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心得29「全員リーダーシップ」のチームになる意識を持つ

 先ほど、チームメンバーは「部分観」ではなく「全体観」を持って仕事を行う必要性を話しました。この視点を持つことはリーダーシップにつながります。従来はリーダーがチーム全体を見て情報を吸い上げ、適切な判断をして指示を出し、チームを上手く機能させることが求められてきました。今もそれは変わりませんが、より変化の速い環境の中で素早い対処を求められる現代では、リーダー一人に頼るのではなく、できるだけ権限委譲し、可能な限り現場により近いところで判断・決定していかないと対応が後手に回りかねません。
 そんな状況下では各自が素早く適切な判断をすることが求められるわけですが、その際には全体観を持って、自分の判断がどのように周りに影響するかを検討することが求められます。全体を見ながら適切な判断を行っていく。そういったリーダーの意識、リーダーシップはリーダー以外のメンバーにも求められ、その際に必要となってくるのは、適切な判断を下すための他メンバーやチームの情報を常日頃共有していることです。
 このような意識でチーム全員がリーダーシップを持ち、チームの成功に意識を最優先に置いて、メンバーが目の前のことを判断できるようになれば、チーム全体としての機能が底上げされます。
 誰よりも現場のことを一番よく知っているのは現場に一番近いメンバーです。全員リーダーシップの意識があれば、何か問題が起こったときにその都度リーダーに状況報告をして指示を仰ぐ以外にも、メンバーが自分で判断して対処できるようになるので、スピードが格段にアップします。
 さらに、現場の状況をチーム全員で共有できるようになれば、たとえ対応に問題がありそうなときも素早く他者からフィードバックやアドバイスがもらえるという好循環が生まれます。
 まずは、自分の頭で考えること。そして、仲間とも情報共有を行い、判断に行き詰まったら、そのときはリーダーやチームメンバーからアドバイスをもらう、そんな形も必要です。

 ここでのチームリーダー自身のスタンス・在り方としては、全体の状況を把握しながら、「現場に任せて良いことは現場の判断に任せる」ということになります。
 これはサッカーなどのチームプレーにたとえるとわかりやすいでしょう。サッカーでは、メンバーのポジションは決まっていますが、つねに自分の範囲を超えた動きをして、プレーを連携させています。時には攻め、時には守り、互いにコミュニケーションを密に取りながら状況判断を繰り返し、互いに臨機応変にフォローに回ります。ビハインド(劣勢の状態)のまま試合終了間際になれば、ゴールキーパーでもリスクを冒して攻め上がり、敵陣で点を奪い行くこともあります。
 近年では、水泳などの個人競技でもチームプレーの手法を用いていると言われています。種目は違っても控室で選手同士が互いの情報交換を密にしながら、他の選手の戦略を参考に気づきを得たり、士気を高め合ったりしながら「チームジャパン」としてチーム全員で勝ちに行く戦略が取り入れられています。

 私はよくチームを「一人の人間」と考えてみます。頭や両手足、指、内臓、骨、皮膚など各部位にはそれぞれの役割がありますが、人体は常にお互いが連携をとり合い、協力し合っています。
 ケガをしたときなどは、ケガをしていない部位で日常生活の活動を自然に補います。また脳においても、脳損傷で失われた機能を、脳の他の領域が肩代わりをして補うようになることも研究の結果、確認されています。
 チームも、まったく同様です。それぞれの個性が集まってひとつのチームが形成され、共通の目的や目標に向かって役割を担っていきます。誰かに負荷がかかったり、トラブルを抱えていれば、必要に応じて他のメンバーが助けに入るのが自然です。そうしたとき、助けられた者は連携や協力、サポートの恩恵が痛いほど感じられるでしょう。メンバー間で起こる対立を乗り越えて、お互いに気にかけ合い、助け合う姿勢が大切です。
 前述の「心得28」で述べた「一人ひとりがしっかり役割をまっとうすれば良いだけのことなのに、それができていないメンバーがいる」と放置している状況では、チームとしては結果的に機能していません。
 もちろん役割をまっとうできていないメンバーは、当然その自覚や責任感を持つことが必要ですが、一方で理論通りにならない現実に目を向け、柔軟に対処して、チームとして成果を作っていくことが大切です。

POINT
チームのメンバー全員がリーダーシップを持ち、「チームの成功」に意識を置いて、目の前のことを判断し、必要ならば困っているメンバーに手を貸し、チームとしての成果を目指す。

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