プロフェッショナルコンサルティング/波頭亮 冨山和彦

BCG、マッキンゼー出身の超有名戦略コンサルタントと2名による対談本。

戦略系コンサルティングが80年代/90年代と比較して高度化しているという前提の上で、いかにしてハイクオリティなコンサルティングを実現するかについて話されている。
対談の中にはなぜ日本では変革が起こりにくいのか、コンサルティングファームの若手に推奨したい働き方などの内容もあり、面白かった。
以下、興味を持った点

・戦略コンサルティングが高度化したワケ
大きく2つ書かれている。
一つはガチンコのグローバル競争にさらされているから。00年代以前はある種、補完的なグローバル競争だったが、それが変化した。最も象徴的なのは韓国・中国メーカーが台頭し、日本企業が得意だった家電系や半導体の市場をかっさらっていった。
もう一つは、エグゼキューションが重要視されるようになったこと。以前は戦略コンサルのみが持っていた方法論はある程度コモディティ化することで、差別化が難しくなった。いい戦略さえできれば業績が上がるという単純な構図が終わり、その戦略をいかに実行していくかというポイントにおいて優劣が出るようになった。

・若手コンサルに必要なもの
リアリティを持つことが重要。そのために現場に出て、1次情報を獲得する努力や小さくて一気通貫のビジネス経験、業界紙を読み込むことが必要である。

・”情理”の重要性
”情理”という聞きなれない言葉がこの本には何度も出てくる。論理的に正しいことを主張しても人間は情理の生き物だということを理解する必要がある、とのこと。ただし、”情理”も「感情の理屈」であるため、その感情が生まれた理由などは深く考察すれば理解できるものである、コントロール不能のものではない。

・論理的思考能力は”筋力”
論理的思考能力は筋力のようなものであるそう。筋トレを正しいフォームで繰り返し行わないと筋力がつかないのと同じように、論理的思考を正しい方法で繰り返し行わないと論理的思考能力がつくことはない。ある種のブームと化しているが、継続性が必須という観点は忘れてはいけない。

・日本企業が変革できない理由
日本の経営者は欧米のそれ以上に難しい立場とのこと。それは競争上の合理性を追求する経営者という立場と同時に、共同体の長という立場にも自動的に置かれてしまうから。方々の立場を気にするあまりに大きな変革は起こしにくいという構造上の問題がある。政治家に近いようなしがらみがある。小泉元総理が自分が総理になったときにしがらみをできるだけ作るまいと議員時代から会食にすらいかなかった話は面白かった。

・外資企業が日本で成功しにくい理由
日本の商習慣がガラパゴスなのにも関わらず、グローバル戦略に従って運営をしなくてはならないため、商機も逃す。
また、いつ日本撤退するかわからず、担当者もいつ変わるかわからないので長期的なリスクがあり、取引先との友好的な関係を作りにくい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?