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400Fの人事評価制度:"言い値評価"について

こんにちは。お金のマーケットプレイス"お金の健康診断"を提供する株式会社400Fで代表をしている中村仁です。

皆さんはこちらの有名な絵をご存知でしょうか?

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この絵はこのように書いています。

「In order to have a fair evaluation all of you are going to do the same exam: Climb that tree.」
「公正な評価をするために、皆さんは同じ試験を行うことになります。その木に登ってください。」

万人にとって公平な評価をするために同じ評価軸で判断することが逆に誰かにとって有利になっていることを皮肉っている内容です。皆様の組織ではいかがでしょうか?

苦労した組織作りと評価

僕は経営者として評価をする立場にある中で、常にこの葛藤に悩まされていまし非常に苦労してきました(多分CEO業務の中で一番精神的ストレスがきつかった)

評価制度は会社のカルチャーを体現するものであり、組織作りにおいて非常に重要なものです。しかし、何が正解なのかわからないものでもあり、また一度導入すると通常では巻き戻すことが大変だったりするため苦労されている会社も多いのではないかと思います。

例えばMission, Vision, Values(MVV)を土台にしたり、HR Techツールを活用してその人のモチベーションや活動度合いを透明化したとしても、誰かが評価をする限りにおいてはバイアスは発生しますし、万人に受け入れられる評価制度を設計することは非常に難しいと思っています。また数値の解釈の仕方も人それぞれであったりするため全員が簡単に納得するということもありません。実際に同じ数字を見ているのにここまで解釈って異なる??って経験が何度もありました。。。

そして、前職であるお金のデザインの時にも感じたのですが、ベンチャーにおいて評価制度は導入時期が遅くなればなるほど様々な関係者の想いや考えが入ってくるため決めることが大変になります。評価される側にとっても経営陣の都合による評価制度によって自分の評価や報酬が決まるのは嫌であると思います。

何よりも先に自社カルチャーを作ってしまう方が良い

今僕が経営している株式会社400Fは社員数が20名であり、まだまだアーリーステージの会社ではあります。そして組織の方向性やカルチャーは何よりも先に作ってしまう方がいいとこれまでの経験から感じていました。

そういった中でなんとなく自分の中でやりたかったことがあったのですが、Netflixのこちらの本を読んで背中を押された気分になりました。

こちらの本は有名なので読まれた方も多いのではないでしょうか。元々AmazonやNetflixのことは大好きで様々な記事や書籍を読んでいたのですが、こちらの本も素晴らしかったです。もちろん書いていること全てが自分たちにフィットするとも思っていないですし国によってはフィットしないカルチャーでもあったりするのかもな、とも思いました。しかし、早い段階で評価制度を導入して強固なカルチャーを作ろうと考え思い切って"言い値評価"と僕たちが呼んでいる仕組みを導入することにしました。

評価制度はMVVと密接につながっているべき

言い値評価の仕組みについて説明する前に、組織作り、カルチャー、評価制度において大事なことを整理したいと思います。

これはもう多くの方が言われていることでありますが、評価制度は会社のカルチャーを作るものであり、そのためMVVに密接に関連すべきと考えます。

400FのMVVはこちらになります。ここで自分たちのカルチャーを考えた時にこのVisionを自分たち自身が体現するためにはどうしたらいいのか?ということを強く考えました。

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MissionやVisionは自分たちが成し遂げたいことや作りたい社会のことを言うかと思います。そしてそれを実現するためにどのようなValuesを持って過ごしているか。

MVVはいろんな経験をしてきた400Fのメンバーだからこそ絞り出せた言葉だですし、本当に心の底から自分たちが大切にしたい言葉だなって思います。

言い値評価の仕組み

では、そういった状況の中で400Fが導入した言い値評価の仕組みについて簡単にご紹介します。

仕組みは非常にシンプルでメンバーに以下のことをやってもらいました。

①自分の職務経歴書、履歴書を書いてもらう
②自分の現在の年収と希望年収を書いてもらう
③現在年収と希望年収に差がある場合には、その理由を具体的に書いてもらう

それを受けて400Fはその内容をHRの会社に渡して第三者評価をしてもらいます。第三者評価は我々のような会社が提出した個人のJDになるような候補者を採用しようとしたら市場価値はどのくらいか?を算出してもらいます。そしてその結果をCEOである僕が各メンバーと1on1を行って伝えます。

もし、その評価が本人の希望額の範囲内であれば受け入れる。範囲外であれば個別面談にてお互い納得するまで話し合う、ということをしました。

なお、上回った場合に話し合うのは当然ですが、仮に市場価値を下回った場合に会社が評価を引き上げることはしません。それは自分の価値を自分でしっかり認識しておくことが大事だと思っているからです。

それは僕の個人的な思いとしてメンバーが仮に自分の会社を卒業したとしても自己評価だけではなく、他社からの見られ方もわかってもらう方が良いと思っているからです。

また、メンバー全員に対して(CEOも含む)360度コメントも実施しました。これは360度"評価"ではなく、あくまでもコメントです。僕たちの会社がまだ小さいことや日本というカルチャーもあるかと勝手に思っており、360度"評価"にするとなかなか書きづらいことが多いのではないかと思います。

メンバーからの意見をコメントという位置づけにすることによって、忖度なくそのメンバーを思った意見を書くことができます。

これにより、自分で自分を客観的に評価する力が養われ、自分が周りからどのように見られているかということも理解できます。

言い値評価の結果発表

初めての言い値評価では取締役以外のメンバーで入社式なども考慮した上で評価対象となったのが12名でした。結果は以下の通りでした。

満額回答(昇給):4名
一部昇給    :4名
現状維持    :4名

完全に希望金額を受け入れたのが4名。市場価値とのギャップがあることで1on1で協議をして決めたメンバーが6名でした。現状維持を当初から設定したメンバーが2名でした。

この結果は自社が市場価値に対して安い給与をメンバーに支払っていたということであるため、経営者として褒められたものではないと反省しています。

ベンチャー企業はお金がないため、結果が出るまではなかなか満足できる給与を出せるわけではないと思います。またベンチャーでの働きがいはMissionやVisionそして事業内容への賛同など金銭的報酬以外の部分もあります。

それでも各メンバーも生活をしており、家族もいらっしゃるケースもあります。そういった中で「やりがいはあるけど給与は払えない!」となってしまうと本当に優秀で雇いたいメンバーが雇えないというリスクもあります。

そのため経営者としては社会課題の解決をするのと同時に、しっかりビジネスとしてグロースを行い、そして計画的な予算管理によって大切なメンバーに適正な報酬を支払えるようにする責任があると思っています。

言い値評価の改善点

言い値評価を実際にやってみての改善点は以下でした。

1. メンバーに第三者評価の基準をしっかり伝えないといけない

メンバーの基準となる給与の評価については、自社が所属している業界だけではなく、会社ステージも考慮しないといけません。なぜならば、自社がステージAとかのベンチャーである中で、上場企業や外資系企業などと比較をすると給与だけでは絶対に負けます。

その前提があることを正直に伝えた上で、現在のステージにいるからこそストックオプションなども含めた総合的な報酬パッケージがあることを伝えなければ、給与だけで比較するならばメンバーはより良いステージの会社に行くことを選択します。

2. 減給の取り扱い

今回、初めての導入ということで言い値評価において減給は行いませんでした。しかし、二回目以降では市場平均と大きく乖離する場合において現状の給与を減給しなくてはならないという課題が発生する可能性もあります。

その際にはメンバーとの対話の方法などについて今回以上に悩むことが増えることが容易に想像できます。(ちなみに僕はこれまで減給のコミュニケーションももちろんしたことがありますがそれはやはり辛いものです)

3. 人物評価に対する取り扱い

市場評価を給与に反映させることは第三者機関の評価を参考にすることになります。ただし、その評価にはそのメンバーの人間性や組織の中での活躍度合いなどを完全に加味している訳ではありません。これは転職をするときの提示年収でも同じだと思います。

しかし、メンバーは共に働いてきた仲間であり、彼ら彼女らの活躍は一番自分たちが身近で見てきています。そういった活躍度合いについてはどのように反映させるのかについては大きな課題であると思いました。

スキルだけで評価をするのではなく、バリューの体現度合いなども含めた総合的な評価にしないとうまくいかないだろうなという気持ちがあります。

ただし、何が正解なのかはまだわかっていないため次年度末に向けて色々と検討をすることになると思います。

360度コメントについて

こちら非常に良かったです。自分たちの組織が心理的安全性が高い(社長や副社長がSlackで雑コラとかにされるようなカルチャー)ということもあるのかもしれませんが、各メンバーがそれぞれに対して思いやりのある言葉で真摯に感想を書いていました。

そして書かれている内容は、良い内容についてはもちろん嬉しいのですが、改善点についても本人も認識していたような内容ばかりでした。また、1on1の対話の中で「何故そのように周りに認識されているのか?」ということについて深く話し合いをしました。

結果的に感じたことは、「メンバーはすごく各メンバーのことを見ているし率直に素晴らしい面も改善点も伝えてくれている。ただし、自分の本質的な考えや思いについてはまだまだ伝わっていない」ということでした。

ベンチャー企業ということもあり、全員が中途入社です。同じカルチャー/環境で育った訳でもありません。そのため、お互い理解していると言ってもまだまだ表面的な部分があるのも事実です。

そのため、今回の360度コメントを受けて全員でストレングスファインダーを実施して、結果を共有しながら自分の育ってきた環境や思い/考えを共有する場を設けようと思いました。

言い値評価と360度コメントの導入について

正直そんなに簡単ではないな、と思います。400Fの場合にはほとんどのメンバーが創業メンバーのようなメンバーで、お互いの理解も深いですし僕の考え方もよく理解してくれています。

そういった中で今回のチャレンジングな仕組みを導入した時もすっと受け入れてくれたのだと思います。

また報酬水準については自社の余力や給与プールの中から払うほかありません。また、給与プールが一定であるとするならば、誰らの報酬をあげることは将来採用するメンバーが少なくなる可能性もあります。

そのため、その報酬を支払うことが自社の成長において本当に正しいのか、ということを問い続けないといけないです。これをやるには自社の成長イメージを明確に持つことと、その時の組織図をはっきりと描けるようにしておかないといけません。

結果として言い値評価をすることで、自社のビジネスに対してより解像度を高めることに繋がりました。経営者として当然のことなのかもしれませんが、差し迫った課題が目の前にあるとより真剣になるという事例なのかもしれません。

まとめ

400Fでは"言い値評価”という制度を導入しています。こちらはまだスタートしたばかりであるため、導入したことによる組織やビジネスへの影響はまだわかりません。そのため今後モニタリングをしながらアップデートできることがあれば公表していきます。

組織作り、評価制度、カルチャー醸成などはどの組織においても大きな課題の一つであると思います。そういった中で既存の枠組みなどにとらわれることなく自社そしてメンバーにとって最適な仕組みを考え、そして状況に応じてアップデートしていくことが評価制度においては一番大事だと思います。

400Fは「やりたいをやる決断を」という壮大なVisionを掲げている中で、メンバー一人一人が自分らしく活躍できる場を提供できるようにこれからも大胆に様々なチャレンジを行っていきます!

そんな400Fでは事業拡大に伴い絶賛採用中です!私たちの取組に興味ある方は是非カジュアルにお話しすることからさせてください!




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