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くりりゅうの 哲学ノート/結婚すれば女性を蔑視せず「リスペクト」/多数派男性ゆえの言葉の貧困 ラジオ公開説教であらわに/在野の哲学者・文筆業 栗田 隆子

 お笑い芸人コンビのナインティナインの岡村隆史氏による4月23日『オールナイトニッポン』での発言が「炎上」している。
 「コロナの影響で今後しばらくは風俗に行けないし、女の子とエッチなこともできないと思う」という投稿に対して、彼は以下のように発言した。―「コロナが収束したら、もの凄く絶対おもしろいことあるんです。(略)、コロナ明けたら、なかなかのかわいい人が短期間ですけれども、美人さんがお嬢やります。これ、なぜかと言うと、短時間でお金をやっぱり稼がないと苦しいですから。(略)僕はそれを信じて今、頑張っています」。
 この発言に対して、女性の困窮者を性的に利用することを楽しみにするのか、岡村氏の発言を使って、自分の言いたいことに利用する人こそセックスワーカーを差別しているのではないか、岡村氏の出ているNHK番組から降板させよう、いやむしろ岡村氏を使ってフェミニズムの番組を作って勉強してもらおうなど、さまざまな意見が出た。しかし私が今回取り上げるのは、その後のやりとりについてだ。
 翌週4月30日に相方の矢部浩之氏が『オールナイトニッポン』に登場し、岡村氏に対し「公開説教」をした。岡村氏は「パッカーン」(精神的不調)になった時もオフでは一言も謝らない、ADがコーヒー入れてもありがとうも言わない、妊婦の人がマタニティマークつけてても「お腹大きいからわかるやん」と発言する(妊娠初期の状態を知らない)、男尊女卑と思われても仕方ない等々と指摘した。
 その上で、「俺は40歳までフラフラしてたけど、結婚して間違いなく女の人はすごいと思えた」「女性をリスペクトしている」「結婚している奴が偉いわけじゃないけど」と前置きしつつも、「結婚したら?」と岡村氏に勧めたのだ。「(岡村氏の)景色を変えるためにも」、と。これを聞いて、私は「あー……」とため息をついた。矢部氏には悪意はない。むしろ女性蔑視している岡村氏に対して、結婚して俺は「リスペクト」するようになったと語る。女性(しかも妻か母の立場の人のみで独身女性は眼中にない)に対し、「蔑視」か「リスペクト」しかないのか、つまり横並びの感覚はないのか?と感じたのだ。
 さらに「結婚しているやつが偉いわけじゃないけれど」と前置きした後の、「景色を変える」ための手段として、「結婚」を勧めた。認識を変えたり視野を広げる「実践の方法」なんて、他のやり方もあるはずなのに、マジョリティ(この場合ヘテロ男性)ほどそれが少ない、あるいは少ないと思い込まされているのだろうか。いわばマジョリティの「言葉のなさ」を痛感した。
 たとえばマイノリティは自分を語る言葉が「社会の中にない」が、マジョリティは今まで考えてこずに済んだ分、「頭の中に言葉がない」のだ。自助会などの非公開の場ならまだしも、「公開」でこのやりとりがなされるという現実に、私は怒りよりむしろ悲しくなり、ため息をついたのだった。

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