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収束・廃炉作業10年 変わらぬ労働者の使い捨て 福島原発被ばく労災 損害賠償請求 「あらかぶさん裁判」に注目を

なすび(被ばく労働を考えるネットワーク)

写真:原発労働時のあらかぶさん

 3・11原発事故後に結成された「被ばく労働を考えるネットワーク」は、収束・廃炉作業労働者や除染労働者からの労働相談を受け、被ばく労働者の権利と安全・健康を守るべく、労働争議や国との交渉などを行ってきた。そして、その労働実態には極めて多くの問題があることを社会的に明らかにしてきた。しかし、残念ながら本質的な問題は変わらず残されている。
 収束・廃炉作業においては、違法長時間労働や一方的な解雇など、重層下請労働と安全無視・工程優先の問題を私たちは問題にしてきた。雇用の不安定性、賃金のピンハネ、労災隠し、ずさんな被ばく管理、労働者が泣き寝入りせざるを得ない環境など、どれも重層下請と使い捨てが生み出すものだ。国と事業者は、就業中の労働条件や福島第一の現場を離れた後の雇用にも責任を持つべきだが、重層下請構造による不当な搾取と使い捨てを今も放置している。
 労働者の安全衛生・労働条件に関しては、健康診断書の偽造や線量の不適切管理などを私たちは告発してきた。だが替え玉によるWBC測定が明らかになるなど、問題は続いている。厚労省の健康管理手帳の発行対象にもなっておらず、国による健康診断は、事故直後の緊急作業に従事して50㍉Sv以上の被ばくをした労働者に限られる。線量限度や安全基準、労災対象疾病など、法的な改善については、私たちは省庁交渉のたびに問題を指摘している。だが国・事業者は改善する気がない。
 除染作業では、私たちは危険手当の存在とその不払いを社会的に明らかにし、雇用契約書の締結や賃金明示、危険手当の支払いを行わせることに成功した。しかしその後、ほとんどの業者が労賃を最低賃金に引き下げ、危険手当と合わせて従来通りの賃金で除染労働者を雇用するようになっている。実質的なピンハネは続いている。しかも、その後の中間貯蔵施設関連工事や被災地での家屋解体作業など、放射線下での公共事業においてもこれが同じように適用されている。
 このように、個別の争議を展開し、その根本にある構造的問題を指摘しても、国・事業者は何ら根本的な改善を行う気がない。だからこそ、元原発労働者の「あらかぶ裁判」の意義と重要性が再確認される。
 (通称)あらかぶさんは、2011年11月から13年12月まで、福島第一原発の収束作業のほか、福島第二原発の対津波・耐震工事、玄海原発の定期検査に従事した。そして約20㍉Svの被ばくをした。その後、白血病を発症して生死の境を彷徨った。国は労災を認定したが、東電・九電はあらかぶさんの白血病を労災と認めず、損害賠償をめぐり裁判で争う状況になっている。
 あらかぶ裁判では、ずさんな安全管理や危険手当のピンハネなど、収束作業における労働問題が改めて明らかにされている。また、労災認定を受けることの困難や、国が労災認定しても電力会社が認めなければ損害賠償を受けられないなど、労働者の安全・健康・補償がないがしろにされている実態が浮き彫りになっている。
 あらかぶ裁判は、今や、被ばくした労働者を徹底して使い捨てる原子力事業・政策に対する闘いという性格を持つようになってきた。その勝利は、この問題を社会的に認めさせ構造的な改善を迫るものになるだろう。多くの支援を要請したい。
※次回口頭弁論…4月7日14時~東京地裁103大法廷。15時~参議院議員会で報告集会。詳細は「あらかぶさんを支える会」。https://sites.google.com/site/arakabushien/

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