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教科書検定(社会道徳)に異変/コロナ禍のどさくさ 進む政権への忖度・追従/宝塚市議会議員 大島 淡紅子

中学校教科書選定(5月~)強化される国の検定
コロナ禍で毎日を戦々恐々と送る今、見過ごされてしまいそうなことがたくさんあります。
 森友学園問題で、亡くなった近畿財務局職員の手記が出てきたこと。幼保一律無償化と謳いながら、朝鮮学校幼稚班をはじめとした外国人学校幼保施設は除外。関西電力幹部の金品受領問題などです。なかでも注視したいのが、5月から全国で始まる、来春使用の中学校教科書の選定です。
 私が市議に初当選した2003年4月に市長選があり、日本会議系のW氏が当選。W氏は、公約である市立校の「学校選択制」「2学期制」を実現せんと、文部省から教育長を連れてきました。W氏は市議会の反発に対し、度々再議権を行使しましたが、この時は通ったのです。しかし、その後の市民運動や議会の動きで、いずれの制度も採用されませんでした。
 その後2005年は、中学校教科書採択の年で、宝塚の知名度と右翼市長の双方を利用され、「新しい歴史教科書をつくる会」の歴史・公民教科書(扶桑社)採択の危険性が高まっていました。教育委員会の審議では、市内外から詰めかけた260人の傍聴者に対し、教育長が「今回の教科書採択は静ひつな環境であったとは考えにくい」と発言しましたが、この時も市民運動や良識ある「教科用図書採択協議会」の評価が功を奏し、「つくる会」教科書の敗北に終わりました。
 時は移り、まんまと教育基本法は魂を抜かれ、道徳は教科となりました。安倍政権の閣僚たちは、ほとんどが日本会議に関わっています。自衛隊は文官統制が廃止され、南西諸島への陸自部隊配備は着々と進み、配備式典で国歌斉唱が行われても、誰も文句を言わない状況です。
 戦前の軍国主義からの反省ということで、日本では世界でも珍しい教科書検定制度がありますが、子どもたちは同じ教科書を使うことで、知らず知らずのうちに他と異なることは良くないとしてしまっているのではないでしょうか。

6月12日からの展示会が教科書と教育の分岐点
 注意していただきたいのは、社会と道徳です。
今回の社会(地理・歴史・公民)の教科書検定では、検定強化の結果、各社とも合格するために、自主的に領土問題や集団的自衛権に関して、より政府見解に沿った記述になっているようです。道徳は、「内心の数値化」として批判が噴出していた「自己評価欄」が消えるようですが、相変わらず美談や偉人を取り上げた読み物でいっぱいとのこと。
 特に、社会における「つくる会」系の育鵬社・自由社、道徳における日本教科書は、採択してはならない教科書です。また、内容も重要ですが、新学習指導要領のもと、分量が現行本の7・6%増、「ゆとり教育」時の1・5倍になっており、授業から落ちこぼれる生徒が出ることや、カバンが重くなることが懸念されます。
 みなさんにお願いです! 6月12日から2週間、全国で開催される教科書展示会に出かけてください。ご自身の子ども時代の教科書との違いを体感していただき、ぜひ意見を書いてください。来場者アンケートは集約され、教科用図書選定委の委員に届けられます。各地の場所は自治体のHPを見たり、文科省の「初等中等教育局教科書課」に問い合わせればわかります。
 世界の潮流=SDGsがめざす「誰一人取り残さない」社会とは真逆の、三浦朱門の発言「できない者はできないままで結構。100人中2~3人はいるはずのエリートを伸ばす。それ以外は実直な精神だけ持っていてくれればいい」などということを、為政者に言わせないために。

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