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福島通信⑧ 行き先見えない放射性廃棄物 第二原発廃炉作業に44年・4100億円

 あぶくま97条の会 遠藤智生

 福島の第二原子力発電所信号に差し掛かりました。東へ右折すると、1・5㌔ほどで福島第二原発正門です。
 東京電力は原発事故後、なかなか第二原発廃炉を決断しませんでした。福島県はたびたび国・東電に廃炉を申し入れ、ついに2019年7月末、東電は第二原発の廃炉を正式決定します。ただこの廃炉は、柏崎刈羽原発の再稼働が前提となった政治的取り引きによるものです。
 地震・津波によって、メルトダウンなどの破滅的な原子炉事故発生を回避することができた第二原発ですが(※注①)、廃炉にあたっても問題は山積みです。使用済み核燃料・9532体や、1~4号機の未使用燃料544体、さらに約5万2000㌧が見込まれる放射性廃棄物を最終的にどこに搬出(保管)するのかは、いまだに決まっていません。
 東電は、使用済み燃料について、作業着手から22年かけて取り出す、としています。東電が今年5月に原子力規制委員会に提出した廃止措置(廃炉)計画の認可申請には、「約44年かけて完了を目指す」とあります。廃炉費用は4基合わせて約4100億円と見積もられています。しかし、第一原発の廃炉作業に、人出・予算などの資源を割かなければならない状況で、どこまで予定通りに第二原発の廃炉作業が進むのか、大いに疑問です。
 第二原発の隣りの「毛萱・波倉スクリーリング場」の道路向かいにプラントが見えます。ここは、環境省の「セメント固型化処理施設」です。指定廃棄物に指定された10万Bq/㎏以下の焼却灰のうち、①焼却飛灰、②飛灰と主灰の混合灰(※注②)、を埋立処分できるようセメント固型化処理を行う施設です。ここで固型化された焼却灰は、埋立処分場に運ばれます。
 その固型化処理施設の南側に隣接するのは、同じく環境省の施設である「楢葉町仮設焼却施設」です。もっとも、この焼却施設は2019年3月に焼却処理が終了しており、1年をかけて解体作業中です。この仮設焼却場で、2016年11月から楢葉町内の津波がれき、被災家屋などの解体に伴う廃棄物、片付けごみ、可燃性の除染廃棄物、約7・8㌧を焼却しました。
 廃棄物焼却による放射能汚染はもちろん心配ですが、それ以外にも焼却作業員の被ばく問題や、違法な作業内容も明らかになっています。2018年10月、飯舘村蕨平地区仮設焼却施設で働いていた男性が、「ダイオキシンや被ばくへの対策を十分に取らないまま作業を強いられた」として、元請け業者・日揮に損害賠償を求める労働審判を福島地裁に申し立てしました。
 その男性の証言によると、蕨平焼却場では、半面マスクと通常の作業服で、ダイオキシンとセシウムまみれの灰処理業務を強制されていたということです。さらに驚くのは、「平成29年5月、集じん機のバグフィルターろ布が破損したが、日揮はこれを修理せず、タイベックススーツのズボンをちょん切ってすそを結束バンドで集じん機に取り付けてフィルターの代用としていた。この状態が2カ月も続いた」というものです(※注③)。
 環境省は、国直轄の廃棄物処理として、仮設焼却場を建設して処理に当たりました。汚染廃棄物対策地域内市町村における仮設焼却場は、飯館村(2カ所)、南相馬市(仮設1カ所、既存焼却施設1カ所)、浪江町(1カ所)、葛尾村(1カ所)、双葉町(1カ所)、大熊町(1カ所)、川内村(1カ所)、富岡町(1カ所)、楢葉町(1カ所)に建設され、ほとんどの施設で焼却処理を終えています。
 その他にも仮設の灰処理施設や、資材化施設(※注④)などがあります。これらの施設の実態について、福島のメディアはまったく報道しないのです。焼却炉の解体作業についても、高濃度の放射性セシウムが炉内に浸透蓄積していると予想されます。環境への影響に留まらず、作業員の健康被害への影響が予想されます。  (つづく)


注①ただし、地震で第二原発への3本の送電系統のうち2本を喪失。さらに津波で全電源喪失し、原子炉の冷却機能が失われるなど、炉心溶融は紙一重の状況だった。
②焼却主灰は、焼却炉の底などから排出される燃えがら。飛灰は、すす、灰など、燃焼廃ガス中に浮游する固体の粒子状物質で、バグフィルタなどの集塵装置で捕集された固形物をいう。一般的に都市ごみ重量の3%発生する。主灰に比べて融点が高く(1250~1350℃)、生成したダイオキシン類の90%が飛灰に含まれること、また鉛、亜鉛、カドミウムなどの低沸点重金属の含有率が高いという特徴がある。それゆえ、直接埋立処分することができず、溶融固化、セメント固化、薬剤処理、酸その他溶媒による抽出法のいずれかによる中間処理(溶出防止)が義務づけられている。
③「放射能ゴミ焼却を考えるふくしま連絡会」ブログ『ごみから社会が見えてくる~福島原発事故による放射能汚染ゴミの処理を追う』2018年10月5日記事(飯舘村労働審判③ 驚くべきずさんな実態が暴露!)より引用。
④放射性セシウムが含まれる焼却灰や除去土壌からセシウムを分離させ、コンクリートブロックや肥料として再生利用であることを実証研究する施設。

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