チケット予約の波を前倒すための考察

【毎週火曜更新・時間堂、年商1億プロジェクト26】時間堂プロデューサー大森晴香です、ごきげんよう。春ですね。うちの堂主が商売道具には金をかけろと書いてていいこと言うなーって思ってたら最終的には物乞い記事でした。うん、正直だね。私にとっての商売道具、それは指先です。パソコンも制作グッズも大事だけどね、それを扱う指先が死んでると行動に自信がもてなくなる。あと、やっぱり身体そのものが商売道具だなぁと、年中五月病みたいだった後厄の去年を振り返って痛感します。気力と体力ってどっかで配ってないかなー。

さてさて。本題。

制作の大先輩荻野達也さんが、私の愛読しているfringe watchに私をとりあげてくださいました。すごいっ。なんか私がすごいひとっぽい。時間堂プロデューサー・大森晴香氏の「超・具体的な小劇場の課題と対策」に回答してみるというタイトルで、特にひとつめの課題について私ももうちょっと深堀りしたいと思います。

公演直前あるいは初日明けないと予約が伸びない!

実はこの話を書いたあとに公演を迎えたある劇団がありまして、もう如実にこれだったのです。劇場入りした時点での予約は目標の62%だったのに、終わってみたら連日満員の105%達成。たった1週間で1.7倍。もしこれが見通せていたら、劇場入りした時点で追加公演を打っていたかもしれません。満席でキャンセル待ちが出てると聞いて、来場を諦めたかたもきっといる。

この課題に、荻野先輩はこのようなご回答をご提示くださいました。

【難易度:中】これは、チケットの販売期間が短いことにも一因があるのではないでしょうか。当然ながら、短いと売れ行きの波を起こすのは困難です。長ければ、その過程で様々なプロモーションが可能です。販売期間はどのくらいが最適なのか、その間に自分たちになにが出来るのかを考えることから始めるべきです。

一見したときは、販売期間を充分確保すればよい、に読めてしまって、「前回よりは長かったしなぁ。。。」で思考が止まっていたのですが。肝はそこではないですよね。

売れ行きの波を起こす。
様々なプロモーションが可能。

よくある「売れ行きの波」は、
第一波:発売開始直後(ファン)
第二波:劇場入り前後(マジョリティ)
第三波:初日が開けてから(クチコミで判断するひとびと)
の3パターンなんじゃないかと思う。この第二波・第三波を前にずらすには、という発想。もしくは第一と第二、第二と第三の間でなにができるか、という発想の話だ。なんなら第0波があったら安泰。

次の時間堂本公演『ゾーヤ・ペーリツのアパート』では、第0波を計画中。まだオフィシャルではおしゃべりできないんだけど、まぁこれはよくあるアレですよ。チラシが出たらピンとくると思いますので5月までおあずけ。わん。

第二波を前倒すには、「早く予約するメリットの訴求」もしくは「早くしないとなくなる!というイメージの提示」、あるいは「前々から予約しておく楽しさの演出」ができたらいいんじゃないかな。これも実は使い古された方法から笑っちゃうような方法まで、アイディア出し自体はさほど難しくないんじゃないか。ちなみにみんながやってる伝統的なやりかたで、今も昔も変わらず成果が上がってるもの、パワフルなものはどんどんやったらいい。古いから、誰かの真似っこだから、は、やらない理由にはならない。

第三波を前倒すには、発信力のあるひと・メディアに早い段階からちからを借りること。だけじゃなくて、Owned mediaだらけのこの時代、「中の人でない客観的な誰かが語ることば」もものすごくパワフルだ。つまり、客観的な誰かがついつい話題にしたくなるようなしかけを用意したらいいんじゃないかなぁ。

たとえば、レパートリーシアターではときどきちょい見せ(せっかくだから4月に再演する『人の気も知らないで』2月稽古をちょい見せ)をやってるんだけど、これってネタバレの塊なんですよね。でも、動画でちょこっと観ただけで満足する演劇って実はあんまりないんじゃないかと思っていて、ちょこっと観たら全部観たくなるし、たとえこれが全編公開してたとしても、生で、目の前で、観たくなっちゃうんじゃないかなーと。

…みたいなしかけ。

あとは、思うようにいかなかったときの1.5や2.5の波に対する引き出しがあるかどうか。

それと。

まさに自分がこの「第二波:マジョリティ」なので(公演時期が迫ってから慌てて予約する)、自分がどういうときに早めの予約を試みるか考える。たとえば、誰かと一緒に行く約束をすると、予定って早く決めませんか?私、なう顔合わせ日程調整真っ只中なんですが、関係者がとーーーーーっても多い公演なものでほんと予定が合わない。それをまさか前日とかにはやらないですよね。観劇だって、明日3時間ものの芝居があるんだけど、観に行かない?って気軽に言いがたいですよね(『ゾーヤ・ペーリツのアパート』は3時間は言い過ぎだけどまぁまぁな長編です)。このへんにもヒントが。

すでにいくつか動いてはいるのだけど、まだこれからできることもきっとある。

昔、ある先輩が「優秀なひとっていうのは、『やったらいいな』って思うことを実際にやれるひと」と言っていました。ひとは言い訳の天才で、やったらいいのがわかっているだけでは動き出せないことが多い。あ、これ、私だ。

でも!ありがたいことに制作を手伝いたいという若者をふたりもだまくらかし、じゃなかった、勧誘に成功したから、きっと今までよりやれることは増える、はず。そして幸い、私は見栄っ張りなので、若者にイイカッコ見せるため、できるおんなシャチョーのふりを貫くため、7月まで風のように駆け抜ける予感。

8月、私はきっと真っ白な灰になりながら、報告書の山に遭難しかかっていることでしょう。そのくらいばりばり、やれたら素敵だな。

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