【序文-1グランプリ】ふずく編
やあやあどうも、ふずくでございます• ᴥ •
いやあ皆さん、
辞書の秋ですねえ〜〜!!!!
改訂や物書堂版のリリースが続き、カレンダーがミチミチになってきました。
(代わりにお財布はすっからかんですが)
辞書尚友も辞書業界を盛り上げるべく、新連載を開始します!
どうぞ最後までお付き合いくださいまし〜〜
🏆序文-1グランプリとは
先日、顔合わせ兼第1回編集会議を行ったときのこと。
メンバーの1人がこう言いました。
辞書の序文、全部読みたくない……?
一同首がもげるぐらいうなずき、推し序文の話で盛り上がりました。
これは「全部読んでみた」の1回モノで終わるのはもったいない……!
ということで、それぞれ推し序文を紹介しよう、というのが本企画です。
⚠️序文-1グランプリのルールと注意点
ルール
序文の観点のみで辞書を選出する(序文の内容と本文の比較は自由)。
「序文-1」とうたっている以上、辞書は必ず1冊のみにする。
辞書は国語辞典に限らない。
注意点
これらはあくまで辞書尚友メンバー個人の意見・感想です。
🐻❄️ふずく的序文-1グランプリ
それでは、さっそく発表いたします!!!!
私ふずくが選ぶ推し序文は
ドゥルルルルルルルルルル……ジャンッ
新選国語辞典(小学館)
です!!!!
ここで、簡単に新選国語辞典についてご紹介します。
新選国語辞典とは
中高生から社会人まで幅広く使えるこの辞書。
最新版である第十版は2022年2月に発売されており、収録語数は9万4000と小型の国語辞典では最大級。
そしてなにより、万華鏡をモチーフにした装丁が非常に可愛らしい。
編集者の方のコメントがステキなのでご紹介します。
限られた紙幅で最大限の知識を収めた、いわば小さな巨人。
そんな新選国語辞典の序文の魅力をお伝えします。
編者のことば―第十版刊行にあたって―
新選国語辞典第十版には、序文に相当するものが2つあります。
1つは「編者のことば―第十版刊行にあたって―」(1ページ)、
もう1つは「初版 編者のことば」(3ページ)です。
まず前者について見ていきたいと思います。一部を引用します。
この部分ではコロナ禍の影響について述べられています。
やはりコロナには触れないわけにはいかないのでしょうか。
ほかの辞書も見てみましょう。
以下は、本格的にコロナウイルスが流行りだした2019年冬以降に刊行された辞書と、コロナ禍への言及の有無です。
2020年11月 新明解国語辞典 第八版……言及◯
2020年12月 旺文社標準国語辞典 第八版……言及✗
2021年1月 明鏡国語辞典 第三版……言及✗
2022年1月 三省堂国語辞典 第八版……言及◯
2022年9月 例解新国語辞典 第十版……言及✗
意外にも、コロナ禍に言及しているのは新明国(2020)と、三国(2022)新選(2022)のみでした。
考えてみれば2019〜2021年に出ている辞書は、長い長い辞書の制作期間の後半にコロナ禍が来ていることになります。
そうなると、コロナ関連のことばが載っている辞書は、これから出てくるのかもしれません。
(その辞書が、社会情勢や新語をどれだけ反映する方針かにもよりますが)
新明国(2020)、三国(2022)はかなり早い段階でコロナ禍に言及していることになりますが、やや抽象的な感じがします。
一方新選(2022)では、上に示したとおり、コロナ禍が辞書の改訂にどのような影響を及ぼすのかについて、比較的詳細に述べられています。
それにより、国語辞典を作る難しさや面白さを、コロナ禍という具体的な例をもって知ることができるのです。
少し大げさにいえば、コロナ禍をはっきりと意識しだした最初の辞書となるわけですね。
10月中には現代新国語辞典や旺文社国語辞典の新版がでるので、ぜひコロナ関連のことばにも注目したいと思います。
初版 編者のことば
もうお腹いっぱい?
いやいや、ここからが本題ですヨ• ᴥ •
なにしろ、私が新選を大好きになったきっかけこそ、この「初版 編者のことば」なのですから。
それでは参りましょう。
最大の推しポイントはコチラ。
この部分を見た瞬間、私は雷に打たれたような衝撃を受けました。
⚠以下は、本当にふずくの超個人的な意見です⚠
(保険をかけていくスタイル)
近年辞書が注目されることがあるとすれば、それは極端な話、おもしろ語釈か新語かという感じがします。
出版社としての売り出し方かもしれないし、あるいはテレビ局や取材する方の考え方によるのかもしれません。
もちろんそれらはエンタメとして、辞書の面白さを広く知ってもらうきっかけになったこと、辞書業界の繁栄に貢献したことは言うまでもありません。
しかし思うのです。
それに頼りすぎていませんか?
と。
ひと癖もふた癖もあるような辞書がもてはやされる今日、そういった要素が少ない、言ってしまえば地味な辞書が埋もれてしまっています。
逆に、派手派手な辞書もその機能性に焦点を当ててもらえていない。
人気だからとりあえずコレ!!!!とみんな同じ辞書を持っている。
もしかしたらあなたには、もっと合っている辞書があるかもしれないのに。
必要な人に、必要な辞書が届いていないという現状があります。
「読み物としての辞書」はあくまで副次的なものであり、まず第一に評価されるべきは学習の道具としての利便性、すなわち「使える辞書かどうか」であるべきです。
では「使える」とは何か?
私個人の意見としては、ユーザーが欲しているものを理解し、その導線が明確に敷かれていることです。
ユーザーとはどのような人々か。
「国語辞典を使うのは学習者しかいないじゃないか?」
「学習者に限定しろってこと?」
いいえそうではありません。
「辞書を使用するすべての人」も、十分限定されていると思います。
(そこを細分化したとき、学習者という立場が出てくるわけで)
そのようにして定められた範囲の人々が、辞書を開いた時にガッカリせずに済むためにはどうしたらよいかということが重要だと考えます。
「辞書がおもしろい」というのは、機能に満足してはじめて立ち上る感覚なのではないでしょうか。
そのために必要なのが、導線です。
ユーザーの要求に合わせて作り出したその特長は、それぞれの国語辞典のカラーになります。
カラーが伸びれば伸びるほど、ユーザーは辞書を選びやすくなります。
自分に必要な辞書がどれなのか、分かるようになります。
新選国語辞典の「初版 編者のことば」はこのあと、7つの方針を挙げ、「利用価値の高い辞典」たるために意識したことについて述べています。
たとえば6つ目に、
「文法に関する説明、語の用法についての説明などをなるべくくわえて、その理解や使用のうえに役だつようにする」
があります。
実際、圧倒的な図版の多さや参考欄の充実具合は、その思想が今日まで受け継がれている証拠だと思います。
そのことについては、コチラの記事がおすすめです。
おわりに
ここまで、私ふずくの推し序文をご紹介してきました。
だいぶ長くなってしまいましたが、初回拡大スペシャルということでお許しください。
新選国語辞典「初版 編者のことば」には、今日の辞書が大切にすべきことが明確に述べられていると考えます。
その序文のイズムが、実際どのように反映されているのか。
もっと詳しく知りたいぞ!と思った方は、ぜひとも手にとって自分の目で確かめてみてください。
次回はカメこの推し序文です。お楽しみに🐢
ではでは• ᴥ •