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男の癌死を防ぐために

 柔道家、古賀稔彦氏が亡くなった。詳細不明だが、癌で闘病中だったとのこと。
 『古賀』と言えば、私たち世代の柔道青少年にとって最大の憧れだった。(私も学生時代柔道部)

 これまで乳癌や子宮頸癌については長々書いたが、男の癌については書かなかった。
 女性が苦しみ亡くなるのは悲しいが、男はごちゃごちゃ言われてもどうせ聞かないし、好きに生きて死ぬほうがいいだろう、と思っていたからだ。

 しかしもう少し長生きしてほしい男たちも確かにいる。

 私はご冥福をお祈りするというお定まりの文句が好きでない。

 古賀氏に感謝をこめてその死を悼みつつ、そんな男たちにこの文章を捧げたい。

 癌で早逝した超一流格闘家は古賀氏だけではない。
 すぐ思いつくだけでも、

 空手家 アンディ・フグ 35歳 白血病
 総合格闘家 山本“KID”徳郁 41歳 胃癌
 大相撲の大横綱 千代の富士 61歳 膵臓癌
 プロレスラー ジャンボ鶴田 49歳 肝臓癌

 また格闘家ではないが、

 星野仙一 70才 膵臓癌
 衣笠 祥雄 71才上行結腸癌

 スポーツ選手ではないが、

 スティーブ・ジョブズ 56才 膵臓癌
 松田優作 40才 膀胱癌

 など、いかにも頑丈そうな男たちが癌に倒れる話は珍しくない。

 統計的に格闘家が癌リスクが高いという報告は知らない。しかしいわゆる「男らしい」男に癌が多いとしたら、理論的に考えられる理由は大きく3つある。

①交感神経に偏りすぎ
②腸内環境の悪化
③酒・タバコ

①交感神経に偏りすぎ

 自律神経はリズムが重要である。興奮する交感神経と、リラックスする副交感神経は、交互に優位が切り替わることで健康は保たれる。
 呼吸、睡眠と覚醒、勃起と射精、いずれもその切り替えによってうまくいく。
 免疫系も同様だ。交感神経が優位な時、リンパ球はリンパ節にこもってトレーニングを受け、副交感神経が優位な時、リンパ球はリンパ節から出て全身をパトロールし、ウイルスや癌細胞と闘う。

 興奮状態や緊張状態が続き、アドレナリンやコルチゾルなどのホルモンが出続けると、交感神経優位が続き、リズムは失われ、免疫力は破綻する。

 感染症にも癌にもかかりやすく、治りにくくなる。

 命をかけて戦う格闘家は中でも異常な興奮・緊張状態を強いられる。

 その緊張とリズムを取るには副交感神経側にも深くリラックスした時間が必要となるが、その両立は簡単なことではないだろう。

②腸内環境の悪化

 格闘家はじめ、筋骨たくましい男の食事は肉食・タンパク食に偏りがちだ。一方で繊維質・抗酸化物質は不足しがちになる。
 交感神経優位が続くと、腸の動きも悪くなる。
 次に述べる酒もタバコも腸内環境をより悪化させる。

③酒・タバコ

 男らしい男は豪快に酒を飲み、タバコをふかす「イメージ」がある。男らしい男は、病気なんか気にせずにその「イメージ」通りに生きるものだ。
 しかし体にとってリスクであることは否めない。

 わかっちゃいるけどやめられない理由


 さて、リスクはわかった。

 で?どうするか?

 興奮をやめるか?肉をやめるか?酒・タバコをやめるか?

 やめない。

 男らしい男は医者や人から言われて好きなことをやめることなどできやしない。
 病気が怖くなればなるほど、ストレスがたまるだ何だと言って酒を飲みタバコを吸う。
 成功した男ほどそうだ。

 なぜか?
 それは成功している男ほど、男性ホルモン:テストステロンが高いからである。
 テストステロンとは、筋力を強めたり頭をよく(ずる賢く)したりと素晴らしい効果を持つホルモンだ。しかしテストステロンが高まった結果起こるのは「ボスザル化」である。
 ニホンザルの群れでも、マントヒヒの群れでもマンドリルの群れでも、大相撲でも、国会でも、男たちを見てみればすぐわかる。一番強いオスは体つきががっちりして、顔が大きくなる。そして同時に傲慢になり、人の話をきかなくなり、ルールも守らなくなり、逆らうものは容赦無く攻撃・排除するようになる。


 ニホンザルのボスでも、ヒヒのボスでも、横綱でも、様々な競技のチャンピオンでも、企業の社長でも、総理大臣でも都知事でも一緒である。(最近のヒト科はメスも頻繁にボスザル化する)

 自分だけは特別であり、何をやってもいいと錯覚するのだ。一般には禁じられた「悪い」ことを自分だけがやることは特別感と優越感を周囲と自分に確認し、テストステロンをさらに高める示威行為でもある。

 それはボスザルやボスヒヒや横綱や総理や都知事が生まれながらの悪い奴なのではなく、テストステロンが過剰分泌される環境に置かれたことにより、ボスザル化してしまったがために共通して起こる現象である

 外来にはよく社長とか議員とか肩書きのある人が体を壊してやってくる。
 そして明らかに酒のせいで具合が悪くても
「自分はそんなに飲んでない」
 とか言い訳ばっかりする。後ろから奥さんが
「うそうそ」
 とかちょっとでも何か言おうものなら
「お前に何がわかるか!」
 と怒鳴りつける。言い訳しても怒鳴っても身体には通じない。

 みんな同じ、弱ったボスザルである。

 自然界では弱ってきたボスザルは若いオスに負けてボスの地位から陥落すると、テストステロンが急激に下がり体が弱るとともに死んでしまう。
 それでそのオスは役割を終えたのだ。(ボスザルの寿命はその他のサルより短いそうだ)


 人間の場合、弱ってきたボスザルたちは弱ってきたことを認めたがらず、金の力や既得権益を使って何とか地位を保とうとする。自分の脅威となりそうな若い者の成長を阻もうとあの手この手を繰り出す。
 様々なウソをつき、ルールを破り、周りに圧力をかける

 もはやその人自身が癌細胞になったかのようである。

 余談だが、ベビーブーム世代が老齢期になると、たくさんの弱ったボスザルが大量に癌細胞化して社会を崩壊させる。

 それこそが80年周期で起こる社会の大変革である。2周期前は明治維新、1周期前は大東亜戦争、そして今また時代は戦後ベビーブーム世代による社会の崩壊の時を迎えている。

 話を戻すと、テストステロンが高まってボスザル化した男が落ち目になって癌死するのはある意味、自然の摂理である。大人しく早く死んでもらったほうが周りにかかる迷惑も本人の苦痛も少なくて済む。
 だからはっきり言って死んだほうがいい、かもしれない。

 ボスザルは権威に弱い
 

 ボスザル化した人々は周りの人の話は聞かない一方、自分より上のボスザルには喜んで従う、というか「すがる」。

 つまり権威には弱い。だから大学病院とか大病院に喜んで通い、手術とか抗がん剤は喜んで受ける。占いを信じ、壺でも何でも買う。
 自分は何も変えられないから、よりエラい者に取り入って何とかしてもらおうとする。

 権威はそうしたボスザルの習性を熟知しており、高価な治療やらまじないやらを並べ立てて売りつける。
 しかし自分の言い訳やウソ同様、体には通じない。

男が癌死を避けるためにできること

 男が癌死を避けるためにできることは、第一にボスザル化しないことである。テストステロンを上げすぎない。トップに上り詰めない、自重する、謙虚になる、人の話を聞く。
 尊敬できる対象や信仰を持つ。自分はまだまだだと思う。そうした態度がテストステロンの過剰分泌を抑え、生活を変えることを可能にする。
 
 一旦ボスザル化した人でも、その地位を後進に譲り穏やかにボスザル化を解いて生きることも可能ではある。

 そしてもしボスザルでいることを諦めたなら軌道修正が可能になり、以下を試してみることができるようになる。

①ビタミンDの補給

 ビタミンDは細胞の正常な分化に必要だ。癌とは分化できなくなった細胞であり、ビタミンDを補うことによって多くの癌のリスクを減らし、発症しても予後を改善できる。

②食物繊維・抗酸化物質・発酵食品・ミネラルの補給


 ビタミンDは単体では吸収も活性化もできない。Mgなどのミネラルと腸内細菌の多様性が必要だ。味噌・納豆などの大豆発酵食品、野菜・果物・玄米・雑穀などの食物繊維は善玉菌のエサになる。ビタミンC・アントシアニン(ブルーベリー)・アスタキサンチン(鮭・エビ・カニ・アミ)・ケルセチン(玉ねぎ)などの抗酸化物質も腸内環境を改善するとともに癌・癌死のリスクを下げてくれることが期待できる。(消化管の手術後は繊維過多は腸閉塞につながるので注意)

③有酸素運動

 栄養を摂っても、各細胞に行き渡らなくては意味がない。軽く息が弾む程度の運動をすることで毛細血管やリンパ管の流れを何倍にも増やし、栄養を行き渡らせることができる。癌細胞は酸素や栄養が足りないために本来の細胞に分化できず、生きるために仕方なく癌化したのだ。就職できず食えず居場所がなく、仕方なく犯罪者になった人のようなものだ。酸素や栄養が行き渡り居場所があれば、ちゃんと分化した細胞になるか自ら分解して消えていく(アポトーシス)。

 有酸素運動は楽しく続けられること何でもいい。散歩やジョギング、サイクリングなど屋外でできることなら日光を浴びてビタミンDも合成できる。

 有酸素運動のもう一つの効能は、脳の神経発達を促してくれることだ。あなたの考えが変わらないのは、あなたの脳の配線が変わらないからだ。
 「〇〇としか考えられない」のは、「〇〇と考える」配線しかないからなのだ。
 運動すると、脳由来神経栄養因子(BDNF)という物質が出て、神経の発達を促し、脳に新しい配線をつくれるようになる


(もちろん、BDNFを出す前提として、新たな神経の材料となるコレステロールその他の栄養が必要だ。また栄養不足で無理に運動しても身体は消耗し転移を早めることにもなりかねない。だから先に①②で必要な栄養を補ってからの運動であり、順番が大切だ

 栄養を補い、運動してはじめて、あなたは新しい考え方ができるようになり、食生活や人間関係を見直し、アルコールやタバコやクスリなどの依存から抜けることができるようになる。

(👇ヤク中からプロトライアスリートになったライオネル・サンダース)

(👇アル中ゲーマーからトップアスリートになった日本人)


 栄養と運動なしに何をやめろとどんなに言われても耳に入らないし、たとえやめようとしても我慢は辛いだけで3日と続かない。

 以上、まとめてみたが、おそらくほとんどの男にはサルの耳に念仏だと思う。

 私のような権威なき者の話は腐ってもボスザルの男達は一顧だにしない。(肩書きか金か神仏の力が必要だ)

 ただ、愛する夫に長生きしてほしいと願う女性には響くかもしれない。(と願う)

 そんな女性は、夫に説教するより黙って味噌汁にビタミンDサプリを溶かして飲ませるといい。塩をマグネシウムの多い自然海塩にしたり、生姜焼きの生姜や付け合わせのキャベツを増やしたり、白米を5分付き米や麦飯にするのもいいだろう。(分づき米にはボスザル男の多くは気づかない)

 そしてなるべく日の高い時間に皮膚を露出して散歩に連れだすのがいい。

 一緒に歩いて笑顔を見せて、あなたは特別でなくていい、ボスザルでなくていい、リラックスしていいんだと気づかせてあげよう。

 そうやって支えてくれる女に愛される男にのみ、そうやって女が支えたくなる男にのみ、生きることが許されるのかもしれない。

 男が男である本来の目的は、女と子どもを守ることなのだから。

 

 *エビデンスは過去に書いた乳がん・子宮頸癌・白血病についての記事を参照


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