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ドクカン「水曜日のおじさんたち」

ドクカン「水曜日のおじさんたち」 
著者:鈴井貴之・藤村忠寿・嬉野雅道                 出版:角川書店

まず、読み進める前に”ドクカン”について以下3点お気を付けください。

① 単純にその本の読書感想文+@的なものです。
② もしかしたら+@がメインです。というか「メイン」です。
③ ネタバレ要素満載です。

以上の3点お気を付けください。


この本は小説でもエッセイでもない。これは3人のおじさんが大分県と鹿児島県をブラブラ旅した本である。3人が風情ある街をブラブラ歩き、お腹が減れば少し高い料理を食べ、部屋に露天風呂が付いた値段の張る部屋に泊まる。
それだけの本。
”水曜どうでしょう”を知らない人がこの本を見ればただただ3人のおっさんが街を歩き、地元の料理を堪能して酔っ払い、露天風呂に入って
「いぇぇぇぇぇい!!」
「うぉぉぉぉぉ!!」
と両手を上げ叫んでいるシーンなど何も面白くもないだろう。なんなんだこのマニアックな本は、と引かれることだろう。
でもこの本は”水曜どうでしょう”を知っている人間であればおもしろく、そして涙する本なのだ。実際、僕はこの本を読み感動して泣いた。決してこの本は読み手を泣かそうとする本ではない。ただ3人のおじさんがブラブラ旅をしただけの本なのである。でも泣けるのである。
中でも鈴井さんと藤村さんが書くコラムが凄く良い。
鈴井さんはこの”水曜どうでしょう”の一演者として、一会社の社長として、子を持つ父親としての視点から見る水曜どうでしょうは大泉さんやディレクター陣側とは違う責任の重さがある。
「僕だけずっと硬く重い鎧兜を身に着けて旅に出ていたかもしれない」
と本人が言うように責任ある立場から見る”水曜どうでしょう”はまさに”生きるか死ぬか”のデッドラインの上で戦ってきた人の言葉。その言葉を知り、当時の作品を見ると鈴井さんの姿が痛いほど必死で、苦しみながら戦ってきたのかがわかる。
藤村さんはこの番組のディレクターとして過去の”水曜どうでしょう”と今の”水曜どうでしょう”の二つの視点で描くこのコラムは非常に面白い。
藤村さんも鈴井さんのように番組の在り方や、一ディレクターとしての挑戦など、当たり前だがレギュラー放送時には感じられない二人の姿がこの本には在り、それが僕の涙腺を壊していく。
嬉野さんは鈴井さんや藤村さんとは違う言葉で、今後の水曜どうでしょうを語っていく。
そしてまたこの3人とも扱う言葉がキレイなのだ。昨今の罵詈雑言とは違う穏やかな時間や空気がこの本には流れている。
将来、きっと僕もおじさんと呼ばれる年齢になるだろう。そんなときにこのお三方のような素敵なおじさんになりたいと思う。ちょっと我儘で、人懐っこく、自分の欲に対して正直な人になりたい。
僕にはこんな素敵なおじさんの見本がいるのだから僕は幸せな人間なのだ。
勿論、大泉洋さんも僕は尊敬している。

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