漫画「ミュージアム」のあらすじと魅力。読まなきゃ損する全3巻。

漫画家・巴亮介によるサイコサスペンス漫画「ミュージアム」は、ネットや書店からじわじわと人気が広がり、ヒットマンがへと成長、ついには小栗旬主演で実写映画化されるまでになりました。

コミックス第3巻発売直後にこの作品の存在を知り、全3巻を一度に買い揃えてむさぼり読んだ、あの日が懐かしく、その衝撃は今も忘れることはありません。

漫画「ミュージアム」の魅力、それは3つのキーワード。「人間VS人間」、「止まることを許さない疾走感」、「殺人鬼・カエル男」に他なりません。

漫画「ミュージアム」の怖すぎるあらすじ

捜査一課の刑事・沢村は、妻子と別居中のさみしい一人暮らし。そんな時、身の毛もよだつ残虐な他殺体が発見される。若い女性が生きたまま腹を空かせた狂犬に悔い殺されていた。犯行現場には、「ドッグフードの刑」と書かれたメモが残されていた。

第二、第三と事件は続き、同じように、「刑の名前」が書かれたメモが置かれていた。

やがて、殺された被害者たちのある「共通点」が判明するのだが、その「共通点」を持つ人々の中には、沢村の妻も含まれていた。

事件に巻き込まれてしまった沢村の妻と子供。

捜査本部から外された沢村は、焦りの中で、後輩刑事に捜査資料を持ち出させる。

待ち合わせをしていたファミリーレストラン。降りしきる雨。現れたのは、カエルの仮面をかぶった殺人鬼だった。

カエル男曰く「殺人はアートだ」

事件は、猟奇的連続殺人犯を追う刑事沢村の視点と残虐で進む。カエルの仮面をかぶった殺人鬼は、ターゲットを拉致し、それぞれの事情に沿った殺し方で残虐に命を奪っていく。

カエル男にとって、人々の命を絶やしていく行為は、「アート」なのだという。彼は殺人という方法を使って、自らの芸術作品を作り上げようとしていた。

単独で犯人を追う刑事一匹、沢村

沢村は、自らの家族が事件関係者となったことで、捜査本部から外される。それを甘んじて受け入れるはずもない沢村は単独で捜査を行い、やがてカエル男と対面することになる。

多分に「快楽殺人」の気配を持った今回の連続殺人だが、カエル男にとってこれは、遊びを超えたライフワークの一種であり、やらなければならない責務だった。彼はそれをアーティスティックな「芸術作品の創造」と考え、常軌を逸した犯行を繰り返していく。

やがて「最初の目的」をほぼ果たしたカエル男は、次のターゲットを沢村という個人に絞り込むのだった。

漫画「ミュージアム」の魅力

漫画ミュージアムはいわゆる「異常殺人者=シリアルキラー」を題材にしたサスペンスものです。

人間VS人間を描く物語の面白さ

カエル男が残忍な犯行にいたった「動機」はまさに常軌を逸した身勝手なものであり(詳細は漫画でご確認ください)、常人には理解できないものです。

しかし、その「アーティストと自称するが故の殺人動機」は、ある種、人間の欲深さ、欲望の探求をやめられないという人間であるが故の衝動を如実に現したもので、実に「人間くさい」と表現することができるでしょう。

一方、カエル男と対決する刑事の沢村は、刑事としてはそれなりの能力を持ち、部下や上司にも慕われるデキル男ですが、家庭に帰れば、家族を顧みない典型的なダメ男でした。

挙句の果てに、妻には三行半を突きつけられ、忙しい仕事とは裏腹に、怠惰ですさんだ生活を送っています。

沢村は、凶悪犯を見事な推理で追い詰める名探偵ではなく、当たり前のように悩み、苦しんでいる一人の人間です。その苦しみの中で、ストレスの吐け口だった仕事。そこに突如として現れた異物、それがカエル男でした。

しかもカエル男の事件は、沢村の妻子をも巻き込み、彼の人生に大きな転換をもたらします。

一人の異常犯罪者と一人の孤独な刑事。

この二人の人間が出会った時、物語は激しくスパークするのです。

全3巻だからできた止まることを許さない疾走感

ミュージアムという物語全般に言えることですが、展開が早く、ページをめくる手を止めさせません。

読者を飽きさせないその疾走感は、無駄なページや動き、エピソードを省き、効果的にこの「ある種異常な物語」へと読者を引き込むストーリー、そして見やすくて好感の持てる絵、さらに殺人カエル男という目新しさ、など様々な要素によって作り出されているものです。

そして、この疾走感を生み出しているのは、全3巻という物語全体の短さにもあるでしょう。

物語が短いからこそ、余計なことをしている暇はありません。

伝えたいことを伝えるために、ページを無駄なく利用して、効果的な演出とストーリー展開を導く。作者である巴氏の漫画家としての手腕が光るところです。

もし、このミュージアムが20巻も続く長い物語だったらどうでしょう。

狂気のカエル男を捕まえたが、新たなカエル男が出現して、街はパニック。

などという設定にすれば、いくらでも物語は続けられますが、確実に面白さは失われていくでしょう。

人気があるから終わらせずに続けるということが、漫画業界ではあるようですが、それは間違いだと小生は考えます。

その物語には、それにあった「完璧な長さ」というものがあるはずです。

ミュージアムは「3巻で完結すべき物語」をしっかりと「3巻で完結」させた。

そこが面白い作品になった一つの要因であると小生は考えています。

殺人鬼・カエル男の造形とキャラクター

雨合羽に長靴、ゴム手袋、奇妙なカエルのマスクをかぶったシリアルキラー。

それがカエル男です。

実はこのカエル男、雨の日にしか外に出てきませんし、もちろん犯行も犯しません。

雨のカーテンが激しく地面を打ち付ける中、暗闇の中から現れるカエル男。

数あるシリアルキラーの造形の中でも、かなりインパクトのあるキャラクターです。

マスクをかぶった殺人鬼といえばジェイソンさんが有名ですが、カエル男は彼ほどアクティブではなく、じっくりしっかり確実に、音を立てないよう犯行を続けていきます。

漫画は、とにかく「キャラクター重視」の世界です。

異常殺人者であるカエル男という素晴らしいキャラクターを生み出した、というと語弊がありますが、少なくとも漫画作品の中では、カエル男は見事にキャラ立ちした殺人鬼として、異彩な魅力を放ちまくっています。

彼のことを知りたくなる。それがミュージアム中毒の特徴でしょう。

ミュージアムは小栗旬主演で映画化

「ミュージアム」は、2016年秋に実写映画が公開されます。

私は、「マンガ・小説が原作の映画は総じておもしろくない」という主張をしています。

➡️漫画や小説を使った「原作もの映画」はどうすれば面白くなるのか?

この「ミュージアム」にしても大きな期待はもちろんしていないのですが、唯一の希望はミュージアムが「全3巻」と短いことです。

従来の原作もの映画は、長大な作品を無理やり2時間枠に収めようとしたり、まだ完結していない物語の一場面だけを切り取って訳のわからない作品を作ったりという「駄作作り」が横行していました。

故に、少なくとも短い物語や「短編」を映画化するのであれば、それほどの無理はなく、原作の素晴らしいエッセンスを映像に取り入れた作品ができるのではないかと、その可能性を模索しているところです。

例とすれば、映画史上に燦然と輝く「ショーシャンクの空に」です。これはスティーブンキングの短編小説を題材にした映画です。原作が短編小説だったからこそ、この映画は不朽の名作になりえたのだと、私は勝手に確信しています。

➡️映画版「ミュージアム」の公式サイト

ミュージアムは全3巻。読まないと人生損しますよ

漫画「ミュージアム」は、巴亮介氏の唯一の漫画作品です。

彼の素性はあまりよく知られていませんが、とにかく、次の作品を読みたいという気持ちでいっぱいです。

それまでは、ミュージアムを繰り返し読み、巴ワールドの奥底にある真実を探す作業に没頭しましょう。

ぜひとも、一度ご一読を。

損はさせませんよ。

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from 無秩序コラムブログ「神紅堂書店

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