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7/11 ニュースなスペイン語 25 aniversario:25回忌

写真の青年の名前を知る人はあまりいないだろう。彼の名はミゲル・アンヘル・ブランコ(Miguel Ángel Blanco)。享年25歳。

安倍晋三元総理が凶弾に倒れた8日とほぼ同じ頃(12日)、しかし、今から25年前の1997年、テロリスト集団ETA(「バスク祖国と自由」)によって、誘拐(secuestro)され、殺害された(asesinado)。

ブランコはバスク州のビスカヤ(Viscaya)にあるエルムア(Ermua)という町の、全く無名(desconocido)の、国民党(PP)所属の議会委員(concejal)だった。

ETAはバスクの独立を主張し、各地で政治家やその関係者らを容赦なく殺害してきた。

そんなETAがブランコの解放の条件として提示してきたのが、48時間以内に収監されている同志たちを釈放せよという「事実上達成しえない要求(una exigencia prácticamente inalcanzable)」だった。

各方面からのブランコを殺害しないようにとの嘆願(ruego)もむなしく、ブランコは要求期限が切れた2日後、帰らぬ人となった。

ETAが40数年間のテロ活動で殺害した人々は、身元や背景が明らかになっているだけでも、886人に及ぶ。ブランコは、その778番目の犠牲者となってしまった。

ブランコの死は「エルムアの魂(espíritu de Ermua)」という運動まで発展し、テロに屈しない市民の姿勢(respuesta ciudadana)を醸成するのに大きな役割を果たした。

さて、10日の日曜日、ブランコの25回忌の式典が行われ、フェリペ6世(Felipe VI)やペドロ・サンチェス首相(Pedro Sánchez)などの要人が参列した。

事件のことを知らない世代が生まれることはあってはならないことだ(Se puede permitir que haya generaciones que ignoren lo que pasó)

フェリペ6世がこう訴えた背景には、2020年に行ったアンケート調査で、10人に6人の若者がすでにブランコのことを知らない現実がある。

ETAの標的となることが多かったナバラ州の小中高校生では、1000人の学生の内、ブランコのことを知っていたのはわずか5人だったという。

人は忘れる、否、忘れる能力を持つことが許された生き物だ。だから、辛いことがあっても、どうにか、生きながらえることができる。だから、忘却は悪いことではない。

もし若者が昔の重大事件のことを知らないなら、それは、我々おじさん・おばさん・年寄りが伝えてこなかったからでもある。若者にばかりを嘆き節をぶつけても仕方ない。

伝えなければならないことは、繰り返し、言葉にしておかなければならない。

写真はミゲル・アンヘル・ブランコ。ちなみにミゲル・アンヘルは「ミケランジェロ」のスペイン語版の名前。

出典
https://www.rtve.es/noticias/20220710/miguel-angel-blanco-ermua-acto-homenaje-victimas-terrorismo/2387820.shtml など