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アンチ アンパンマンな理由

小さい子供を持つ親なら 一度はお世話になったであろう、アンパンマン。
小さい子供なら 誰でも アンパンマンが好きだと思っていた 私。
でも 自閉症の特性のある我が子は、アンチ アンパンマンでした。

まだ言葉も話せなかった頃から テレビでアンパンマンがあると見せてました。
けれど…見続けているうちに あることに気がつきました。
それは、アンパンマンが出てくると 怒る。
バイキンマンだけが出てくると 喜ぶ。

バイキンマン好き、なんて 変わってるなぁ。
これが我が子の個性なら 仕方ないか…と 半ば 諦めてました。
自閉症の診断が出て 療育に通い始めて 言葉の獲得が多くなって
自分の思ってることを話せるようになってきた ある日。
療育で 先生が手遊びで トントントン、アンパンマンとやって見せたら
即刻 拒否!!! その拒否っぷりが 半端なくて。
ソッポを向いて 腕を組んで 怖い顔して「いやら!やらない!!」という。
先生は「そうなのね、良いよ。」って笑って許してくれたけど 私にとっては
療育で 皆んなと同じことが出来る様にならないと、保育園にも入れない!と
必死でしたので 困ったなぁ。どうしよう…って 深刻に受け止めました。

それから 何ヶ月かして また アンパンマンの手遊び歌がありました。
すると「いやらけど、やる」と自分から言って アンパンマンのところだけ
イヤイヤやって それ以外は 楽しそうにやってました。

それから半年後くらいに 保育園に入園。支援の先生が ついて下さって
困りごとには 積極的介入で 保育園の生活に 少しずつ馴染んでいきました。
と、ある日のお迎えの時。先生から 意外な話を聞きました。
「お母さん、Rちゃんって アンパンマンのこと、嫌いなんですね」
「え? あぁ、やっぱり そうでしたか」
「あ、お気付きでした?」 
「えぇ、なんとなく、ですけど。」
「理由は 聞かれました?」
「え? 理由ですか? いえ、聞いて無いです。理由、あるんですか?」
「あるんですよ! それも 大人が唸るような 理由が!」

お昼寝の時に 少し早く目を覚ました息子。
でも 我慢してお布団で横になっていたので、先生方が察して ご褒美として
プレイルームに連れてってくれたそう。すると アンパンマンのオモチャがあり
それで遊ぼうと促したら 意外な答えが返ってきたと。

「僕ね、アンパンマンって ズルいから 嫌いなの。」
「へぇ。どんな所が ズルイのかなぁ?」
「だってね、ジャムおじさんが新しいお顔にしちゃうと 元気が出るでしょ。
アンパンマンは、新しいお顔になれるから、良いことが出来るんだよね。
お腹を空かせた人に 自分のお顔を分けてあげられるのは、新しく作って
貰えるって知ってるから、でしょう? だから 良いことが出来る。
でも それは ズルイよ。
だって バイキンマンは 新しいお顔にならないでしょ? お顔が新しく
作れないから 悪いことしかしないと思う。
戦う時も そう。疲れてるのは同じなのに、バイキンマンには 助けてくれる
人がいないでしょ? だから 何でも自分で作るし。そこが凄いと思うんだ。
だから 僕は バイキンマンの方が好き。」
それを聞いた先生は 息子を抱きしめて
「そうだよね。そうだよね。それは 確かに ズルイよね。先生は それで
良いと思うよ。Rちゃんは 気がついたんだね。凄いね。」と言ったそうで。

子供の番組として 正義ってものを教えるって意味では 確かにその通りの番組
なんだけど 同じ土俵に立てないながらに 必死で戦ってるバイキンマンの方が
実は凄いんじゃないかと気づいてしまった息子。アンパンマンは 助けてくれる
仲間がいて、顔が新しくなれば 生まれ変わったように疲れもなく、強くなる。
でも あのまま戦い続けたら 本当は バイキンマンの方が強いのに!!と
思った息子。孤立無援ながらに 必死で生きてる姿を 自分と重ね合わせたか
どうかは わかりませんが、きっとずっと 何かを感じながら居たんだろうね。

ちなみに 小学生になったら 「本当はバイキンマンが好きだけど、それを
いうと皆んなが えぇ〜って言うから、みんなには ナイショなの。」と
アンチ アンパンマンは 秘密にしてる模様。
そして アンパンマンの強さの秘密である、助けてくれる仲間がいる、という
ことが とても大切だと分かった息子は、お友達と どうやったら積極的に
交流できるか 考えたりしてる。
でもそれは、あの時 アンチ アンパンマンを打ち明けても 抱きしめて
「それで 良いんだよ」と言ってくれた 先生方のお蔭だと 母は感謝して
います。

そういう 誰も 気付かないところに気付いたり、
誰も 見ない所を ちゃんとみてる 貴方の目の付け所は、良いと思う。
母ちゃんは、そういうところも 大好きです。



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