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怒涛の5月

事の発端は、5月1日の朝、実家に掛かってきた一本の電話。

GW、土曜日。気怠い朝6時前。
夫である叔父を亡くして5年、精神科施設に入院している叔母が
夜中に お湯をこぼして両腿に火傷をしている、という。
着替えを手伝ったら 両腿に水疱が出来ていて真っ赤になってて分かったって。
「まったく!夜中に本人が勝手にやった事なんですからね!こちらは
GWで人手が足りないっていうのに!!!病院の予約、朝イチで入れましたから
今から病院へ連れてってください!!!」
連れて行ってくださいって、あなた、家からそちらの病院まで行くのに
車で30分、そしてその予約を入れてくれたっていう病院には そこから更に
車で30分掛かるんですけど。
「そんなこと分かってます。こちらも病院ですけどね、火傷は対象外なんです。
早く連れにきてください。救急の窓口から入れるそうですから!ガチャン」

いや、あの、そりゃ 精神的に参ってる人を24時間365日預かってくれてる事は
感謝していますよ。
でもさ、土曜日の朝イチに そんなに激オコで電話してきて 80過ぎの年寄りに
車で迎えにきて病院連れてけって、そりゃ無いだろうよ。
でも 叔父が亡くなる間際 私の両親に頭を下げて「他に誰も身寄りがない。
だから俺に もしもの事があったら、何卒 よろしく頼みます」って言ったから
叔父の唯一の遺言みたいなもんだから、80を過ぎた父がゆっくり運転する車で
母は叔母を迎えに行って その足で病院へ向かって 火傷の手当てをしてきた。
「エヘヘ。火傷しちゃった。コップのお湯をこぼしちゃったんだ」と悪びれた
様子もなく話す叔母。でも この範囲は とてもコップレベルじゃないよ、と
問い詰めると「やだなぁ。義姉さんは。すぐに分かっちゃうんだもん。そうよ、
そう。ポットごと ぶち撒けたの。だって、新型コロナって言ってさ、誰も
会いに来てくれないし、どこにも出掛けられないし。誰にも会えないんだよ。
もう1年だよ。うんざりだよ。だから こうすれば 来て貰えて連れ出して
貰えるでしょ。エライでしょ、あたし。頭いいでしょう?あ、ここなら買える。あんぱん食べたいな。カフェオーレも買ってきて〜。」
やっぱり確信犯か。この手の人たちは 思いもよらない行動を取るんだよな。
でも その代償は痛いと思うよ。「痛くないもん!あたし、強いんだもん」
そうでした。痛みは 殆ど感じないんだよね。すごいよ、それは。

週に2度 連れてきて手当が必要です、と聞いた父は さすがにシンドイなと
思っただろう。自分で運転して1時間掛かって連れて行って、待合室で待って
また連れて帰ってくる。往復2時間の距離を運転するのだから。
当時、私は車の運転が難しいほど 膝の痛みが酷かった。
その上 GW中は 夫の実家の畑仕事、山の祠で神事、田植えの準備、
息子の世話で ヘトヘトだった。
父と母の愚痴を聞くのが 精一杯だった。

そこへ持ってきて GWが明けた2週目の金曜日、父が寝ぼけて 
飼い猫とケンカした。なんでやねんな。
父は昔から、寝言、歯軋り、いびき、夢遊病のように動き回るという傾向が
酷かった。そこへ持ってきて、週に2回も 運転して気を張って疲れまくっていた
のだろう。夜中にゴソゴソ起きて 猫のゲージを開けてしまったらしい。
猫は大喜び。ゲージから出て走り回る。でも父は 自分が開けてしまった事に
気付かず、どうしてこうなったか分からない。だから必死に捕まえてゲージに
入れようと努力してしまった。母が気づいた時には 両手が血だらけになって
猫をゲージに入れている父がいた。
その傷たるや、恐ろしく深い。両手の甲の部分が思い切りやられている。
いや、これはヤバい。しかも土曜の夜中だ。
月曜日を待って、私は 外科のある病院に連れて行った。私の膝の先生の所だ。
「これは、ひどい。うーん、大丈夫かなぁ。心配だなぁ。肉が盛るかなぁ。」
消毒液に浸したガーゼを 傷口に入れ込んでいく。「い、痛い」という父に
「これは、痛いよ。直ぐに抗生剤の点滴しましょう。これ以上 傷からバイ菌が
体に回ったらマズイし。これから暫く消毒と点滴にきてね。動かすの、当面
禁止だよ。」
「で、でも 実はこれこれ こういう事情で怪我人が居るので運転するんです」
「え?失礼だけど そのお歳で、年下の人の面倒みてるの?でも その火傷は
施設の落ち度でしょう?おかしいよ、それ。連絡 とってあげるよ。任せて」
直ぐに火傷治療の方の病院に連絡を入れてくれて そこ経由で 精神科施設に
連絡を入れてくれた。
「どんな時間に起こった出来事であっても それはそちらの落ち度でしょう?
こんな ご高齢の方にそんな大変な事 要求してるの?じゃあ、せめて謝罪は
なさったのでしょうね?本当なら そちらが付いて病院に行くべきでしょう?
違いますか?」
次の診察の日に、主任さんが来て「申し訳ありませんでした。こちらがきちんと
ポットの管理をしていれば こういう事にはならなかったのです。すみませんでした。」と謝ってくれた、と言っていた。なので「火傷の治療に付き添いは要らないけど、ポットの管理は頼みます」と話してきたそうだ。

私が運転して行ければ良いのだが、ボンスケが家庭訪問期間中で帰宅が早く、
学校で保護者面談もあって無理だった。
父と母に、タクシーを予約するように勧めた。今、タクシーの予約も1週間前で
ないと頼めないのだ。片道1万円弱。年金暮らしには辛すぎる。
投資信託を一部払い戻した。コロナ直後に大きく値を下げた時 スポット購入しておいて良かった。45%利益出た。よし、今 使いどきだ。

両親は週に2回、タクシーを使って火傷の治療に付き合い、父は毎日 私の運転で
消毒と点滴に行く。
翌週になって 父の消毒は週に3回になった。指も切断せずに済んだ。
あとは傷が治るように消毒しながら待つしかない。まだ運転はダメだけど。
叔母の火傷の治療に行く原資が 心許なくなってきた。
「あたし、貯めてあるの。それ 使っていいよ。」と叔母が言う。早く言え!
頼むわ(泣)。

3週目の金曜の朝 今度は 義父が電話してきて
「今日、田植えやるで。」という。
いやいや、今日は金曜日ですがな。夫は会社でっせ。
「いやだって、それ、ほれ、あのイモートワークずら?」
「へ? 芋? イモって? あ、リモートワークの事?」
「ほうせ、それそれ。イモーってやつよ。」
「いや、だから今は、新人研修で出社してますから、家に居ませんよ!」
「なーにー!!!?親不孝もんだな!!!」
そうくるか?こっちは!「明日なら大丈夫ですよ。」というと
「ふん、明日はやらねぇ。どうせ雨ズラから」という。
いや、天気予報では明日は晴れるの。日曜日は雨なの。やるなら明日なの。
夫にメールして「じいちゃんこう言っとる。」というと「ほっとけ」と返事。
ほっとくんかい?

ところが翌朝5時前、いきなり電話が鳴って「やるぞ!」
何を?「田植えさ!」昨日、やらんって言うてたやんか。夫に言ったら
「甘いな、お前は。」
ふ、ふざけんな!甘いってナンヤネン。甘くないわ、コラ!!ど突くぞ!!
結局 田んぼの水が多過ぎて(シロが深いという)午前中は出来ず、午後は
夫が田植え機の操作を忘れちゃって大騒ぎ。午後3時から6時まで掛かって
なんとか田植えが終わったのでした。思い切り水をかけて田植え機を洗った。
ついでにアホぼんと夫にも水をかけてやった。

4週目に新型コロナワクチンの予防接種の接種券がきた。予約の電話は繋がるわけがない。だから最初から LINEで予約。無事、予約完了。はぁ、疲れた。
母も父も持病のお医者さんに行く。運転が出来ないから私が連れていく。
買い物にも行きたい、こうしたい、あぁしたい。要望は増えていく。
色々なスケジュールを カレンダーに書き込みながら過ごしていく。
毎日、スケジュールを確認して 予定を組み直して、ボンスケや夫の
スケジュールとバッティングしないように気をつけていく。
ずっと気を張ってた。

そして今月末は 学校の運動会がある。ボンスケは運動オンチで徒競走は苦手。
なのに、今年は学年でリレーもある。そのストレスが半端ない。
家で有料放送のチャンネルで 見られない番組を予約して その真っ暗な画面を見ながら「いつか、映るんじゃない?」などと言っていた。
そして週末の度に、夫とチャンネル争い、録画予約争い。もうウンザリ。
金曜日の夜は、どうしても 何か事件が起こる。先週は テレビの録画争いが
ついにエスカレートして 家庭内暴力に発展しそうになった。
もう、勘弁してくれ。玄関の郵便ポストが ボッコボコになってしまった。
かわいそうに。

5週目、朝から両親を連れて買い物に行き、昼には母の医者に、夕方は父の消毒に
行く。
ぎっちり詰まったスケジュールの合間に、給食のパンの代わりに米粉のパンを
焼く準備をして、ゴパンにセットする。帰宅して細切れに家事をして、また出かける。
とうとう、昨日の午後は、倒れた。もう起き上がれないほどになった。
もうだめだ。これはアカン。ほんまにアカン。起き上がれん。
家事もそこそこに寝た。
寝たけど。疲れは 全然 取れない。
ついでに 夫とボンも 早く寝た。なんでか知らんけど 早く寝た。
そしたら、今朝は5時前に起きおった!!なんでやねんな!!コラっ!!

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