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マジョリティは本質的にマイノリティを理解できないーーあなたもしている「無意識な差別」

京都市民 峰わかば

 昨年12月に『日常生活に埋め込まれたマイクロアグレッション──人種、ジェンダー、性的指向・マイノリティに向けられる無意識の差別』(デラルド・ウィン・スー著)という本が翻訳出版され、「マイクロアグレッション」という差別に関する新たな概念が注目を集めている。
 著者のスーによれば、マイクロアグレッションとは、「通常よく行われるような言動や環境による、意図の有無に関わらず、敵意、軽蔑、軽視、侮辱を伝えること」であり、「マイクロ」といっても決して「小さい」わけではなく、社会全体に隈なく入り込んでいる偏見や差別が「日常生活の中で無数に現れる」というイメージに近い。
 マイノリティは日常的にマイクロアグレッションを体験し続けていて、そのダメージが蓄積し、非常に有害な影響があることがわかっている。
 多くは無意識で発せられる何気ない一言であったり、時には良かれと思って「善意」から発せられる。
 例えば、日本に生まれ育った在日朝鮮人に対して、「日本語上手ですね」「日本人と変わらない」「ヘイトスピーチなんて気にしなければいい」と言う。同性愛者に対して「(異性の)彼氏/彼女いるの?」「私のこと好きにならないでね」と言うなど。これらは非常にわかりやすい例であり、実際はもっと複雑で微妙な場面である場合が多い。
 初めてこれを知った人は、今まで感じ続けていたモヤモヤに名前がついたということが画期的と感じる人もいるだろうし、自分もやってしまいそう/やっていると感じる人もいるかもしれない。
 また、「そんなことまで差別と言うなら、もう何も言えないじゃないか」と思う人もいるのではないだろうか。

ーー意識化が難しい「マジョリティ特権」

マジョリティ特権というものは、魚にとっての水、人間にとって空気のような存在であって、意識することは難しい。例えば日本に暮らしている日本人にとって、自文化に囲まれて暮らし、自民族の言語で話し、学校の教師も役人も政治家も日本人で、自分の民族の立場を説明する必要もない。例を挙げればキリがないが、こうしたものを生まれながらに持っていて、改めて意識する機会はほぼない。
 こうしたマインドのマジョリティが、マイクロアグレッションをしても自覚されないことがほとんどだろう。マジョリティはマイノリティのことを理解することは本質的にはできない。
 しかし、マジョリティとマイノリティの、その非対称な関係性のその接点において何が起こっているのかを自覚し、より尊重に基づいたコミュニケーションを模索する可能性を開く、という意味においてマイクロアグレッションを学ぶ意義は大きい。
 本書の翻訳者らが11月から10回に渡ってオンライン講座を開催している。
 本の内容をわかりやすく噛み砕いて説明するだけではなく、日本の事例なども紹介し、毎回様々なゲストも交え、ディスカッションする内容になっている。詳しくは、オンラインの「マイクロアグレッション連続講座」(毎月1日配信/11月~2022年8月)を。
▼主催・在日コリアンカウンセリング&コミュニティセンター
https://peatix.com/group/11418769

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