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朝鮮総連も歓喜したプレジデント記事執筆者はあの秘書官

予告通りとあるプレジデント誌の北朝鮮擁護記事をご紹介します。ちょっと古い話ですが執筆したのは元内閣総理大臣秘書官、元内閣官房参与の飯島勲氏。ご存じの通り、小泉政権の訪朝、拉致問題交渉にも関わり「官邸のラスプーチン」と言われた人物です。訪朝した政治家は往々にして親北になりがち――これは過去の訪朝団でも見られた傾向ですが飯島氏も北朝鮮に対して穏健な発言をしては家族会などから批判を受けたことも。

掲載は2009年5月だから麻生政権の頃です。飯島さんはプレジデント5月18日号連載記事「リーダーの掟」(13回)にこう寄稿しました。長いですが、ご興味があればどうぞ!

11年前の飯島勲による北朝鮮擁護論

「孤立を深めているのは北朝鮮か日本か」
欧州では普通の国と捉えている節が今回は、北朝鮮問題に関して提起したい。北朝鮮ほど閉鎖的で民主主義の適用しない国はありません。拉致問題、核開発、瀬戸際外交など、日本人にとってみれば、「敵国」と考えてもいい。他方、EU各国は、北朝鮮をごく普通の国と捉えている節があります。国交があり、互いに大使館も設置しています。通常の外交が行われているのです。ヨーロッパで日本人が拉致されたというのも、逆説的な言い方になりますが、EUの国々が北朝鮮を「普通の国」として自由な行動を認めているからでもあるのです。
その北朝鮮にレアメタル、つまり稀少金属という地下資源があるのはよく指摘されるところです。北朝鮮相手に通常の外交関係を結ぶイギリスやフランス、ドイツなどは平壌に商社マンを派遣して、すでに稀少金属を確保するための交渉を始めています。北朝鮮の隣の中国も稀少金属や鉄鉱石を狙っています。中国は、広大な国土を持っていますが、本土の平らな土地にはあまり資源がありません。地下資源に恵まれているのは、石油の出る新疆ウイグル自治区やチベット自治区など周辺地域、あるいは陸を踏み出した海の部分つまり大陸棚です。
中国にとって一三億人分の民を支える資源は、大陸の中心部ではなく、周辺部や大陸の外側にあるのです。だから、いろいろ非難されながらもチベットや新疆ウイグル自治区を手放せないでいる。日中の境界線上のガス田の確保に必死になっているのも周知のとおり。そして、北朝鮮も中国にとって資源の貴重な供給源の一つなのです。
このようにヨーロッパ各国や中国、ロシアなどが北朝鮮と交渉して資源確保、経済交流を進めているなかで、指をくわえてそれを見ているのがアメリカと日本です。拉致問題、核とミサイルの問題……これらの事情があるにせよ、世界的な視野で見れば、北朝鮮との外交ではむしろ日米だけが特異な立場に立っている。さらに近年のアメリカの「テロ支援国家指定の解除」を見れば、世界で孤立しているのが、北朝鮮なのか、日本なのかがわからない状況です。
金正日政権の打倒を叫ぶ有識者も多いのですが、仮に北朝鮮が崩壊した場合、北朝鮮の周辺に位置する日本、韓国、中国、ロシアにとって深刻な影響が出ます。
在日朝鮮人も多い日本。日本人の対応の仕方によっては、日本対朝鮮半島という図式で、一種の動乱状態となる可能性さえあるかもしれません。さらに、朝鮮半島の南北が統一されたら、どうか。ミサイル技術を持った北朝鮮と、経済力を備えた韓国が手を結んだら、日本にとって無視できない大きな脅威となるのです。
金正日にはビタ一文やらない!
二〇〇二年九月一七日の第一回小泉訪朝で日朝双方が合意した「平壌宣言」。その四項目には、核とミサイルの問題について「関係諸国間の対話を促進し、問題解決を図ることの必要性を確認」ということが書かれています。これがスタートラインとなって始まったのが、六ヵ国協議なのです。
「平壌宣言」には「拉致」の文字が入っていません。五人の拉致被害者が帰国したのちに、家族会から小泉元総理へ「拉致問題の解決よりも平壌宣言の履行を優先しているのはおかしい」と強い批判があったのは事実です。しかし、拉致問題は、当時では司法当局も含め日本側は北朝鮮の工作員の規模や活動の実態を十分には把握できていませんでした。乏しい材料で要求を突きつけると、それはかえって限定的なものになってしまいます。
それより、包括的な表現にすることで、あらゆる問題をあらゆる角度から俎上に載せられる形にしておく……そのほうが今後の日本外交にとってプラスだという判断があったのです。同時に、これらの問題を解決しないかぎり、ビタ一文援助はしませんよという内容になっています。つまり、小泉内閣の手で、ほんの少しですが扉が開いたのです。
それ以前は、社会党も共産党も、また金丸信ら一部の自民党幹部たちにしても、議員外交によって膨大な援助を北朝鮮に対して行ったり約束したりしましたが、事態は一歩も前へ進みませんでした。小泉訪朝、平壌宣言で扉が少し開いたのを引き継いで、以後の内閣がいかに歩を進めるかを私は注視していました。残念ながら、小泉元総理の二度の訪朝以後、いまに至るまで日朝関係に大きな進展は見られません。
北朝鮮を叩くことで溜飲が下がるのは事実です。人生をメチャクチャにされた拉致被害者の心情を慮れば、ちょっとぐらいやり返してもという気持ちもわからないでもない。しかし、日本は法治国家です。パフォーマンスに近いことをして、北朝鮮叩きに奔走するのはやめたほうがいい。日本人は冷静に理性を取り戻さねばなりません。
たとえば、朝鮮総連への固定資産税の徴収問題。安倍内閣のもとで強化された動きですが、日本国内にある朝鮮総連の関係施設について、従来、固定資産税が優遇・免除されていたものを、厳しく徴収するよう変更が進んでいます。東京都においても、石原慎太郎都知事もそれを当然の策として推進しています。固定資産税は地方税です。地方税法では、不特定多数の住民が利用する公民館や集会施設は、固定資産税を免除することになっています。そういう施設には、アメリカ関連のものもあればトルコ関連、韓国系、中国と縁が深いもの……など、さまざまあります。それを、北朝鮮と関わりのある施設だけ取り出して、そこについては全部課税強化するなどというのは、無理な話。地方税法の趣旨からも外れますし、法令改正が必要です。私が総理首席秘書官の時代に総務省に調べさせたところでは、全国で二〇〇近くある北朝鮮関連施設のなかで、本当に朝鮮総連だけの特定の施設と化しているのは、二ヵ所だけでした。そういうものには網をかけるとしても、それ以外まで課税強化するのは無理な話です。
三十数年前に出版された雑誌「ゼンボウ」に朝鮮総連の関係工作員が破壊工作をしたと書いてあることをもとにして、六、七人しか入れない建物に二〇〇人でガサ入れをしたこともある。しかも、違反も軽微であったために公判を維持することもできない有様。こんなことを称して「圧力」というのは、私たちが非難するところの「非民主国家」となにが違うというのでしょう。青いバッジを付けている議員にぜひ説明をしてほしい。
北朝鮮の「飛翔体」はミサイルか、ロケットか
本年四月五日、北朝鮮は「弾道ミサイル(飛翔体)」を発射しました。小泉内閣のときに「飛翔体」という言葉を私が初めて使いました。「ロケット」と「ミサイル」という言葉を多くの人が混乱したまま使っています。簡単に言えば、人工衛星であれば、ロケット。軍事用に使うのであればミサイルです。日本は人工衛星を発射していますから、論理的に考えれば、北朝鮮の「ロケット」を非難することはできません。明確な確認ができない段階から「ミサイル」という言葉が一人歩きしている現状に疑問が残ります。では、どうすればいいのか。
交渉のチャンネルを確保すること。敵国であっても相手と対話するパイプを鎖さないこと……それが何より大切です。
国交のない北朝鮮には日本の大使館や人員を置けませんが、国連に認められていないパレスチナの場合と同じように代表部なり連絡所、あるいはそれに準じた形にすればいい。そのためには、まず、朝鮮総連の幹部の往来の自由を認めることです。それとバーターとなる形で日本人も北朝鮮に入国させる。現在、それは制裁によって禁止されています。相互主義を探ることによって、日本側も、自分たちが得たいものを手にしていけばいいのです。自分で解決することを放棄して、アメリカにすがったまま「拉致、拉致」と騒いで歩くだけが日本外交ではないはずです。

人工衛星をミサイルと同一視するくだり、飯島氏に限らず親北派の著名人・学者によく見られます。それから日本の方が孤立しているというお説は当時ですら無理矢理じゃないかと。いわんや現在は、中国ですら制御不能の金正恩体制。現在、孤立を深めたのはどちらかという話です。

一方、朝鮮総連傘下の団体「在日本朝鮮留学生同盟中央本部」という団体があります。イメージとしては広報、日本人活動家らとの交流役と考えてください。この寄稿が掲載されるや彼らは非常に評価し、機関紙や活動家が集まるメーリングリストで報告していました。

このメーリングリストでは定期的に北朝鮮に好意的なメディアを紹介しており週刊金曜日、朝日新聞、毎日新聞あたりは常連。ところが突如、自己啓発のプレジデントが紹介されたので意外でした。

この飯島コラムが掲載されたのは2009年で、民主党政権直前です。当時はまだ北朝鮮擁護論が活発で親北派議員も多数、なおかつ平和フォーラム等、支援団体の活動が元気でした。ところがご存じ通り、2009年以降、大きな事件がありました。

天安沈没事件、延坪島砲撃事件(2010年)
金正日死亡(2011年)
張成沢粛清(2013年)
金正男暗殺(2017年)
北朝鮮が南北共同連絡事務所(2020年)

これに加えて数々の日本海側へのミサイル発射。

ここまで暴挙が続くとさすがの支援者たちも「擁護」するにもそれなりに理論構築せねばなりません(専門誌、総連の機関紙は別として)。日本人の自虐意識に訴えるだけというのはもう限界でしょう。裏返せば親北派の理論の拠り所は「日本人の自虐意識」、この一点だけと言っても差し支えないと思います。

では「孤立を深めているのは北朝鮮か日本か」という趣旨の記事を現在のプレジデントオンラインで配信したらどうなったでしょう。間違いなく「炎上」したのは目に浮かびます。前回紹介した麹町文子記事のような削除になったかは分かりませんが・・。

それにしてもプレジデントさんは本来、「人を動かす7つの言葉」「ビジネスシーンの会話力」「一流経営者のメモ術」こんな記事をやっていればいいわけですよ。通勤途中のサラリーマンに「デキる人になった」と錯覚させるのが彼らの使命。ビジネス啓発の名門ですよ。なぜ微妙な政治イシューの道を踏もうとするのか。で、また降りかかる火の粉を払う意気地もない。それでも積極的に政治分野に参画したい――というならば

「オフィスでウケる政治談議」「ビジネスパーソンが知っておきたい10の政治テーマ」

こんなのやっとればええとちゃいまっか。




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