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割り切り女子について(短編風)


待ち合わせ場所に24歳ニートのマチはやって来た。グレーチェックのワンピースを着て、腰のベルトは丸い腹を締め付けている。

俺はマチをタリーズに連れて行った。俺は2ヶ月近くセックスをしていない。マチとはハッピーメールで知り合った。
相手を選ばす、時間をかければ誰かしら会えるものだ。俺はヤれれば誰でも良い。

マチは正直で素直な子だった。男の車で大雨の日にドライブをした話をしてくれた。狭い道を通り車がこすれ、後にホテルに行ったらしいのだが、「ペニスをこする前に車こすってどうすんだ!」とオチまで付いていた笑。

俺はこのデブ女と話してるのを他の客に見られるのが恥ずかしかった事を白状しておく。でもこの女との話は楽しく、そんな事はどうでも良くなった。

一時間くらい経ち、女をホテルに誘うとOKしてくれた。ホテルに入り俺が料金を払い、部屋が空くのを待った。こいつはデブだから後で千円くらい貰おうと思いながら、自販機のジュースを奢ってあげた。

部屋に入り、ソファに座ったマチは「こんな私で良いのか?」と自分の丸い腹を指差しながら言った。
今更そんな事どうでも良かったので、適当に返事をしてシャワールームに湯を貯めに行った。

部屋に戻るとマチは、「流れでしたくない」といきなり不機嫌に俺に言う。
そして、普段はハピメで‘’割り切り‘’をしてる事を語った。

「一回してもう会わないならしたくない。ただ遊ばれるのは嫌。割り切りならしても良い」と言うのがこのデブ女の主張だ。

俺はホテル代を無駄にしたくないから、このまま何もせず別れるのは絶対に嫌だった。もし今何もせず別れたら、死ぬ程自己嫌悪する未来が見えていた。

俺は女がグダった時に言うべき、本で学んだ事を言った。

「俺もマチちゃんの同意がないのにするのは嫌だ。今はマチちゃんとどんな関係を築きたいかははっきりと考えてない。だけど、今マチちゃんともっと仲良くなりたいと言う気持ちは強く持ってるよ…」

最後の一行はオリジナルだ。良いか悪いかは分からない。だが今回は上手く行った。女は直ぐホテルに来た自分も悪かったと言って、セックスする事になった。

一緒に風呂に入った。女の尻には蒙古斑があった。蒙古斑は太い女の尻によくある。太りやすい遺伝子を受け継いだ負の証だ。

ベッドで行って遊んだ。今回のセックスではイケなかった。理由は分かっていて、女から‘’割り切り‘’と言う言葉を聞いて、それが頭から離れなかったからだ。

‘’割り切り‘’と言う言葉には風俗店ではありえない、素人女が起こすあらゆる面倒事の種子が無限に感じられる。だから、その言葉を聞くと心の危険信号が灯って、リラックスできなかった。

女はキスを渋った。キスとフェラは遊びではしなくないと言ってた。これは彼女なりの線引きだった。

マチの恋愛遍歴。マチは男女とも無料でハピメよりカオスな出会い系で、タイプでもないおっちゃんで処女を捨て、十歳上のフリーターと付き合うが二回しか会わずに別れた。
そして今は働かず生活保護を受けながら、割り切りで金を稼いだり、客が捕まらないと寂しくてタダでヤったりしているらしい。男とは一回しか会わない事がほとんどなのでセフレはいない。

この女が俺とヤろうとする前に、‘’割り切り‘’と言う言葉を出したのも、どうせ一回しか会えないし、取れるなら金を取ってやろうと思ったからだ。

この女は仕事による社会的承認が望めない分、愛される事を普通の女よりきっと強く望んでいるはずだ。
でも痩せて魅力を上げる事も働く気もない。
根本的な所で自信に欠けており、頑張れない女なのだ。親からも放任されてるんだと思う。

誰もこの女を正しい方向へ助けない。きっと救いの手が指し伸ばされるのは、もっとこの女が壊れた後だ。

マチに風俗で働く事を提案したら、フェラがあるから嫌と言った。本当に愛してくれる人のために取っておきたいのだろうか。

マチとは笑顔で別れた。

翌日、マチはハピメの掲示板に「寂しい 会いたい」と書き込みをしていた。





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