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「オンライン飲み会」はイノベーションである

オンライン飲み会は、コロナ問題が生み出したイノベーションである。

コロナ問題が拡大し、人同士の接触が大きく制約される中、世の中では「オンライン飲み会」が生まれた。これは当初、飲み会が出来ない一部の人達が我慢できずに何とかして飲み会を出来ないものか、と苦心した結果として生み出されたものだ。オンライン飲み会を自分も複数回経験してみた。その結果として思う事は、意外に楽しく、雰囲気の統一感も出て、満足度が高いという事だ。

既に他の人も言っているが、オンライン飲み会はリアルな場としての飲み会(以下、オフライン飲み会)の代替手段(下位互換)ではない。オンライン飲み会は全く新しい飲み会の形である。明らかにオフライン飲み会とは異なる特徴(強み、弱み)を持っているからだ。そしてその良さに触れてオンライン飲み会に新しい可能性を感じている人も多いはずだ。コロナ禍において生み出された手法としてのオンライン飲み会が持つイノベーションの側面を、今回は探求してみたい。

■なぜ、オンライン飲み会がイノベーションなのか?

ここで注目するべきイノベーションの側面は、「今までも技術的にやろうと思えば出来たはずだがやっていなかった事が、コロナ問題をきっかけにやってみたら凄く良かった」という事である。従来からオンラインミーティング技術は多数開発され、元祖であるSkypeをはじめ、Zoom、Webex、Google meets、Teams等、様々な既存のツールはあった。実際にビジネスの場面では多数利用されていた。しかし、飲み会という特殊なコミュニケーションの場において利用されるケースは稀だった。それが状況の変化により堰を切ったように実施され始めた事に注目するべきだ。人々がオンライン飲み会によるポジティブな体験に触れ、新しいコミュニケーション(飲みにケーション)の場として捉え始めているからだ。

■オンライン飲み会が持つ破壊的イノベーションの側面

①遠く離れた人同士で飲み会が出来る
遠く離れた人同士での飲み会が行える。シンプルだがオンライン飲み会の最大の特徴であり、絶対的なアドバンテージだ。新型コロナウィルス感染拡大防止に寄与するだけでなく、今まで行えなかった人同士(それこそ海の向こうや国境の向こう側にいる人達)との飲み会が出来る事は単純に素晴らしく、嬉しい事だ。

実際、自分は会社の仲間とオンライン飲み会をやったのだが、参加メンバーは東京1名、神奈川1名、大阪1名、名古屋1名という状態。通常であれば出張で合同会議でもない限り集まれない面子が一斉にオンラインで集って楽しく会話できた事は単純にうれしかったし、普段交わせない会話による学び、情報共有の意義も大きかった。オンライン飲み会は大いに盛り上がり、何と気が付けば6時間(!!)も話していた。これはオフライン飲み会の機会をうかがっていてはいつまでも達成できなかったことだ。

②5人以上でしっかり共通の話題でコミュニケーションが出来る
これはオンライン飲み会に参加している人があまり表現しない点だが、大きな要因であると思っている。通常のオフライン飲み会は、話が盛り上がってくると概ね2名~4名の集団が自然と形成される。これ以上の集団になると、物理的に人を超えて会話する必要があり、おしゃべりの距離が遠く、周囲の雑音も相まって互いの声が聞こえにくくなり、話に集中できなくなるからだと思われる。しかし、オンライン飲み会では5人以上が結構集中した状態で会話を楽しむことが出来る。周囲がざわついておらず、全員と等距離にいるからだ。いわば非常に小さい円卓に全員が座っているような体験という事だ。

この事がもたらす集団へのポジティブな効果はかなり大きい、と感じる。全員と一緒に飲んだ、という体験を強く持たせてくれる。これはオフライン飲み会における居酒屋ではなかなか出来なかった。座席上の制限からも難しかったからだ。席替えによる入れ替えなどはオフライン飲み会でも出来たが、一度話題が途切れたり、仕切り直しになったりすることも多い。全員と同じ距離感で話せると、意外に話題は分散せずに話し合えるので、共通の話題をじっくり語るのに適している。

③「注文」というプロセスがない
オフライン飲み会特有の『注文プロセス』がない点も大きな違いだ。全ての飲み物と食べ物は自分で用意するからだ。オフライン飲み会での最も嫌な場面の一つは、話が盛り上がっている場面で注文を取りに来る店員さんに注文取りで割って入られる事だ。店員さんに罪はない。それが仕事だからだ。しかし、せっかく良い話をしている時に腰を折られた体験をした人は自分だけではないはずだ。また、他者のグラスが空いている場合に気遣って飲み物を注文しようとしたり、他の人の食べ物の好みを確認しながら食事を手配したりすることもない。鶏のから揚げにレモンをかけても良いかどうか確認する必要はないのだ。

④移動時間がないので、時間を気にしなくてよい
自宅から参加しているので、移動時間がない点も優れている。終電すぎまで飲んでいても、タクシー代は発生しない。翌日の予定さえ問題なければ朝まで話せるのだ。これは非常に大きな要素だ。また、力つきて寝たい時も「あ、ごめん離脱する~」の一言(orチャット)で離脱し、そのまま自宅で寝る事も出来る。自分のペースで参加出来る。これも安全安心の仕様として心強い。

■オンライン飲み会の弱点

ただし、オンライン飲み会にも、特有の弱点がある事を忘れてはならない。

①良くも悪くもそこは「自宅」であるという事。
特に家族が同居している人にとっては、自宅は何でも好き勝手な発言ができる訳ではない。同居中の家族の機嫌や動向に大きく左右される。小さなお子さんがいる家庭では、オンライン飲み会の最中も家族に気を配らなければならない気がかりが残るだろう。(一方、何かあったらすぐに飲み会を離脱して家族の面倒を見られるので、良い面もある)当然、配偶者や親がいる人は異なる気の使い方をするだろう。

この問題はコロナ問題が落ち着いた後は、ひとりカラオケBoxや密閉型完全個室仕様の漫画喫茶等があれば、解決できるかもしれない。

②お店の料理や雰囲気を共有できない
同じ料理を楽しめない、とか、お店の雰囲気を味わえないとか、「同一の空間」がもたらす効果は得られない。これは物理的に離れているがゆえの構造的な影響だ。オンライン飲み会は「同一空間において同一の体験をする」という目的には合っていないようだ。

■オンライン飲み会とオフライン飲み会の使い分けのポイント

ここまで見てきた様々な特徴から、オンライン飲み会の強みは「コミュニケーション(飲みにケーション)に集中できる事」となるだろう。遠くの人とも、多くの人とも、第三者に邪魔されず(同居家族を除く)、じっくり長時間にわたって会話を楽しむことが出来る。つまり、コミュニケーションを重視する場合はオンライン飲み会にアドバンテージがあると言える。

一方、同じ場を共有して同じ料理や雰囲気を味わう、という事を重視する場合はオフライン飲み会だろう。美味しい料理を目的に一緒にお店に行く、等は代表的な例である。その他、フォーマルな場やムードを楽しむデート等もオフラインでしか体験できない事だ。そういう点において、オフライン飲み会には絶対的なアドバンテージの領域がはっきりと存在する。

自分なりに考えた結果、仲の良い友人同士や遠距離の人、会社の同僚との飲み会等は、オンライン飲み会が向いているように思われる。飲みにケーションにウェイトが置かれているからだ。今後、恐らくオンライン飲み会はアフターコロナでも引き続き実施されていく事だろう。もはやオンライン飲み会は一つのジャンルとして確立してよいものだ。

オンライン飲み会は、20世紀までの遺物として化石扱いされていた飲みにケーションにイノベーションを起こし、「飲みにケーション2.0」を生み出したと言っても良いのではないか。この新しいタイプの飲み会が、人々の交流にまた新鮮な充実感をもたらしてくれる事を期待したい。

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