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【第12話】鳴る電話

商店街の中心で愛を叫んだ。

商店街を猛ダッシュで走り抜け帰宅するも、上の空状態の私…

後悔はしていないけど、罪悪感が残る。

それは隆史(仮)から返事も聞かず、顔すら見ずに走り去ったこと。

そして、何より…

隆史を困らせたかもしれない。

と、いうこと。

あの場に取り残され、好奇の目に晒されたかもしれない。

告白が青天の霹靂なら困惑させているかもしれない。

勢いって怖っ…

よく言ったとは思うけど。

隆史は今、何を考えてるやろう。

突然…友達から好きやと言われて、何を思うやろう。

「好きやから付き合って」

それならまぁ返事はyesかno。

ただ好きやと言われた場合、どういうことになるんやろうか。

そもそも付き合うとか、その頃の私には考えも及ばない言葉と行為。

彼氏と彼女というワードを知ってはいても、身近なものでは…もちろん無い。

告白に対する返事があるのかどうか、そんなことも考えていない。

頭の中はヘルタースケルター。


告白したのは金曜日。

初めて眠れない夜を経験した。


寝たのか寝てないのか…

土曜日の朝は今までにない重い空気に包まれた。

考えて分かったことは、発した言葉は取り消しがきかないということ。

相手が聞いちゃったら…時、既に遅し。

これを10才を迎える前に悟れたのは紛れもないレペルアップではある。

とんでもなく大事な存在を犠牲にしたかもしれないけどね。


のび太ではないけど、嫌なことがあると坂道を登り山に入って虫取りをした。

友達で好きな人で、紛れもなく一番大切な人である隆史を失うかもしれない怖さに気付きたくなく…

一心不乱に木を蹴り、網を振り回した。

虫には迷惑な話である。


昼ごはんを挟んで夕方まで、虫カゴは一杯になったけどリリース。

お風呂に入って、夜ごはんを食べて…

一息ついたら、また不安に襲われる。

土曜の8時ぴったり…

「8時だヨ!全員集合」

いつもの声が聞こえる。

隆史とよくドリフの話もしたなぁ。

もう何かが終わったような気分だった。

軽快な音楽と共に普段聞きなれない音が聞こえた。


リリリリリリリン…

リリリリリリリン…

電話、珍しいな…めったに鳴らないのに。

「忍!!」

オカンが私を呼んだ、心なしか機嫌が悪い声だった。

振り向くと受話器を手で抑えたオカンが、怪訝そうな顔をしてこう言った。


「同じクラスのたかしって子から…」

言うが早いか、受話器を奪い取った。


身体中の毛穴が開く…、一瞬で体温が上がる感覚だった。

顔は平静を保ってはいたけども。

「…もしもし?」

恐る恐る、少し震えた声を捻り出した。

この次の言葉で何かが変わるのか、終わるのか…

二人して楽しみにしていたテレビ番組の時間、そして家業のクリーニング屋の営業が終わった時間にこっそり掛けているんやろう。

(昔は連絡網で番号が公開されてました)


「俺やけど…」

隆史の声も、いつもと少し違った。

抑揚を抑えたような声が悪い想像を掻き立てる。

「う、ん…」

怖い、怖い、怖い…


スウッー…と息を吸い込む音が聞こえた。

いよいよか。


「俺もお前のこと好きやから!!」

ガチャン!! プーップーップーッ…


は?


あんたも言い逃げか!!

仕返し?仕返しやの?


頭のなか、整理が追いつかない。

 私の告白を聞いたとき、隆史もこんな気持ちやったんやろう。

5分ほど放心状態。


私の好きに、隆史も好き。

こういう事よね?

つまり両想い…

両想い!!??!!

まじで?


おめでとう、私!

で、この先どうなるん?


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読んで頂きありがとうございました!

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