないカタカナ語が多用されるのは、「ハザードマップ」など、いやそれ以前からの流れがますます加速していることを意味し、敢えて刺激を与えるためという効用を仮に認めたとしても、なお考えるべきものと思うが、辞書の役割としてはそれらを分かりやすく解説するしかない。

2020年12月  旺文社標準国語辞典 第八版……言及
2021年1月  明鏡国語辞典 第三版……言及

2022年1月  三省堂国語辞典 第八版……言及

私たちの言語生活は、今や完全にインターネット空間に軸足を移した観があります。ここ十年ほどでスマートフォンがすっかり普及し、SNSの利用率も全世代で高まっています。二〇二〇年からの新型コロナウイルスの感染拡大により、人々の直接的なコミュニケーションが減少し、会議や仲間同士のおしゃべりなどもコンピューターの画面越しに行うことが一般化しました。

2022年9月  例解新国語辞典 第十版……言及

意外にも、コロナ禍に言及しているのは新明国(2020)と、三国(2022)新選(2022)のみでした。

考えてみれば2019〜2021年に出ている辞書は、長い長い辞書の制作期間の後半にコロナ禍が来ていることになります。

そうなると、コロナ関連のことばが載っている辞書は、これから出てくるのかもしれません。
(その辞書が、社会情勢や新語をどれだけ反映する方針かにもよりますが)

新明国(2020)、三国(2022)はかなり早い段階でコロナ禍に言及していることになりますが、やや抽象的な感じがします。

一方新選(2022)では、上に示したとおり、コロナ禍が辞書の改訂にどのような影響を及ぼすのかについて、比較的詳細に述べられています。
それにより、国語辞典を作る難しさや面白さを、コロナ禍という具体的な例をもって知ることができるのです。

少し大げさにいえば、コロナ禍をはっきりと意識しだした最初の辞書となるわけですね。

10月中には現代新国語辞典や旺文社国語辞典の新版がでるので、ぜひコロナ関連のことばにも注目したいと思います。

初版 編者のことば

もうお腹いっぱい?
いやいや、ここからが本題ですヨ• ᴥ •

なにしろ、私が新選を大好きになったきっかけこそ、この「初版 編者のことば」なのですから。

それでは参りましょう。
最大の推しポイントはコチラ。

ところが、「国語辞典もたくさんあるが、国語の勉強のためにはピッタリというのがない。」というような批判を、わたくしどもは、ときどき教育の現場におられる先生がたからお聞きします。 ある辞典は語の数が少なくて、勉強のためにも日常の必要に対しても、役だたぬ場合が多かろうと思われます。また、当用漢字の使い方や送りがなのつけ方について、語の標準的な書き表し方をはっきり示した辞典といえば、これは今のところほとんど見当たりません。
そこで、わたくしどもは、こういう欠点をうずめて、辞典としてほんとうに利用価値の高い辞典を作り出したいと思いたちました。

この部分を見た瞬間、私は雷に打たれたような衝撃を受けました。

⚠以下は、本当にふずくの超個人的な意見です⚠
(保険をかけていくスタイル)

近年辞書が注目されることがあるとすれば、それは極端な話、おもしろ語釈か新語かという感じがします。
出版社としての売り出し方かもしれないし、あるいはテレビ局や取材する方の考え方によるのかもしれません。

もちろんそれらはエンタメとして、辞書の面白さを広く知ってもらうきっかけになったこと、辞書業界の繁栄に貢献したことは言うまでもありません。

しかし思うのです。
それに頼りすぎていませんか?
と。

ひと癖もふた癖もあるような辞書がもてはやされる今日、そういった要素が少ない、言ってしまえば地味な辞書が埋もれてしまっています。
逆に、派手派手な辞書もその機能性に焦点を当ててもらえていない。

人気だからとりあえずコレ!!!!とみんな同じ辞書を持っている。
もしかしたらあなたには、もっと合っている辞書があるかもしれないのに。
必要な人に、必要な辞書が届いていないという現状があります。

「読み物としての辞書」はあくまで副次的なものであり、まず第一に評価されるべきは学習の道具としての利便性、すなわち「使える辞書かどうか」であるべきです。

では「使える」とは何か?
私個人の意見としては、ユーザーが欲しているものを理解し、その導線が明確に敷かれていることです。

ユーザーとはどのような人々か。
「国語辞典を使うのは学習者しかいないじゃないか?」
「学習者に限定しろってこと?」
いいえそうではありません。

「辞書を使用するすべての人」も、十分限定されていると思います。
(そこを細分化したとき、学習者という立場が出てくるわけで)

そのようにして定められた範囲の人々が、辞書を開いた時にガッカリせずに済むためにはどうしたらよいかということが重要だと考えます。
「辞書がおもしろい」というのは、機能に満足してはじめて立ち上る感覚なのではないでしょうか。

そのために必要なのが、導線です。
ユーザーの要求に合わせて作り出したその特長は、それぞれの国語辞典のカラーになります。
カラーが伸びれば伸びるほど、ユーザーは辞書を選びやすくなります。
自分に必要な辞書がどれなのか、分かるようになります。

新選国語辞典の「初版 編者のことば」はこのあと、7つの方針を挙げ、「利用価値の高い辞典」たるために意識したことについて述べています。

たとえば6つ目に、
「文法に関する説明、語の用法についての説明などをなるべくくわえて、その理解や使用のうえに役だつようにする」
があります。

実際、圧倒的な図版の多さや参考欄の充実具合は、その思想が今日まで受け継がれている証拠だと思います。

そのことについては、コチラの記事がおすすめです。

おわりに

ここまで、私ふずくの推し序文をご紹介してきました。
だいぶ長くなってしまいましたが、初回拡大スペシャルということでお許しください。

新選国語辞典「初版 編者のことば」には、今日の辞書が大切にすべきことが明確に述べられていると考えます。

その序文のイズムが、実際どのように反映されているのか。
もっと詳しく知りたいぞ!と思った方は、ぜひとも手にとって自分の目で確かめてみてください。

次回はカメこの推し序文です。お楽しみに🐢
ではでは• ᴥ •

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