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【衆院選】マスコミ・連合がうそぶく「野党共闘は失敗」論。野党は現金給付政策から転換せよ

NPO法人官製ワーキングプア研究会理事長 白石 孝

 衆議院選挙の結果をどう見たらいいか、率直に言って戸惑っている。革新勢力を押さえ込みたいメディアは、早々と「野党共闘」の「破綻」を拡散・宣伝し、分断を持ち込む動きを始めた。総評や社会党を解体させた労使協調の保守労組・連合指導部も、立憲民主党を右から揺さぶり、国民民主党は野党共闘への批判を強めると同時に、維新へ接近し始めた。
 一方、岸田政権は新自由主義政策を転換、中間層への再分配を強化し、格差を是正する「令和版所得倍増」を掲げている。「成長と分配の好循環」によって「新しい資本主義」を実現するという。だが、本当にそうなのか。
 さて、結果を振り返る。ニューズウィーク誌は「立憲民主党や共産党、社民党、れいわ、そして国民民主党も、自民党以上の分配政策」だが、「有権者にはそのどれもが響かなかった、響いたのは維新のコストカット・弱肉強食路線だった」、「選挙結果全体から導かれる政治的帰結」は、「それでも日本人は新自由主義を選んだ」と報道した。
 ただ小選挙区では、東京などで野党共闘は一定の成果を上げており、「野党共闘の破綻」とは言えない。大阪では維新が水面下で公明党とすみ分けしつつ、相当数いる自治体議員をフル動員して票を積み上げたので、「風に頼る」選挙ではなかったことがわかる。
 野党共闘は、試行錯誤しながら継続させていけば、さらに成果を上げていくだろう。敗北した選挙区での詳細な検証を行い、次に備えるべきだ。
 一方、とりわけ立憲民主党が比例区で大幅に後退したことは、政党に魅力がない証しだ。党の顔に魅力がなく、地域組織が脆弱で、政策が不十分であれば勝てるわけがない。だから、党首交替だけでは何の解決にもならない。
 他の野党もそうだが、現金給付を前面に出した政策からの転換が必要だ。現物給付、つまり普遍主義政策を軸に据えること、生活に必須の教育、医療、住居、福祉(保育、介護)の無償化を打ち出し、一方では税制の転換、資産課税、所得税や法人税の見直しをセットにする。
 順調ではないが、米国バイデン大統領が打ち出した3段階計画(米国救済計画、米国雇用計画、米国家族計画)や、欧州社民やみどりが掲げている政策を、大胆に受けとめたらどうか。有権者の目を世界に向けさせ、「ムダをなくす」と言いつつ、実際は生活必須の分野を削減し、脆弱層だけでなく、中間層も痛めつけている維新の化けの皮をはがす。それは同時に「労組」とは程遠い連合や国民民主党との闘いでもある。
 それは市民社会運動を分厚く築き上げる、私たち自身への宿題だ。


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