17. 夜は眠る


ポイント
1 不規則な睡眠時間、睡眠不足、細切れ睡眠は乳がんリスクを大きく増やす。
2 睡眠薬はがんリスク、死亡リスクを増やす。


乳がんを減らす行動
1 夜は眠る。
2 質の良い睡眠を1日7時間とるように工夫する。


 国際線のキャビンアテンダントなど、夜勤のある仕事では乳がんにかかるリスクが約50%高いことがわかっています。(参考文献1)
 また、平均睡眠時間6時間以下の女性では、7時間寝ている女性に対して乳がんにかかるリスクが62%増加したという日本の研究もあります。(参考文献2)


 睡眠負債という言葉も知られてきました。


 人間の身体の細胞たちはみなそれぞれ1日のリズムで生きています。
 それを乱されることは、とてもストレスになるのです。


 誰でも、時差ぼけだったり、寝不足だったりする時には、本来の力を発揮できず、不機嫌になったり、あり得ないミスをしてしまったりしやすくなります。


 細胞たちも同じです。


 シカゴ大学の研究では、睡眠を細切れに邪魔したネズミではがんの増殖が加速し、その際、本来ならがん細胞を攻撃するはずの免疫細胞が、逆にがん細胞の増殖を手助けする可能性すらあるそうです。(参考文献3)


 眠ることは、乳がんを防ぐためにもとても大切なことなのです。
 ぐっすり眠れたら苦労ないわよ!私には仕事とか、不安とか、冷え性とか、いろんな眠れない理由があるのよ!
 と言う人がいるかもしれません。


 ごもっともです。


 ただし、あなたの細胞たちにはどんな言い訳も通用しません。がん細胞にも。

 あなたがあなたの「普通」を変え、生活を変える以外に、乳がんと乳がん死のリスクを下げることはできません。

 大丈夫。


 眠ることも、一種のスキルです。


 スキルは、やり方を知り、繰り返すことで、上手になっていくものです。
 私自身、夜勤が多いので、そうでない日は長めにゆっくり眠れるように、様々な工夫をしています。
 私がやっていることを一部ご紹介します。
 全部やる必要はありません。
 私が自分のリスクを知って、これだけ工夫しているということを参考にしていただければと思います。
 
 自分がよく眠れるパターンを見つけましょう。

1 朝日を浴びる
 体内時計は、強い光でリセットされます。朝、一瞬でもいいので、カーテン、窓をあけて、朝日を浴びましょう。曇りや雨でも、かまいません。一般的なオフィスの明かりより太陽光が強いのです。
 お日様に
「おはよう!今日もよろしく!楽しい日にしよう!」
 などと自分を勇気づける言葉でご挨拶します。


2 朝、タンパク質を食べる。
 睡眠ホルモン「メラトニン」は、トリプトファンというアミノ酸から作られます。朝、卵や納豆などのタンパク質を食べることで、トリプトファンを補い、今晩のメラトニンを準備することができます。


3 夕方、身体を動かす。
 人は、体温の下がりぎわに眠くなります夕方に体温をあげる事で、夜眠りやすくなります


4 夕食を食べる。
 お腹が空いているとよく眠れません。栄養のあるものをしっかり食べましょう。

5 入浴する
 身体が冷えているとよく眠れません。シャワーで済ませず、適度に温まるくらい入浴しましょう。歯磨きは寝る前にすると睡眠を妨げるので、入浴中にしましょう。

6 夜はブルーライトや強い光を避ける
 ブルーライトや強い光を浴びると、体内時計がリセットされて朝と錯覚してしまいます。
 私は夕食後はなるべくパソコンやスマホなどの画面を見ないようにすると同時に、不意の光も浴びないように、ブルーライトカットのメガネ(フレームは太くて周りからも光が入ににくいもの)をしています。
 ブルーライトカットメガネは夜勤中もつけています。


7 布団に入る前にリラックスする時間を持つ
  瞑想(マインドフルネス)やストレッチ、ヨガの子どものポーズなどをゆったりとする時間を持ちます。
 寝る前の心と身体の準備体操といったところです。


8 寝具を調節する。

 季節によって寒暖差の激しい日本では、日によってちょっと寒かったり暑かったりして寝苦しいことがよくあります。
 夜中にも調節しやすいように、薄めのものを何枚か用意しておきます。

9 足を温める
 足が冷えていると、自律神経が交感神経優位になってリラックスしにくくなります。
 入浴後も、靴下やふくらはぎを温めるレッグウォーマーをつけたり、こたつに入ったりして足を温めます。


10 ほうれい線体操と口テープ
 舌が喉に落ちたり、口が開いたりすると、睡眠中の呼吸が浅くなったり止まったりして、睡眠の質が下がります。
 歯の前で舌を回すほうれい線体操は舌の筋肉を活性化させます。
 口テープは「肌にやさしいテープ」を1cmくらい切って上下唇の真ん中に貼ることで眠っている間に口が開くのを防ぎます。睡眠中の呼吸を改善し、いびきを防ぎ、口の乾燥を防いでくれます。


11 全身の細胞たちに「おやすみ」の挨拶
「今日もよくやった。さあ、ぐっすり眠ろう、おやすみ」
 と自分の37兆個の細胞たちに言います。
 眠るには全身の細胞の協力が必要です。活動系の細胞は休み、回復系の細胞には活躍してもらわなくてはなりません。
 これから眠るんだと自分の全細胞に一致団結を促します


12 微笑んで眠る
 これは「世界一受けたい授業」というテレビ番組で松岡修造さんが教えてくれたのですが、私も実践してみて効果を感じています。
 注意して欲しいのは、眠れないからといって、睡眠薬は使わないことです。
 睡眠薬は自律神経の副交感神経をブロックして、リラックスできなくしてしまいます。
 便秘の原因にもなります。
 眠っている間に、実は、身体は回復のために様々なことをしているのですが、睡眠薬はそれをできなくしてしまうのです。
 睡眠薬を使った睡眠は、意識を失ってはいるけれど、本当の意味で眠っているとは言えないのです。
 そして日中も覚醒することを難しくして、さらに眠れなくしてしまうのです。
 睡眠薬は死亡リスクを5.3倍にし、がんのリスクを35%あげる、という報告もあります。(参考ウェブサイト1 睡眠薬はタバコと同じくらい危険)
 睡眠薬を使うくらいなら、時差のあるところへ行ったときのように、その日は眠らずに楽しいことをし、次の夜を待つ方が健康にいいかもしれません。
 (ただしその場合、昼もボーっとしないように、少しでも体を動かして過ごす必要があります。「夜眠れない」という人の多くが日中にハッキリ目覚めていません
 布団の中に入って眠ろうとするのではなく、布団に入る前に(朝から)眠る準備をして、眠くなって布団に入ることが大切です。

👇につづく


(参考文献1)Night work and breast cancer risk: A systematic review and meta-analysis


(参考文献2)Sleep duration and the risk of breast cancer: the Ohsaki Cohort Study


(参考文献3)Fragmented sleep accelerates tumor growth and progression through recruitment of tumor-associated macrophages and TLR4 signaling


(参考ウェブサイト1)Sleeping Pills Called 'as Risky as Cigarettes'


(Facebook 2018年10月29日より)

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