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大阪 都構想 大阪維新 二度目の住民投票強行 大阪市から経済的自立奪う

 5年前に否決された「大阪都構想」の2度目の住民投票が、11月1日に行われる予定だ。可決されると大阪市は廃止され、財源や政策決定権などを大阪府=維新の会に奪われる。維新は都構想のためにコロナ被害の矮小化に腐心し、被害を拡大させた。都構想や住民投票の問題点、多様な反対の声と運動をレポートする。(編集部・園)

 都構想は維新発足時からの看板政策だが、2015年の住民投票で否決された。当時の橋下大阪市長は、2度と行わないと敗北を認めて辞職した。
 だがすでに960億円を注ぎ込んだカジノなど湾岸部の大規模開発を完成させるには、市から財源と権限を奪う都構想が不可欠だ。そこで19年春、維新は府知事・市長の入れ替え選挙を行い、再び公約として勝利した。吉村府知事・松井市長のもとで法定協議会を進め、20年6月19日に協定書案を採決。8月28日は府議会で、9月3日は市議会で住民投票を可決した。現在大阪市内各区で住民説明会が行われている。
 維新は、「都構想が府と市の二重行政の無駄を無くし、大阪の成長を促進する」と強調する。大阪が不況と財政悪化の一途を辿っているため、東京「都」のような繁栄を取り戻したいという民意を刺激している。
 だが反対運動を続ける桜田照雄・阪南大教授は、「大阪経済の低迷は、92年のUSJ誘致を契機に始まっている。東京資本による集客政策に邁進し、地場産業の育成を放棄したからだ。維新は地場産業の育成に逆行する都構想を、経済復活の切り札と錯覚させ、現実をイデオロギーで誤魔化している」と批判する(本紙1660号)。
 では、どう誤魔化しているのか。「維新プレス」という推進ビラが戸別配布されているが、「市内24区が4区に統合され、意思決定が早くなる」とだけ書かれ、「大阪市は無くなる」という文言が無い。また「地域にもっと寄り添った政治が実現される」とある。だが24カ所の区役所が4カ所に絞られるため、市民の役所通いや市民サービスが遠のくことは明らかだ。多くの住民がネットで「詐欺罪レベル」と批判している。
 また、大阪市役所の広報紙や入口に、以前から可決前提の宣伝が載り続けている。維新の公私混同だが、都構想による負の変化はなく、可決が自然な流れだと住民にすり込まれる。
 都構想は大阪市から経済的自立を奪う。その経済成長とは、水道代を値上げし、公的部門の民営化をさらに進め、大型再開発を無条件に決めていくものだ。住民の豊かさではなく、カジノ事業者やゼネコンや大企業だけの成長だ。また病院の開設に府の許可が必要で、大阪市が国と直接交渉できなくなる。住民密着の政治が不可能になる。 
 最も強調される「二重行政の無駄」は、全国の政令指定都市は全て無駄という暴論に等しく、地方分権の趨勢にも逆行する。法定協議会で維新は「平松大阪市長・橋下府知事時代は新型インフルエンザ対応で揉めたが、今年型コロナ対応は(市長も知事も維新のため)素早く的確に進められた」と述べた。だが共産党市議は「新型インフルエンザの感染拡大時と同様の対応にすぎず、コロナ対応を的確とは言えない」と反論。維新の本音は大阪支配にある。
 その平松邦夫元市長は、「都構想にもう一度NO!大阪・市民交流会」を立ち上げた。「どないする大阪の未来ネット」など多様な人々とつながり市内街頭宣伝や地域集会を続けている。9月12日の千林での街宣では市民から激励と抗議の両方が飛び交い、市民の関心が高まっている。平松氏は「賛成の方は私に聞いてください、いかに危険かイチから説明します」と反対集会で述べた。

 再投票の最大の問題は、新型コロナ禍での強行だろう。コロナ対策は、市長・府知事とその取り巻きだけで十三市民病院をコロナ指定病院化し、雨合羽を募集した。思いつきをトップダウンで強行する都構想の先取りだった。大阪府は災害時に使う財政調整基金をわずかしかコロナ対策に使わず、都構想の準備に回した。都構想・万博・カジノに職員が取られ、10万円給付の担当者は10数人で給付に9月までかかり、職員の過労退職も続出した。
 また夏に感染者が再び増えると、焦った府知事は「イソジンが効く」と会見し批判が殺到。イエローランプを二段階に分けて誤魔化し、「レッドランプなら投票延期」も撤回した。かわりにミナミの従業員を集中的にPCR検査し、感染原因を押しつけた。再投票実現のため、被害補償をせず、感染爆発を認めず、市民に自助努力をさせ続ける。結果、ミナミの飲食店は客が消えて崩壊寸前だ。病院の支援や学校でのPCR検査なども遅れ続けている。
 娘がミナミのラウンジで働く淀川区の男性は、「コロナ生活補償を求める大阪行動」の記者会見で、「府知事はミナミへの決めつけを撤回・謝罪し、損害を賠償してほしい」と訴えた。


 最後に、東京「都」で生まれ育った私の実感を訴える。今や東京は、「追いつき追い越せ」と目標にしたり劣等感を持つ場所ではない。巨大ビルと再開発、チェーン店と無駄な広告が街を隅々まで埋め尽くし、住民が自治的活動を行える隙間が無い。そして高い家賃と経済格差に苦しんでいる。
 大阪なら地域商店街が広がる私鉄沿線も、東京はチェーン店だらけだ。超過密人口に住民のストレスは極限状態。日本中から人が集まりすぎて、人の横のつながりや会話も切れている。苦しまずにすむのは一部の富裕層・特権階級だけ。それが大阪都構想の目指す姿だ。
 大阪はまだ人のつながり、会話、商店街が生きている。潰してはいけない。都構想を否決しよう。

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