15. 身体を動かす~乳腺細胞にビタミンDを届ける方法2
ポイント
運動することで乳がんにかかるリスクと、乳がん死のリスクを大きく下げることができる。
乳がんを減らす行動
気持ちよく身体があたたまる運動を習慣にする
30分以上続けて座らず、立って体を動かす。
立てないときも少しでも体を動かす。
アメリカの大規模な調査で、 1日に6時間以上座る女性は、3時間以下しか座らない女性に比べて10%乳がんのリスクが高いことがわかりました。(参考文献1)(参考ウェブサイト1)
動かないでいると、毛細血管は閉じリンパ管は流れを止めてしまいます。
そうなれば、乳腺細胞には酸素もビタミンDは届きにくくなります。
近代まで、人間は日中は屋外で身体を動かして働くのが「普通」でした。
最近になって多くの人が一日中室内で座って生活するようになりましたが、人体はまだそのように進化していません。
オフィスワーク中心の動かない生活が、乳がんを増やした原因その4です。
毛細血管の血流やリンパ流は、運動することで何倍にも増えます。
運動の中でもおすすめなのは、身体が温まり会話できる程度の有酸素運動です。
ビタミンDを作る意味でも、春~秋は屋外で1日30分以上身体を動かす時間を持ちましょう。
特に、オフィスワークの人は、30分座ったら1分間立って身体を動かしましょう。
さあ、今この文章を読んでいるあなたも、書いている私と一緒にやってみましょう!
立って、足踏みをしながら、腕を上下、前後左右、クロールのように大きく回して、シンバルを打つように開いて閉じて、1分間。
気分はいかがですか?
身体が喜んでいるのを感じますか?
9時から5時、8時間の間に30分に1回1分間動けば16分の運動になります。
立てない時も肩を動かしたり、胸をマッサージしたりしてみましょう。
さらに、1日にもう20分くらい、続けて身体が温まる運動をやってみましょう。
大きく腕をふっての通勤ウォークでもいいですし、テレビ体操やラジオ体操は胸を大きく動かすのでとてもおすすめです。
運動習慣のない人、特に肥満の人ほど少しの運動も気分が乗らずすぐ疲れてしまうものですが、それは毛細血管が縮んでいて血流が悪いこと、そして脂肪をエネルギーに変えることが下手になっているからです。
糖質を摂りすぎると、身体は余ったエネルギーを体脂肪として貯蓄しますが、脂肪をエネルギーに変えられないと、すぐにお腹が減ってしまいまた食べたくなります。
まるで預金口座の暗証番号を忘れてしまったようなものです。
貯まるばかりの体脂肪は、本来エネルギーになるはずなのに病気の原因になってしまいます。
少しずつ、まずはテレビ体操の10分から始めることをおすすめします。
乳癌診療ガイドラインでは、「閉経後女性では運動が乳癌発症リスクを減少させることはほぼ確実である」としています。
「閉経前女性では運動が乳癌発症リスクを減少させるかどうかは結論付けられない」としていますが、日本人を対象とした研究ではいずれも運動が乳がんの発症リスクを減らすことを認めています。(参考ウェブサイト2)
運動は乳がんにかかるリスクを減らすだけではなく、かかってから治るためにも、とても重要です。
乳癌診療ガイドラインでは、乳がん「診断後の身体活動が高い女性では,全死亡リスクが減少することはほぼ確実である」と認めています。(参考ウェブサイト3)
乳癌診療ガイドラインの参考文献の中には、乳がんと診断されてから運動を増やした人は死亡リスクが45%下がり、逆に診断されてから運動を減らした人では死亡リスクが4倍になった、という報告もあります。(参考文献2)
つまり、運動を増やした人の死亡リスクは運動を減らした人の8分の1以下だったのです。
ついでに、手術や化学療法のエビデンスをちらっと見てみてください。
乳房全摘した人と部分切除した人で生存率に差がない、抗がん剤Aを使った人と抗がん剤Bを使った人では抗がん剤Aを使った人の方が奏功率(癌が小さくなった率)が数%高い、などという研究結果ばかりです。
そもそも手術を受けた患者の生存率が手術を受けていない患者より高いというエビデンスはありません。
ここで不思議なのは、医者から運動の重要性を説明されることはほとんどないことです。
手術や抗がん剤の話は長々聞かされても、それらよりはるかに生存率に差が出る運動の話はまず出てきません。
それは患者を助けるのが目的(仕事)ではなく、「治療すること」が目的(仕事)になってしまっているからです。
ただしこれも、医者を責めても仕方ありません。
医者は、患者が治ることではなく「治療する」ことで評価される「普通」の中にいるだけです。
患者の「普通」も問題です。
病気なのだから、おとなしくしてなきゃ。
入院したら、パジャマを着て病室で寝てなきゃ。
そうやって空気を読み「普通」の患者を演じて外出と運動を減らすことが、ますますビタミンDが届かない細胞を増やしてしまうのです。
発がんしている人は、もともとビタミンDが足りない状態だったのですから、そのわずかなビタミンD供給さえ断たれてしまえば、貧困にあえぐ人がなけなしの収入を絶たれるように、急激に病状が悪化しても不思議はありません。
乳がん検診ではごく早期で見つかったのに、入院後に急激に悪化する人は珍しくないのです。
そうした患者は「たまたま悪性度が高かったのだ」と考えられ、あまり論文になりませんが、多くの医療関係者が経験しているはずです。
日光を浴びなくなったこと、運動が減ったこと、慢性ストレス、攻撃を受けたがん細胞が生き残るために進化したことが、乳がん検診、早期発見早期治療が拡大された翌年に乳がん死が急増した理由と考えられます。(「2. 乳がん検診は乳がん死を減らさない」参照)
乳がんが見つかったら、入院なんかしている暇に南国のビーチではしゃぐことをお勧めします。(「普通」じゃね~、と思うでしょうけど)
次回は、乳腺細胞がビタミンDを使いやすくなる条件についてお話しします。
👇につづく
(参考文献1)Leisure-time spent sitting and site-specific cancer incidence in a large US cohort
(参考ウェブサイト1)Sitting Too Much Increases Cancer Risk in Women
(参考ウェブサイト2)日本乳癌学会乳癌診療ガイドライン 運動は乳癌発症リスクを減少させるか http://jbcs.gr.jp/guidline/guideline/g4/g41260/
(参考ウェブサイト3)日本乳癌学会乳癌診療ガイドライン 身体活動は乳癌患者の予後に影響するか
http://jbcs.gr.jp/guidline/guideline/g4/g41520/
(参考文献2)Irwin ML, Smith AW, McTiernan A, Ballard‒Barbash R, Cronin K, Gilliland FD, et al. Influence of pre‒ and postdiagnosis physical activity on mortality in breast cancer survivors:the health, eating, activity, and lifestyle study. J Clin Oncol. 2008;26(24):3958‒64.
(Facebook 2018年10月29日より)
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