見出し画像

【第14話】小4の付き合い

思い立ったら即実行。

うちには少女漫画の類いは一切無かった。

"少年ジャンプ"は"少年"がついてるから違うよなと、よく分からない理由で除外。

確か近所に住んでる同じ年の双子姉妹が"りぼん"を読んでたなぁ…

と、思うが早いか双子宅に行きバックナンバーを数冊借りて読み出した。

絵が…無理…(゚Д゚;)

ウケツケナイ。

とはいえ、男女の好きやの嫌いやのが溢れている誌面。

そこには放課後を一緒に帰ったり、映画館、遊園地、買い物に出掛けたりといった風景が描かれていた。

あんまり変わらんよなぁ…

買い物は駄菓子屋に行ってるし。

んんん?

ちょっと待てよ…?

手を繋いでる!

腕組んでる!

はい、気付きました。

隆史(仮)と私は手を繋いでないぞ。

腕も組んでない。

むしろ私は女子同士でキャッキャウフフしながら手を繋いだりとか生理的に無理やったから気付いたら行事でしか誰かと手を繋いでない…


互いに好きと言い合ってる2人が手を繋ぐ…

これこそ彼氏と彼女やんか!!

単純である。

もちろん、漫画のなかではその先(少女漫画の描写はキス止まり)もあったわけやけど…

さすがにそれはちょっとハードル高いというか、小4ではダメなんじゃないかとか何となく思った記憶がある。

絶対、乳幼児の頃に誰かとチューとかしてたと思うけどね。

ーーーーーー切り取りーーーーーー

ちなみに腕を組むは除外。

漫画の中の男女…

たいてい女より男が背が高いのが定説。

隆史は私とどんぐりの背比べ状態。

なので想像したところ何か違うと思ったぽく、腕組みは無しの方向でと考えた。

ーーーーーー切り取りーーーーーー

翌日、私は頭のなかでシミュレーションを繰り返してした。

手を繋ぐぞ!

やるぞ!繋ぐぞ!

…意気込めば意気込むほど空回る頭。

っていうか、学校では止めとけと思うけども。


放課後、いつものように途中まで送ってくれる隆史。

横で楽しげに今日あった学校での話をしてる。

私は相づちを打ちながらもタイミングを見極めていた。


そのときオカンの忠告が頭を過った。

『一対一の付き合いは許さんで』

言うても子供。

その瞬間、周囲が…人の目が気になった。

周り全てが敵かもと思った。


障害があればあるほど燃えるのは、まだ先の話…

当時の私はすこし怖くなった、何があるわけでもないのに。

でも、そこで諦めないのが長所…


見つからなければいいやん?

これが小4の正義。


その日は金曜日。

そろばんの帰りなら薄暗いし、人も少ないし誰にも見つからない!

隆史といつもの場所で後でな!とバイバイして、小走りで帰宅し少し早めに家を出た。

繋ぐぞ、手を繋ぐぞ!

頭のなかはこれだけ。

そろばん教室が終わり、商店街に続く薄暗い道。

明るい商店街とは対照的。

他の生徒は逆方向に帰るので誰もいない。

強引にでも繋ぐぞ!と思っていたはずが、薄暗い道は私を意気消沈させてしまう。

でも"繋ぐぞ!"より"繋ぎたい"と、より自然に思っていた。

強引や無理矢理は良くないと本能で思ったのか…

「なぁ…、手繋がへん?」

聞いてみた。

嫌がったらどうしよう。

なんで?と聞かれたら困るなぁ。

隆史の返事を待つまでもなく続けた…

「暗いとこだけ」

…保険かけたな。

暗い道を怖がるようなタマじゃないのは隆史も承知。


「………。(スッ…)」

こっちを見ないまま隆史は手を差し出した。

…どんな顔をしてたか見たかったなぁ…


私は半歩後ろを歩きながら手を掴んだ。

とても暖かくて、繋がってることが嬉しかった。

そして商店街に差し掛かる時、どちらからともなく手を離した。

これがスイミングとそろばん教室後のルーティーンとなったわけやけど、少しの間…手を繋いでる間は2人とも無言。

なぜか無言。

手を繋いだままだと話せない謎。


ともあれ…暗くて誰も見てない、そういうところでだけ手を繋ぐ…

秘密の付き合い…

彼氏と彼女…

隆史と私は付き合ってる!!


卒業までバレることはなかった秘密の手繋ぎデートである。


★☆★☆★☆★☆

読んで頂きありがとうございました!

今日はひんやりしますなぁ…((+_+))

noteまとめ『文書遊戯』に参加しています


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?