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【EVENT REPORT】JIREAオープニングシンポジウム 〜コロナ禍において、レッジョでは子どもたちに向け、何を考えていたのか。レッジョの一貫した哲学とは〜

Reggio Emilia Approachをともに学び、深めるための開かれたフォーラムとして、「JIREA(Japan Institute for Reggio Emilia Alliance)」がスタート。
開設を記念し、2020年10月23日(金)オンラインにて、約150名の参加者の皆さまと一緒にオープニングシンポジウムが開催されました。

レッジョ・チルドレンからはプレジデント(代表)のクラウディア・ジュウディチ氏、日本からは学習院大学特任教授 佐藤学先生、東京大学大学院教育学研究科長 秋田喜代美先生にもご登壇いただき、新型コロナウイルス(以下、コロナ)の感染拡大と共にある教育現場、子どもたちの学びの今とこれからのお話をいただきました。

JIREA発足にあたり

Speaker : JIREA代表 松本 理寿輝

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 まずはじめに、JIREA代表の松本理寿輝からの挨拶。JIREAの紹介とあわせて、JIREAを発足するにあたり、大切にしている2つの視点について、お話をさせていただきました。1つ目は、学び合いのための開かれた場「アライアンス」でありたいということ。2つ目は、JIREAは日本の組織であり、共通性とそれぞれの文化性を感じながらこのフォーラムをつくっていきたいということ。そして改めて、このJIREA発足に関し、たくさんの方のご協力があったことへの感謝を述べました。

コロナ禍での「バブル」という概念と、「美」を保ち続けること

Speaker : レッジョ・チルドレン プレジデント クラウディア・ジュウディチ氏

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 続いては、レッジョ・チルドレン プレジデントのクラウディア・ジュウディチ氏。レッジョの今。世界の今。そして、この大変な状況の中でも、私たち教育者はどうあり続けるべきか。研究の場・学びの場はどうつくっていくのか。子どもたちはこのコロナで何をどう感じ取ったのか。社会の中で教育はどんな存在であり、何に繋がっていくのかを、お話しいただきました。
 イタリアでは2月後半から新型コロナウイルスの感染が拡大し、ロックダウンが行われました。幼児学校や乳児保育所も閉鎖され、6-7月に一部開きはしたものの、本格的に再開されたのは9月7日でした。その中でも、保育者たちはオンラインで子どもたちとのコミュニケーションをとり、質の高い教育をいかに継続していくのかを模索し続けていたとのことです。

その後、学校が再開した際には、感染予防として一定のスペースの中で過ごす「バブル」という考え方が取り入れられました。また、「バブル」を適応したことで、クラス同士の交流や、まちとの関わりは減ったものの、なるべくそれを感じさせないように、「美」を重視した、感性や感覚を保ち続けることができる環境づくりに、今まで同様に力を入れ、質の高い教育を目指したのです。

繋がりのある教育の中で、子どもたちとどう生きていくか

Speaker : 学習院大学特任教授 佐藤 学先生

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次に、長年レッジョ・エミリア・アプローチを研究し『驚くべき学びの世界」の執筆や、100の言葉の詩の翻訳などもされている、学習院大学特任教授 佐藤学先生からのお話。
学びへの現状と課題に対し、誰も一人にしない公正な教育、より「繋がる」ことを意識した教育の発展を願い続けていきたい、話してくださいました。

質の保持への挑戦

Speaker : 東京大学大学院教育学研究科長 秋田 喜代美先生

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続いて、保育やレッジョ・エミリア・アプローチの研究をし、JIREAのボードメンバーでもある東京大学大学院教育学研究科長 秋田先生から。「乳幼児の子どもたちの存在を守り、代弁するのは誰なのか。子どもは主人公であり、未来である。その子どもたちと、私たちはどのように生きていくのか」といった言葉が印象的で心に残りました。

クラウディアさんからのメッセージ

「意味のある経験、質の高い経験をさせることが大切であり、そのためには、まずは教育者を尊重し、専門的な学びの場であることが大切です。これからの日本での幼児教育、小さな子どもたちを中心にしながら、社会に、未来に、世界にどう届けていくのかを一緒に考えられることを、光栄に思います。」


遠く離れたレッジョでも、このコロナ禍での課題や願いは同じであること。また、それに対してただ悲観的、後ろ向きになるのではなく、次へどうつなげていくのか、子どもたちと共にどういった姿勢で未来へ向かっていくべきなのかを改めて考える時間となりました。

レッジョの中では「バブル」という概念を新たに構築し、コロナと共にある教育の可能性を、更に広げました。その中でも「美」を意識することは貫き続ける哲学であり、その考えを持って子どもと向き合うこと、感性や感覚を保ち続けることのできる環境を作るのが私たち大人の役割である、ということが、レッジョの大きなメッセージなのではないでしょうか。

どんな国でも、どんな場所でも時間でも、そこに子どもがいる限り、100の言葉は存在するでしょう。それを共に紡いでいくことが、私たち教育者であり、JIREAの未来なのだと信じています。

(文責:JIREA運営事務局)

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