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ノンケとの恋愛(1)

友人にこう聞かれたことがある。
「出会いを探すの大変そうだね」
確かに異性愛者がマジョリティである中で、同性愛者と恋愛することは一見難しい。
しかし、一歩足を踏み入れてみると出会いのツールは異性愛者よりも充実しているかもしれない。

掲示板、アプリ、イベント、バー‥。
先人が声を上げ、行動して下さったお陰で、我々は出会いの場を享受している。

しかし、私生活で自然に出会った人と恋愛しようとすると、ハードルはグッと上がる。
恋愛感情を抱いても、相手が同性を恋愛対象として見てくれるかどうか。更には自分を受け入れてくれるかは人それぞれ。

一か八か胸の内を明かしても、軽蔑されてしまい、そのまま疎遠に‥なんて可能性だってある。


先の質問に答えるなら、同性愛者同士の「出会いの場」はあるものの

「私生活で出会った人と恋愛関係になる」ことは難しい、と感じていた。

‥感じていたが、結論から言うと今はそんな風には感じなくなった。

何故なら私は過去に3度、ノンケさんとお付き合いしたからだ。

(ノンケ=ストレート、異性愛者のこと)


以前レズビアンのオフ会に参加した折、他の参加者の方に自分の過去の恋愛の話をした時のこと。
「ノンケと付き合ってたの?すごい!どうなったら付き合うことになるの??!」
とすごく興味を持ってくれた。
確かに付き合うまでのプロセスが気になると思う。

なので今日は私がノンケさんと付き合った経緯を記します。





一人目の子は23歳の頃だったと思う。
一つ前の記事で触れたが、別れようか悩んでいたメンヘラちゃんからスッパリと別れを告げられた翌日、私はモヤモヤした気持ちで仕事をしていた。

誰かに話を聞いて欲しい。

別れた相手に未練はないが、この1ヶ月間の私の頑張りを誰かに話したい。
しかしこの時私は、職場の人にほとんどカミングアウトしていなかった。
それでもどうしても誰かに聞いて欲しい気持ちが勝ってしまい、その日一緒に仕事をしていた後輩をご飯に誘った。

その時点で彼女とは一度もご飯に行ったことはなかった。

友達数人にカム(カミングアウトの略)していたものの、やはり誰かにカムする時はいつだって緊張する。


ビールを胃に流し込みながら、洗いざらい話してみた。
昨日振られた所まで一通り話し終えたが、彼女の反応は普通だった。
いや寧ろ、好意的にすら感じた。

元々彼女は中性的な男性がタイプらしく、男らしい男性に惹かれない、寧ろかっこいい女性に惹かれる時がある、と話した上で、私の話を興味津々で聞いてくれた。

それまで彼女のことを深くは知らなかったが、寛容なところが同性愛に対して偏見がなさそうだな、と肌で感じていたので食事にも誘った。
しかしまさかこんなにも肯定的に受け止めてくれたことに正直驚いた。

ものすごく楽しい気分でその夜を終えた。



その夜を境に、急激に仲良くなっていった。
毎日のようにメールを交わし、職場での会話も増えた。

積極的な性格の子だったので、これはもしかして‥?と思うようなこともあった。


そして初めてのご飯から何日か経った頃、メールで告白された。

こんなこと今まで無かったので(本当にモテない人生だった)、ものすごく嬉しかった。それと同じくらい、予感はあったものの改めて驚きもあった。

例えば掲示板で知り合った人は、ついカッコつけたりして「素」の自分を見せないままに付き合ったりするが、同じ職場なのでありのままの自分を知ってくれている。
そんな自分を知ってる上で、好いてもらえたことに驚いた。

しかし、彼女のことは「職場の後輩」として好きではあっても、恋愛としての好きか、というのは正直分からなかった。


そして同じ職場であるために、どうしても上手くいかなかった時のことを考えてしまう。ネガティブな思考に関しては人一倍長けているので、悪い想像ならいくらでもできた。
チキンな私はフワフワした気持ちのまま付き合うことが悪いことに思えて、結局お断りした。


明日から、仕事で気まずくなったらどうしよう‥
なんて考えていたが、年下である彼女の方が精神的に大人で、私が気を遣わないよういつも通り接してくれた。


しかし、ここで一度想像してみて欲しい。
自分のことを好きだと言ってくれた子と毎日毎日同じ職場で顔を合わすことが及ぼす影響を。

こんな自分のことを好きだと言ってくれている時点でただでさえ高評価なのに、いい所が沢山目につくようになる。
落ち込んでいれば、力になりたいと思う。
ついつい目で追ってしまう。



そう、完全に気になり始めていた。



なので付き合わない選択をした後も連絡をし、ご飯にも行った。
相手も「え?何だこいつ?」と思っていたかもしれない。

そしてはじめの告白から何ヶ月か経った後、今度はこちらから告白し付き合うに至った。

掲示板で連絡をとっていた相手に写メを送った瞬間返信が来なくなったり、イベントに行っても誰からも話しかけられることなく帰路についた私が、ノンケに告白されて付き合うなんて、漫画かと思った。


そして、私以上にすごいのはやはり彼女の方だ。
男性としか恋愛をしてこなかったのに、同性を恋愛対象として見れる柔軟さ。
そして仮にも職場の先輩である私に告白した勇気。

終わってみれば彼女とはたった6ヶ月ちょいの付き合いだった。
当時の私は精神的にまだまだ未熟で、相手の気持ちを汲めず嫌な思いをさせた事があった。
それでもこの恋愛は、ネガティブの塊のような私にほんの少しの自信と、セクシャルマイノリティーである自分の人生に希望を持たせてくれた。
相手の気持ちを考える意味で、勉強になったこともあった。


そして気づきもあった。
セクシャリティは様々な分類があるが、元々ノンケであっても、女性と付き合ったらバイセクシャルになるのでは?と思っていた。
しかし彼女やその後に付き合ったノンケの女性曰く「じ(私)だから付き合った」のだそうだ。

正直セクシャリティーなんてどうでもいいが、『その人だから好きになった。そこに性別は関係ない』というのは大いに納得できたし、本来の考え方のような気がした。



10年近く経った今、彼女は結婚し、優しそうな旦那さんと幸せな家庭を築いている。私と別れた後、恋愛や仕事のことで悩んでいる姿を何度も見てきた。
そんな彼女が自分の力で掴んだ幸せを、私はずっと続くよう祈っている。



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