6. 女性ホルモンが乳癌の原因ではない


ポイント
女性ホルモンがあることが乳がんの原因ではない。

乳がんを減らす行動
乳がんのために女性としての幸せをあきらめない。

 NHK番組『ガッテン』では、「女性ホルモンがあることが」乳癌の原因だと言いました。
 それが4つ目の間違いです。
間違い④乳癌の原因は女性ホルモンである


 女性ホルモンは、全ての女性、いえ、全ての男性にもあります。


 「女性ホルモンがあることが」乳がんの原因なら、なぜ全ての人は乳がんにかからないのでしょうか?
 前回見たように、現在でも一生のうちに乳がんにかかる女性は14人に1人 、50年前は50人に1人です。
 おっぱいは今も昔も1人二つずつ、それでもほとんどの女性は乳がんにかからないのです。


 おっぱいがあるから乳がんになるのではありません。
 女性ホルモンがあるから乳がんになるのでもありません。


 『ガッテン』では、少子化により女性の妊娠や授乳期間が減り、月経回数が増え、女性ホルモンの分泌期間が長いことが乳がんの原因だとしています。


 出産や授乳機会が少ないほど乳がん発症リスクが高いのは確かですが、だからといって全ての人が持つ女性ホルモンが乳がんの原因だとは言えません


 女性ホルモンは、女性が女性らしく、美しく活き活きと生きていくために不可欠なホルモンです。

 女性ホルモンが低下するとどうなるか、更年期障害が有名ですが、乳がんへのホルモン療法でも、女性ホルモンの作用を妨げられた女性は急に老け込み、肌ツヤを失い、髪が薄くなったり、骨粗鬆症になって背中が曲がったりしてしまいます


 先日亡くなった女優の樹木希林さんがホルモン療法をやってみて「これはのんではいけないもの」とすぐ中止したのは理解できます。
(「だから樹木希林さんは死んだのだ」そういうこと言う医者もいますが、はるかに多くの人がちゃんとホルモン療法を続けても乳がんで亡くなっています)


 女性ホルモンにも色々あります。
 一番有名なのはエストロゲンですが、そのエストロゲンにもわかっているだけで20種類ほどもあります(女性って複雑なんですね)。


 エストロゲンのうち最も有名なのはエストラジオールで、乳腺細胞の増殖を促す作用があります。
 エストラジオールは更年期障害や経口避妊薬(ピル)などにも使われており、そうした薬を服用した人では、乳癌のリスクが高まることが知られています。


 女性ホルモンが乳がんの原因だというのは、クルマの運転に例えれば、事故を起こしたのはアクセルが原因だと言うようなものです。


 確かにアクセルがなければ事故を起こすことはないかもしれませんが、そもそもクルマとして走れません。
 同様に、女性ホルモンがなければ女性として輝いて生きるのが難しくなってしまうのです。


 ホルモン剤やピルを飲んで、女性ホルモン過剰の状態なら、それを控えることで乳がんのリスクを減らせます
 アメリカで乳がん死が減ったのはホルモン剤の使用が減ったからとも言われています
 しかしほとんどの女性では、女性ホルモンの分泌は正常で、過剰なわけではありません。
 正常なアクセルを効かないようにしたら、クルマはどうなるでしょうか?
 確かにスピードが出ないからひどい事故は減るかもしれませんが、逆に追突されたり、坂道でスタックしたり、様々な支障をきたすでしょう。
 そして、もっと大切なことは、本当の事故の原因がハンドルやブレーキの故障だったなら、アクセルをいくら弱くしても事故の再発は防げないのです。


 原因を考えるときに大切なことは、その目的です。
「なぜ?」
 という問いは浅くも深くも答えられ、いくらでも続けることができます。

 昭和の人気アニメ『一休さん』には、『どちて坊や』という最強キャラが登場します。

 なにを言われても「どちて?(どうして?)」と延々と返してくるので、一休さんも参ってしまいます。
「どちて乳がんにかかるんですか?」
「女性ホルモンがあるからだよ」
「どちて女性ホルモンがあると乳がんにかかるんですか?」
「乳腺細胞が増えるからだよ」
「どちて乳腺細胞が増えるとがんになるんですか?」
「細胞分裂するときに間違えるからだよ」
「どちて間違えるんですか?どちて間違えるとがんになるんですか?」
「...」


 こうして「どちて?」と考えることは、科学の始まりと言えるでしょう。
 (どちて坊やは、何でも知ってるチコちゃんより、ある意味深いのです)

 いつまで答えを探し続ければよいのでしょうか?


 それは目的を達成するまでです。

 「乳がんや乳がん死を減らす」という「目的につながる原因」を見つけるまでです。
 私がこの文章を書いているのは、「どうして女性たちを乳がんから助けられないの?」という悲しい「どちて?」を解決したいからです。


 女性ホルモンを乳がんの原因とすることは、乳がんと乳がん死を減らすという目的につながっていないのです
 同じように、「遺伝子が乳がんの原因だ」という考え方も、乳がんを減らすことに繋がりません。
 次は、乳がんの原因は遺伝子ではない、という話をします。

👇につづく


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?