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2/6 ニュースなスペイン語 Primer delito:最初の犯罪

スペースの都合で省略したが、実際の記事では、「世界で(en el mundo)」という語が続く。

つまり、「世界で初めての犯罪」の容疑者の男が逮捕(detenido;arrestado)されたというニュース。

男は18歳で氏名は伏せられている(犯行当時は17歳だった)。マドリード在住で、前科はない(sin antecedentes policiales)。

逮捕容疑は未成年への性犯罪(corrupción)、幼児ポルノ(pornografía infantil)の所持(tenencia)と配布(distribución)という、(残念ながら)スペインでも、世界でも(そして、日本でも)、珍しいものではない。

では、タイトルの「世界初」と矛盾するのではないか。

否。

実は、男が悪事をはたらいた「世界」は、仮想空間である「メタバース(metaverso)」なのである。

リアルではなくヴァーチャルな世界での犯行とはどんなものか。

その手口は、リアルな世界と、あまり変わらない。

メタバースで活動するためには、ユーザーの分身であるアバター(avatar)を作る必要があるが、まず、この男はアバターを偽装した。

男はメタバースの世界では19歳の女子(identidad de una chica de 19 años)と偽っていたという。

そして、バイセクシャル(bisexual)に関心があることをプロフィール(perfil)欄に記載。

次に、同じ性的指向の女子たちと出会うと、ことばたくみに、彼女たちを信じ込ませ(se ganaba su confianza)、性的な写真や動画を送らせていた(lograba que le remitiesen fotografías y vídeos de carácter sexual)という。

男はこんな具合に約20名(veintena)の少女たちとチャットを交わし、彼女たちからせしめた動画や写真を、今度は、自分だと偽って、他の少女たちに送り付けていた。これも、また、少女たちから信用を得るための手法なのだろう。

ネット上でも、現実世界でも、40を超えたオジサンが19歳の少女の振りをして、詐欺を働くという事件が後を絶たないが、まぁ、これと基本的には同じことがメタバースでも起こっていた。

被害にあった少女の両親から訴えが昨年の5月にあり、アラゴン州サラゴサ県の専門チームが指揮をとり、捜査が進められていた。

ちなみに、その作戦名は「スザク作戦(Operación Suzaku)」と呼ばれていたそうだ。音の響きから日本語だろう。

「すざく」で検索すると、ネット上にはアニメの登場人物名やら、人工衛星の名前やら、星座の名前などが出てくる。まぁ、メタバースに関連付けられなくもないが、いまいち、何故、今回の作戦名に使われたのかは分からない。

今回の犯罪に使われたアプリはYoutubeやTikTokなどを通じて若者の間に広まったというから、この度の検挙は、多分、氷山の一角だろう。

新しい「場(プラットフォーム)」が生まれれば、新しいビジネスと犯罪ももれなくついてくる……。

写真はイメージ。

なお、今回の記事には

今後の分析のために、1テラバイトのハードディスク1枚と犯罪行為に使用された携帯端末が押収されたSe han aprendido, para su análisis posterior, un disco duro interno de 1 TB de capacidad y el terminal telefónico que utilizaba para su actividad delictiva)

という1文が載っていた。

太字にしたのは、通常は「学ぶ」という意味で使われることが多い動詞。辞書には「〘古語〙捕らえる、つかまえる」という意味もあるので、こういう語法もあるのだろう。

まぁ、もともと、「知識をつかむこと」が「学ぶ」で、「犯人をつかむこと」が「逮捕する」、「犯罪に使ったものをつかむこと」が「押収する」なので、根っこは同じ。

「逮捕(押収)する」という意味では、「aprehender」という「aprender」と同語源の動詞があって、こちらは、太字にした母音「e」がふたつ連なる。これは英語の「apprehend」とそっくりさん。

出典
https://www.rtve.es/noticias/20230204/detenido-joven-18-anos-como-presunto-autor-del-primer-delito-mundo-del-metaverso/2421207.shtml