見出し画像

【6/19東京・杉並区長選挙】ミュニシパリズム(地域主義)と再公営化掲げる岸本聡子さんが挑戦


NPO法人官製ワーキングプア研究会理事長 白石 孝


6月12日告示、19日投開票の東京杉並区長選挙に岸本聡子さんがチャレンジすることになった。「再公営化」「ミュニシパリズム」政策を日本に紹介しているトップランナーだ。公共事業の民営化はまだまだ多いが、世界の流れは民営化された事業の再度の公営化だ。
 「ミュニシパリズム」は馴染みのない用語だが、日本語的表現では「地域の主権を大切にする新しい政治運動」と、岸本さんは言う。こういう基本思想、自治体哲学を持っている方が地方自治にチャレンジするのだから、それに連動した運動を興したい。「公の強化は市民、労働者の暮らしを良くする」~「コモンズネットワーク」。
 もちろん、自治体の長の選挙だから、政策は全分野にわたるので、この課題だけでは闘えない。だが、基本政策の軸をここに据えることが肝心だ。韓国の「キャンドル」運動が体現したのは「市民民主主義」だが、ミュニシパリズムと考え方を共有している。「地域主権」の「主権」は「市民主権」なのだから。これを区政全分野の共通キーワードにした「公約」なんて、面白いではないか。
 さらに岸本さんはこう言う。欧州のミュニシパリズムの自治体は「利潤と市場の法則よりも市民を優先する」という共通の規範を共有している。その意味は、社会的権利の実現のために政治課題の優先順位を決めること、新自由主義を脱却して公益とコモンズの価値を中心に置くことである。
 「公共サービスの公的所有を推進する、普通の人が払える住宅の提供と価格規制をする、環境保全と持続可能なエネルギーを推進するといった具体的な政策で共通している。とはいえ、そうした革新的な政策だけが目的ではない。創造的な市民の政治参加によって市民権を拡大する過程を重視する。直接民主主義的な実験を積極的に行っている」(『マガジン9』2019年1月16日号)

ーー自治体選挙での「コモンズ(公)」の基本政策化を

各地でも民営化への取り組みは続く。例えば埼玉県春日部市では、「市が放課後児童クラブの指定管理者企業に過大な委託料を払っていた」として、市民12人が「約3500万円を市が企業に請求することを求める」住民訴訟を起こした。
 大阪府吹田市では、市民課窓口業務の委託化計画に、学者、研究者、弁護士、市民などが反対運動を繰り広げ、弁護士グループが18頁もの「意見書」を作成、提出するなどした。その結果、計画案の撤回を実現している。
 経済思想家の斎藤幸平氏は、ミュニシパリズムを「コモン(公)の領域を広げ、大きくなりすぎた『私』を縮小する」ことだと言う。(「朝日新聞」21年8月23日)
 私は「官製ワーキングプア研究会」なるNPOを設立し、「なくそう! 官製ワーキングプア集会」を東京、大阪などで(実行委方式で)開催しているが、その目的は「自治体(企業)内」労働者の雇用や労働条件の改善だけでなく、公共サービス向上にとって、労働者「エッセンシャルワーカー」の「働きがい」と「働きやすさ」を確保することが表裏一体の関係にあるからだ。
 各種選挙、とりわけ自治体の長や議員の選挙では、「コモンズ(公)」を基本政策として取り組むことを切望する。

(人民新聞 4月20日号掲載)

【お願い】人民新聞は広告に頼らず新聞を運営しています。ですから、みなさまからのサポートが欠かせません。よりよい紙面づくりのために、100円からご協力お願いします。