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織りなされる光と影が美しく、和風住宅らしさを演出する建具「障子」①


和風住宅で一般的に使われている「障子」は、日本建築特有の建具です。
細い木の組子を骨にして、薄い和紙を一枚張り付けただけの建具であり、現代の住宅でも幅広く使われています。和紙を透過することで、外部の光が穏やかな光に変化して影がやわらかくなるので、そこに日本らしさをもたらします。

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障子の『障』には「さえぎるもの」「ふさぐもの」といった意味があり、『子』は物を意味する言葉で、さえぎる道具を意味しています。
また、壁以外の仕切りのことを指し、板障子・襖障子・杉障子などのほか、衝立障子などのような可動式のパーティションを総称して「障子」と呼んでいたそうです。建物に取り付けられたものに限定されず、平安時代では可動式の仕切りという意味をもつ重要な建具でした。

民家再生の第一人者として幅広い活動をされている建築家の降幡廣信さん(降幡建築設計事務所)は、和室の美を構成するものとして欠かせない障子を、「障子ほど日本的な建具は世界にない。細い木の組子を骨にして、薄い和紙を一枚張り付けたのみの建具である。特に畳と障子の両者を用いて構成した和室の美を日本の美として、世界の人々はあこがれる」と話します。

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(設計:降幡建築設計事務所「有明の家」 photo/林安直)

障子は、主役である透き通る和紙の質感と木の組子との絶妙な調和によって成り立っています。建具屋のつくる障子の芯材は杉が主。日本にはどの地方にも杉があり、それぞれに特徴があります。障子の材料としては、秋田杉と吉野杉が代表格。秋田杉は寒い気候で育つため、成長が遅く年輪が緻密で固く地味に見え、吉野杉は温暖な気候で育つため、成長が早く材質も穏やかで明るい色合いが特徴です。障子紙は産地によって特徴があり、表具屋にも好みがあるといいます。有名なのは「美濃和紙」。紙の透け具合が重要で、外の風ひとつで表情が変化する肌合いは和紙ならではの趣です。

障子を設置する空間のプロポーションや設置場所、開口の大きさによって、調和する障子は異なるので注意が必要です。

「障子」の成り立ちや基本の解説や事例は「和風住宅25」に掲載しています。