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旧サッシ工場を、地元7店の集まる商業施設と150坪の芝生広場にリノベーション。

こんにちは。新潟県柏崎市の飯塚政雄と申します。
地元で八幡開発株式会社(はちまんかいはつ)という不動産会社を経営しております。さて、私が2015年から始めた地域での取り組みと、現在進めております旧サッシ工場のリノベーションについて紹介させていただきます。

◆まちづくりに興味を持つ

不動産事業を通してどのようにまちに貢献できるか。こんなことを考えていた2015年7月、仕事がら情報収集のため訪れていた賃貸住宅フェアで、初めてリノベーションまちづくりを知りました。清水義次さんをはじめとする錚々たる方々のお話に触れ、探していたものに出会えた感じがしました。「よし、これを地元で進めていこう!」その場で心は決まりました。早速関連するいくつかの本を読み、まずはできることから始めようということで、自社を中心とした半径200mエリアを設定、エリア内の空き家調査を行いました。その後、地元新潟工科大学建築学科の先生、学生とともに空き家の活用方法を検討。そして、学生たちが自ら空き家を改修して暮らす「学生シェアハウス」を企画しました。
2015年12月から大工さん指導のもと、学生たちがセルフリノベーション。2016年3月、工事完了とともに入居を開始しました。完成から4年経った現在、全8室満室で稼働しています。
ちょうど同じ頃、公民連携プロフェッショナルスクール(現都市経営プロフェッショナルスクール)2期生募集の広告が目に留まりました。地域での更なるアクションを考えていた私にとって、まさにうってつけの内容でした。早速申込みをし、2016年6月から2017年1月まで、まちづくりを進める上での考え方を学びました。スクールに参加したことで、自分がやるべきこと見えてきました。

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パン屋をはじめる

2017年1月、スクールの終了とともに、パン屋を始めるべく動き出しました。なぜ、パン屋か。スクール受講中講師の岡崎正信さんに相談していた際、「俺ならパン屋をやるな」と一言。その言葉にビビッときた私は、「おもしろそうだ。よし、パン屋をやろう!」と決意。とはいえ、まったくゼロからのスタートであったため、まずはパン屋に関する本を数冊読み、その後岡崎さんにアドバイスをいただきながら計画を進めました。
スクール修了から8カ月後の同年10月、自社内の一部を改装して「ベーグルとクロワッサンの店 Biwajima Bakery」をオープンしました。
ベーグルとクロワッサンに絞った理由は2つあります。1つは、半径1km以内に4件のパン屋があり、後発である当店は種類を絞ることで差別化を図りました。もう1つは、当初ベーグル専門店で進めていたのですが、地域の状況からベーグル1本でいくことにやや不安を感じ、クロワッサンを加えた2本柱でしっかりと売上をつくっていこうと考えました。

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スープとスムージーの店をはじめるも、9カ月で閉店

ベーカリーが思った以上に順調なスタートだったこともあり、ベーカリーの集客を活かした次なる店を考え始めました。社員と相談する中で「パンと一緒に食べられるスープの店がほしい」との声があり、この案を基に事業計画を立てることにしました。ベーカリー同様スープのみでは売上をつくるのは難しいと考え、スムージーを追加。2018年6月、ベーカリーに隣接したコンテナ店舗「スープとスムージーの店 コンテーナ」をオープンしました。
ベーカリーのお客様は必ずこの店の前を通ることから、そこに期待をしていました。しかし、蓋を開けてみると思ったほどうまくいかず、ベーカリーとは一転、当初から苦戦しました。オープンからしばらくして、体にやさしい材料でつくるお菓子の販売も始めましたが、状況は改善しませんでした。
そんな頃、ベーカリーの中心的な社員が、家庭の事情で退職することに。ベーカリーの継続を考えた結果、コンテナ店舗を閉めて、2人の社員はベーカリーに異動してもらうことに決めました。まさか9カ月で店を閉めることになるとは思ってもみず、事業を継続することの難しさを痛感する出来事でもありました。この地域の環境、状況にフィットした内容だったか、もっと精度を上げることができなかったか、ベーカリーの集客に過剰に依存していなかったかなど、反省点はいくつもあります。これらの学びを、次の事業にしっかりと反映させていかなければと誓ったのでした。

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駅南エリアのリノベーションから方針転換

学生シェアハウス、ベーカリー、スープとスムージーの店と展開し、近隣の空き店舗にも美容室が入居。以前に比べて人通りが増え、少しずつエリアが変化していくのを実感していました。さらにリノベーションを進めるべく、このエリアで多くの不動産を持つオーナーさんと、この先の展開に向けた交渉を進めていました。ちなみに、現在当社、ベーカリーが入っている土地建物も、このオーナーさんからお借りしているものです。数カ月に渡り話し合いを進めていましたが、結果的に考え方、方向性の違いを埋めることができず、このエリアでの展開が難しい状況になってしまいました。自分が生まれ育ったこのエリアを再生することがひとつのモチベーションでもあっただけに非常に残念ではありましたが、沈んでいるわけにもいかず、早々に気持ちを切り替え、次なる展開を考え始めました。

◆築33年の旧サッシ工場を取得

言うまでもなく、賃貸ではオーナーさんの意に反して事業を進めることはできません。先のエリアリノベーション断念から、あらためてこのことを実感した私は、自社で不動産を所有するため、物件探しを始めました。まもなく、廃業した旧サッシ会社(土地860坪・建物400坪)が売りに出るとの情報が入ります。このサッシ会社には以前何度も伺ったことがあり、物件の状況についてはある程度承知していました。地域の質の高い店舗を集めて、そこにしかない場所をつくりたいと考えていた私にとって、突如として目の前に現れたチャンスに感じました。この物件に関する情報を集め、物件の取得に向けて動きました。そして、2019年2月、晴れてこの物件を取得するに至りました。
物件取得後、早速テナント探しを始めます。事業の精度を上げ、かつ、事業リスクを低減するため、スクールで学んだテナント先付けを徹底しました。そこにしかない店を集めて価値の高い場所をつくりたいとの思いから、当初は公に募集せず、出店してほしい店の代表者に直接コンタクトを取り、この事業に掛ける思いを伝え、出店をお願いしました。途中、条件の調整が難航したり、出店予定の店舗がキャンセルになるなど、いくつかの紆余曲折を経て、取得から10カ月後の同年12月、全7店舗が決まりました。
現在は工事の真っ最中です。設計段階から配置、規模など各店の希望を取り入れ、極力無駄のないよう進めています。そして、10月31日、「7つ店舗と芝生の広場 ハコニワ」がグランドオープンの予定です。

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◆ハコニワが目指すところ

ハコニワの目的は「事業を通して、地域課題の解決を図ること」です。いくつもの地域課題がある中で、まずは次のような地域課題に対してアプローチしていきます。
▶【地域の生産力を向上させる】
地域に元気な事業者が増えれば、まちに活力が生まれ、様々な面でプラスに働きます。
ハコニワでは、地元事業者が連携し、新たな価値や稼ぎを創り出すべく動いていきます。これを実証することで、地元事業者に対し「自分たちにもできるんだ」という機運を醸成し、実際にアクションを起こす人を増やしていきたいと考えています。
二宮尊徳翁の「荒れ地は荒れ地の力で」を愚直に実践し、他に依存するのではなく、自分たちのまちは自分たちの力で盛り上げていく、この気概をもって事業を進めていきます。
【空き家活用】
一軒家など小規模なものから廃校など大規模なものまで、今後地方では空き家が増えることが確実視されています。
空いているものを埋めればよいという発想では、地域への大きなプラスは見込めません。空き家を活用して、いかに価値をつくり出すか、ここに注力して取り組んでいきます。
ハコニワをきっかけに、空き家を再生させるモデルケースをこのまちに増やしていきたいと考えています。
▶【雇用・創業】
ハコニワに来られる人はもちろん、働く人にとっても、ここで仕事をすることが楽しく、喜びや幸せを感じられる場所にしたいと思っています。楽しい場所はポジティブなエネルギーで溢れ、またそこに共感するポジティブな人が集まる。個々の能動性が発揮され、やりたいことを実現できる場所づくり、空気づくりに力を入れていきます。
大人が楽しく働いている姿を見たこどもたちは、仕事に対しての見方も変わるでしょう。楽しそうな地元で働きたい、地元に自分でお店を開きたい、と思ってもらえればうれしいですね。

ハコニワオープンとともに、芝生広場を使って地元農産物をメインとした朝市の定期開催を予定しています。朝市を通して、出店者には生きがい、やりがい、作りがいを、来場者には、安心安全鮮度が売りの地元農産物が買える朝市が、地元のある喜びを感じていただければうれいしいです。この朝市から、新たな人のつながりやコミュニケーションが生まれ、個々人の日常が、今よりもっと豊かになるようなきっかけをつくる場所にしたいと思います。
また、来年度からは地元の小学校高学年を対象に、ハコニワ各店舗の商売に直接関わってもらう実体験プログラムも計画しています。
この秋オープンするハコニワ。ここに関わる人々のポジティブなエネルギーを、市内はもとより市外県外へと発信していきたい。お近くにお越しの際は、お立ち寄りいただければうれしい限りです。

飯塚政雄
特定非営利活動法人自治経営 理事 飯塚政雄
八幡開発株式会社 代表取締役社長

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