見出し画像

営業力強化を仕組み化すると事業提携や資金調達にも応用できる(2) -営業力を活かす方法 虎の巻-

こんにちは。お金の健康診断を展開する(株)400Fで代表をしています中村仁です。

お金の健康診断はお金に悩んでいる方とお金の専門家をマッチングするサービスです。現在では90社以上が登録をしております。そういった中でより金融業界の営業力アップにコミットしたいと思い、最近noteで取り組みをしており、今回のnoteも営業に関するまとめを行っています。

前回のこちらのnoteでは、営業力を強化するための仕組みを解説しました。

そして今回は営業力を強化することによって、事業提携や資金調達などにも応用できることを解説します。ところで、なぜ事業提携や資金調達を取り上げているかと言うと、営業と聞くと「泥臭い」「専門性がない」などネガティブな印象を持つ人が多いと個人的に思います。一方で、事業提携や資金調達と聞くと何か華やかなイメージを持つ人もいるのではないでしょうか。

しかし、僕の考えでは営業力を養うことによって事業提携も資金調達も圧倒的な成果を達成できるので、もしそういった営業からのキャリアシフト等を考えている方に今取り組んでいることに自信を持ってもらいたいと思っています。

1. 営業力を応用した事業提携の虎の巻(基礎編)

前回のnoteでは営業力を強化するためには以下の要素が必要であるとまとめました。

自社/自己理解力
お客様理解力
論理的思考力
コミュニケーション能力
行動計画力×継続力
GRIT

こちらの要素を事業提携を例にしてまとめていきましょう。まず事業提携において最も重要なことは「提携候補先が抱えている課題や経営計画に自社のプロダクト/サービスがどのようにフィットするのか定量/定性的説明できるか」と言うことになります。

提携候補先はビジネスの拡大や生産性向上などの観点で様々な課題を抱えて経営をしています。そして事業提携においては自社がその課題に対してどのように貢献できるのかを明確に説明できないといけません。

そのため、まずは自社のプロダクト/サービスの内容理解と競合他社との優位性をはっきりさせないといけません。その上で、提携候補先の理解になります。

提携候補先の理解については以下のことを必ず行うべきです

・会社HPなどの外部情報を全て閲覧して情報整理をする
・上場会社の場合にはIR資料を全て閲覧して抱えている課題の理解を行う
・提携候補先の組織図を頭に入れてキーマンが誰なのか(複数)を把握する
・業界レポート/メディアなどがあればそれも閲覧して将来予測をしておく

上記の整理ができたら次に論理的思考で、提携候補先が抱えているであろう課題感などを整理して、そこに自社プロダクト/サービスがいかに貢献するのかを説明します。

なお提携候補先への提案資料においては、自社のプロダクト/サービス紹介は数枚に留めておき、業界/提携候補先の分析と課題解決に向けた取り組みをメインに作成すべきです。よくあるのが、自社のプロダクト/サービスを何十枚もだらだら列挙して「自分たちはすごいぞ!」と自慢するかのような資料を作成することがありますが、個人的には全く意味がないと思います

こちらのハーバードビジネスレビュー「営業の教科書」のなかで、ソリューション営業の時代は終わりインサイトが大事と言う項目があります。私はその意見に大賛成で、情報社会になった中で世の中にあるソリューション/プロダクト/サービスに対する理解や研究は各社がそれぞれ自社で十分以上に行っていることが多いです。

自社ソリューションをドヤ顔で説明しても「そんなことはわかっています」と思われてしまうだけです。自社ソリューションを中心に提携案を出すことはプロダクトプッシュ型の営業と同じである時代遅れの営業モデルです。それよりも提携候補先の課題を整理するインサイト(=洞察)が重要です。これはベンチャー業界で言われているプロブレムソリューションフィット(Problem Solution Fit = PSF)と一緒だと思います。PSFの定義は以下のようなものであり、下記のリンクなどでも解説をご覧ください。

ユーザーの課題を明確にし、解決策をみつける「プロブレムソリューションフィット(PSF)」

自社理解、提携候補先理解、そこからの論理的思考で顧客の課題認識と提案内容が固まったら次にコミュニケーション能力です。事業提携において重要なコミュニケーション能力は、社長などの意思決定者だけに営業するのではなく、関係部署全体に対しての説明能力や、キーマンを把握した上での組織内意思決定のバランスの理解、そして意思決定機関の開催日と出席者の理解といったことになります。

私の前職の証券会社ではオーナー社長たった一人にひたすら営業を行って成約をとって営業成績をあげると言うことはよくありました。しかし、事業提携におけるコミュニケーション能力はそのようなやり方は通用しません

提携候補先関係者たちの役職、役割、関係性などをしっかり把握した上でそれぞれの抱えている課題認識をすり合わせて自社のプロダクト/サービスが関係者たちの課題を解決することに役立つと思ってもらうことが重要です。

事業提携においては多くの関係者と話をする必要があることと、意思決定機関の会議開催日が月に1回であったりするため行動計画力と継続力が大事になります。なんとなく関係者たちとコミュニケーションを行っていると取締役会/経営会議などの意思決定日を過ぎてしまい次の開催が1ヶ月後になってしまうと言うことがあります。そのため、提携候補先のスケジュールを把握して、そこから逆算して必要な人たちに話を進めていくことをしなければなりません。また、大企業になるほど社内での意見がコロコロ変化することがあります。「カウンターパーティーの方との会話が良好であるためもう大丈夫だろう」と思っていると突然社内の意見が変化して提携が頓挫すると言うことがあります。そのため、継続的に営業を行い社内の雰囲気がどういったものかを逐一チェックしつつ軌道修正が必要なのかどうか、再度キーマンへの説明が必要なのかを緊張感を持って対応しなければなりません

最後に、事業提携とは時間のかかるものです。僕がNTT docomoと事業提携を発表した案件は2年以上かかって実現したものです。そのくらいGRIT(=やり抜く力)がないと事業提携のビッグディールを獲得することはできません。

2. 営業力を応用した資金調達の虎の巻(基礎編)

次に、資金調達はどうでしょうか。

資金調達も事業提携と同じく自社プロダクト/サービスの理解、そしてここでは何よりも競合他社との差別化が何であるのかを明確に言えるようにしなければなりません。投資家候補先は様々な企業を見ているケースがあるため、ぼんやりとした説明では全く印象に残らないことと出資をする判断ができなくなってしまいます。

お客様理解については投資家理解よりも、「ユーザーペインの理解」が最重要です。自社が展開しようとしている/すでにしているプロダクト/サービスは、どのユーザーのどんなペイン(=課題)を解決しようとしているのかをはっきりとさせないといけません。また、自分たちが身をおいている業界のポテンシャルなども理解した上で「この業界は十分やマーケットポテンシャルがあり、自社のプロダクト/サービスはユーザーの○○のペインを解決することができる」と言うことが言えなければいけません。

ユーザーのペインを理解すると言う際には、僕はジョブ理論を使うことを好みます。ジョブ理論は「人が商品やサービスを買う行為の背後にあるメカニズムを、論理的に説明するための理論」と言えます。まだこの本を読んだことがない人は必ず読むことをお勧めします。

そして資金調達においては論理的思考力とコミュニケーション能力は密接につながります。資金調達の説明の場はだらだらと説明する時間はありません。ピッチコンテストの場合には制限時間がありますし、そうでなくて投資家候補と初めて会うケースにおいても簡素に自分たちのビジネスの説明をしなければなりません。

自社紹介、ユーザーペイン、プロダクトの紹介、事業の進捗度合い、事業計画、今後の計画、調達に関する提案などを論理的にまとめた上で簡素にかつ訴求力を持ってコミュニケーションしないといけません

さらに、実際に投資家候補先が自社に関心を持ってもらったら、その次にはデューデリジェンス(DD)がありますビジネス、財務、法務などに関するDDがあり、こちらは事業会社からの調達になるとかなり細かいレベルでの質問表がきます。それらを取りまとめるのは関連部署であるケースが多いと思いますが、実際に投資家候補に話すときには個人的には社長が全てを一通り把握した上で説明するべきだと僕は考えています。

これまでお金のデザインで80億円以上調達をしてきましたが、あるときにはこちらは財務部長と私のみで、先方は20名近くの関係者がずらっと並んで数時間質問攻めにされたこともあります。その際も質問には全て私がそつなく回答し出資に至っています。

そして資金調達はそんなに簡単に達成できるものではありません。ビジネスがうまくいっていると思っていても、投資家候補先からみた将来性、バリュエーションなどの条件面、既存投資先とのコンフリクトなど様々な障壁があります。そのためどこかに過剰に期待をして行動しているとキャッシュが尽きる前に調達ができないと言う恐ろしいリスクがあります。なのでしっかりと投資家候補先のリストアップ、面談日の調整、そして相手に期待して行動するのではなく自ら動いて結論ももらうといったことを行って、リストを潰していかなければならないこともあります

また、普段ビジネスをやっている中で片手間で資金調達はできるものではありません。非常に苦労をして、大変な期間を過ごすことになると思いますが、最後はGRIT(やり抜く力)がやはり大事になります。

3. 営業力は偉大だ

以上のように、事業提携や資金調達においても営業力は活用できます。もちろん、営業力をそのまま活用できるのではなく、提携候補先や投資家候補先などに合わせてチューニングをする必要はありますが、大枠のフレームワークは変わらないと思います。

また、この考えは理論だけではなく僕が実践を通して培ってきたものであり、実際に数十社との事業提携や、80億円以上の資金調達などを実現してきた中での考え方になります。

現在、営業を必死に取り組んでいらっしゃる方はふとしたタイミングで「自分のキャリアは今後どうなっていくのだろう。このまま営業をずっとやっていて大丈夫なのだろうか」と思うことがあるのではないでしょうか。正直僕も華やかな世界などに憧れたことはあります。しかし、心配しないでください。再現性のある営業力を養っていけば他業界や他の役割が与えられたときにも必ず成果を出すことができます

営業力は偉大です。今営業をやっていらっしゃる方は自分に自信を持ってぜひ営業力を鍛えていってください。

-------------------------------------------------------------------------------

最後までご覧いただきありがとうございます。現在営業サークルを運営しています。営業サークルでは、業界の未来予想図に関する議論、日々の営業活動やマネジメントの悩み相談などを行っております。今回のような無料noteに加えて、サークル加入メンバーは業界分析を中心とした有料noteを無料で閲覧できるのと、メンバー限定のSlackに加入して様々なディスカッションをしたり、毎週開催されるオンラインミートアップに参加できます。ぜひご加入をご検討くださいませ。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?