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ワクチンで失政挽回企むトランプ 暴利企む米国製薬会社と結託

 米・トランプ政権は、抗ウィルス薬レムデシビルを作るギリアド・サイエンス社の株をほぼ買い取り、他国がレムデジビルを使うことを制限した。トランプは、政府が薬を用意していることを見せつけることによって、コロナ・パンデミックの失政を、挽回しようとしている。そのために世界を見捨てることを厭わない。
 レムデシビルは、新型コロナウィルスに対して効果を発揮したことが臨床試験で証明された薬である。ウィルスが人体内で複製するのを減じる作用があるので、患者の入院を25%削減できる。患者にとって有益であり、感染率を低くするので社会にとっても有益な薬だ。
 ただし、酸素呼吸器が必要な重症段階では、効果がない。重症者にはデキサメタゾンのような抗炎症薬が必要となる。デキサメタゾンも、臨床試験でコロナ感染症治療に効果があることが証明されている。レムデシビルのように感染症を抑える薬でなく、感染から生じる肺の炎症を軽減する働きがある。特許期限が切れているので、安い値段で広く使うことができる。
 WHO総会で、「コロナと闘うため、すべての薬品やワクチンを共有パテントとしてプールし、すべての国が手頃な価格で入手できるようにするべきだ」との提案に、米国だけが反対した。新型コロナ感染症対策で惨めな失政をしたトランプ政権は、薬を独占することで健康対策を講じていると国民に錯覚させて、失点を挽回したいのだ。同時に、失いつつある世界的ヘゲモニーも取り戻したいようだ。
 さらに米政府は、ワクチン開発を促進する「ワープ・スピード作戦」の一部として130億ドルを5社の薬品会社に拠出した。ワクチン開発に成功すれば、レムデシビルと同じように、米国が排他的に囲い込むだろう。しかし幸いなことに、WHOには臨床試験中のワクチン17種類、研究中の132種類がリストアップされている。
 ギリアド社のレムデシビル販売価格も問題である。5日間の服用期間(初日に2瓶、その後1日につき1瓶)に対して、米国人患者は3000㌦を支払う。ギリアドは他国の製薬会社 ― インドのシプラ、ヘテロ、ジュビラント ― にレムデシビルのジェネリック品を生産する部分的ライセンスを販売した。これによってインド人患者は400㌦(1瓶につき66㌦で6日分)で薬を買うことになる。しかし、薬の材料費は1瓶1㌦で、6日分で6㌦、他の必要経費を加えても10㌦を超えることはない。
 特許独占との戦いの歴史は長い。「WTOドーハ宣言」(2001年)は、緊急事態においてはどの国も特許化された薬を自国で製造する「強制実施権」を発動する権利があることを認めた。これで、インドのシプラ社はエイズ対抗薬を生産して1年間投与価格350㌦で供給し、多くの貧しい人々が助かった。これがコロナ対策の先例となるべきだ。
 2012年にインドは、抗悪性腫瘍剤ネクサバールに関して強制実施権を発動して、ナトコ・ファーマ社に生産させ、特許を持つバイエル社の販売価格(1年分65000㌦)の3%の価格で販売させた。バイエル社CEOは、「我社はインド人のためではなく、金を払える欧米人のためにこの薬を開発した」と言った。
 インド首相モディは、トランプの脅迫に屈し、米国のレムデシビルに対して強制実施権を発動し、インド人民に役立てるということはしないだろう。(翻訳:脇浜義明) 

著者:プラビール・プルカヤスタ
 掲載:『MRonLine』2020 7/6

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