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引っ越しと複業編集長

言葉を取り戻すということ(またははじめましてのご挨拶)

大好きな場所からの移動

コロナ渦中に引っ越しをした。
第一回目の緊急事態宣言中だった。うららかな4月の日曜日の昼下がり、スーパーから帰ると不動産屋の男性が、住民の方ですか、実はこのマンションを建て替えることになりまして……と話しかけてきて、今後のことや立ち退き料などの説明をされ、あれよあれよとサインをすることになった。

その家をとても気に入っていたし、ライフスタイルの変化(転勤、転職、結婚、出産etc.)がないかぎり、自分から出ていくことはなさそうだなあなんて感じでのんきに暮らしていたので、突然別の家を探すことになり面食らった。

数日間はふてくされていたが、どうせならもっといい家に住もうという欲望がわいてきた。いくつもの不動産サイトやアプリをチェックして、見学の予約をいれ、4軒目で即決した。日当たりがよくて、広くて、古くて、その時住んでいた家に似ていた。好きな雰囲気だった。屋上に自由に行けることも決め手となって、そこに住み始めてもうすぐ1年が経つ。

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もう取り壊されてしまった部屋

目と魂の休息場

今の出版社に勤めて9年になる。
大学を卒業して、会社はいくつか変わったものの編集者という職種にこだわってきたため、気づけば(おそろしいことに)17年ものキャリアを築いてしまった。メインの仕事は雑誌だけれど、企業の広告やカタログ、ウェブサイトも作るし、要は何でも屋だ。それでも飽きずにやってきたのは、ルーティンがないからだと思う。毎回新しいチームで、知識や発見、経験を得る。勉強したことはだいたいすぐに忘れるのだが、それでも何かしら自分の人生の肥やしとなっていると信じたい。

明確な人生の目標もなく、とにかく自由であることと、楽しいことを選んで生きてきた。編集者の労働時間は長い。その時間を不要なストレスに耐えながら生きるには、人生は長すぎる。朝は遅く、夜も遅い。出張もあるし、休日出勤もある。不規則な毎日をなるべく健康に生きるために、私にとってもっとも重要なのが「家」なのだ。

座り心地の良い椅子を新調し、この部屋にふさわしいテーブルを3ヶ月間探してようやく見つけた。ソファもテレビもプロジェクタもゲームもない。増えていくのは本と茶器と観葉植物くらい。好きなものしか置かないと決めている。そのことがなによりも自分の目と魂を守る。リモートワークなんてとんでもない。だから会社まで徒歩圏内の立地を選んだのだ。

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2年前に弘前で見た桜

すこしだけ新しい挑戦をする

シビレのSさんに「複業編集長」をやらないかといわれたとき、日々の仕事さえ溢れているのに、片手間で編集長という重責は担えないとはっきり言った(彼女は古くからの友人なので遠慮がいらない)。それでもSさんは引き下がらない(彼女は柔らかい雰囲気のわりに、やりたいことは必ず押し通す頑固さを備えている)。

「“複”業だからこそできることがきっとあるよ、『ジブンノメディア』を使って、自分が考えていることを発信してみたら。大丈夫、ノールールだから」

Sさんがそう言ったとき、心が動いてしまった。

編集という仕事は、誰かの言葉を届けることだと考えている。いくつもの企画を同時進行で動かしていると、ふと、自分自身が何を思っているのか忘れそうになるときがある。取材で伺う人の物語に耳をすませ、感銘を受けたところを記事にする。もともと自分の話をするよりも人の話を聴くほうが好きな性分だったから、この仕事は適正だとずっと信じていたのだけど、自分の言葉が枯渇しているかもしれないという危機感にも気づいていた。

どこかで変化を求めていたのだろうか。引っ越しをして、自分の快適な場所が整ったことで、もう一度、自分が考えていることと向き合いたくなったのかもしれない。

誰かになにか役に立つ情報があるとは思わないけれど、東京で、なんとか自活してきたものとして、少しずつ、自分のなかの言葉を取り戻せたらいいと思っている。春は新しいチャレンジをするのにいい季節だ。ノールールだっていうしね。


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ジブンノ「」複業編集長 齋藤どんぶり
東京出身、東京在住。戌年。編集プロダクション、広告代理店、出版社で編集者としてのキャリアを形成。好きな食べ物は餃子とお餅とビール。趣味は本を買うことと中国茶と散歩。もう一度旅したい国はインド、一度住んでみたい場所は金沢と上海。

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