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スーパーファンタジーミリオンストライクヒーローズガーデンホテル

ガラケーと言われる「フィーチャー・フォン」から「スマートフォン」へ電話が進化したように、ラブホテルにもいくつかの進化の歴史がある。ラブホテルの歴史を振り返ると、古くは「連れ込み宿(貸座敷)」が始まりだった。江戸時代にもそれはあったけれど、明治へと時代が変わり、日本料亭が不況の煽りで「連れ込み宿」へと業態を変え一気に件数は増えた。そのため、連れ込み宿は近年のラブホテルとは外観が大きく異なる。

その後も進化は生まれた。特筆すべきは戦後間もない頃に起きたものだろう。それは福岡県北九州市にあるラブホテル(当時はまだ連れ込み宿と言った方が的確だろう)の跡取りとして生まれた津田屋唐十郎の革新的アイデアによるものだった。

津田屋唐十郎は、北九州という八幡製鐵所を筆頭に工業地帯ということもあり、当時では手に入りにくい鉄製品を容易に手にいれることができたことから、発明を趣味としていた。彼の発明したもので有名なものといえば、テレビの回転台だ。古い旅館などに行くとテレビが回転するものを見たことがあるはずだ。それを発明したのが津田屋唐十郎だ。そもそもは鏡を回転させる回転鏡としての発明だったけれど、後にテレビの回転台として人気を集めた。

彼はこの発明という趣味を家業であるラブホテルに注ぎ込んだ。当時はまだ連れ込み宿から連想されるように、人々はラブホテルにどこかジメジメとした決して爽快ではない印象を持っていた。そこに「エンターテーメント」として連れ込み宿、つまりラブホテルを作り出したのだ。

彼が作り出したのは「回転ベッド」だった。ベッドが回転する一昔前のラブホテルから連想する代表的なアイテムだ。今では規制等で見ることも少なくなった回転ベッドではあるが、当時は画期的でラブホテルはエンターテーメントとしてのポジションを手に入れた。彼が作り出した回転ベッドは瞬く間に全国へと広がり、ラブホテル業界は堰を切ったように、エンターテーメントとしての進化を加速させた。

ネオンを使った外装や、駐車場にある奥が見えないようにするカーテン(これも津田屋唐十郎の発明だ)、ガラス張りのお風呂など今までの暗いイメージを見事に払拭した。フリータイムというシステムの誕生もこれがきっかけだ。

美しい水を生み出す井戸がいつか枯れるように、ここ数十年は話題になるようなラブホテルの出現は聞かなかった。もちろん単体で見ると面白いラブホテルはたくさんある。しかし、業界に衝撃を与えるようなラブホテルは最近はなかなか出現していなかった。

そんな現代についに革新的な、時代を反映したラブホテルがオープンした。それが「スーパーファンタジーミリオンストライクヒーローズガーデンホテル」である。

何よりの特徴は「スーパーファンタジーミリオンストライクヒーローズガーデンホテル」は基本利用料が無料なのだ。設備ではなくフリータイムのようなシステムとしての進化だ。八王子から山梨へと抜ける狭い山道の途中にあるそのラブホテルは、外観は普通で真新しいビジネスホテルのようにも感じられる。

部屋は30部屋ほどあるが、どれも同じ部屋で基本利用料は無料。フロントで「プレイ石」という石を購入して課金アイテムの購入に充てる。初回利用では無料でプレイ石1000個をプレゼントされる。そして、フロントでタブレットを渡される。

まず部屋に入ると部屋は乱れていることが多い。前の利用者が使ったままだからだ。タブレットで「部屋の掃除」をプレイ石で購入する。ちなみに帰りに「部屋の掃除」をお願いすれば、自分たちの残り香的なものを次の人に感じさせずに済む。

部屋の掃除をお願いすると、おそらくバイトと思われる地元のご年配の女性が入ってきて、手際よく掃除をしてくれる。地元のご年配の女性によってはポケットから個包装のお菓子をくれることもある。この清掃タイムを有効活用して、必要となる道具等を二人でタブレットを使い選ぶといいだろう。

バスタオルや石鹸、布団や避妊具などはどれもプレイ石が必要となる。布団もお願いしなければ、ベッドと思われる木枠が置いてあるだけだ。ただ硬いのが好きという人もいるだろうから、その場合はプレイ石を使わなくてもいい。

さらに「ガチャ」と呼ばれるシステムもある。プレイ石で回すことでランダムでアイテムをもらうことができるのだ。SSRと言われる最もレアなアイテムの出現率は2.58%と低い。SSRの次にレアなSRは8%の出現率ではあるが、10連ガチャではSR以上が一枚以上確定するので、おすすめは10連ガチャということになるだろう。

ちなみにSSRでドロップされるアイテムの一つは生きたスッポンだそうだ。石川県能登で育てられた極上のスッポンと聞いている。

部屋にいる間は、いつでもプレイ石でアイテムの購入はできる。注文したアイテムはすぐに地元のご年配の女性が部屋まで届けてくれる。地元のご年配の女性によってはポケットから個包装のお菓子をくれることもある。安く済ませようと思うといくらでも安くなるし、プレイ石を買えば買うほどムードあるプレイを勤しむことができる。

面白いのはデフォルトでは電気を消すことができず、プレイ石で消灯や薄暗くするなどが可能となる点だ。男性はこの課金を嫌がるが、多くの女性はここに課金を求めるそうだ。男女の差が出て非常に面白い課金の一場面と言える。

時間も課金の対象で30分で出ることもできるし、1日中いても問題はない。このシステムが始まってすぐは課金のしすぎが問題にもなった。新聞やネットなのでそのニュースを読んだ人も多いはずだ。駐車場利用も課金対象のため路駐が増えたりと、課金の規制に乗り出す動きもあった。

問題もあるようだけれど、画期的なラブホテルの誕生なので、今後どうなるかを見守りたい。また最近始まった課金に、ホテルの外観にプロジェクションマッピングを行うというものもある。ホテル利用者が課金することで、利用者の名前などをカッコよく、オシャレにラブホテルの壁面にプロジェクションマッピングしてくれる。夜だけの利用に限られ、課金者は室内のため見ることはできないが、美しいプロジェクションマッピングのため、密かな観光地として人気を集めているそうだ。

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