シャリーノ『6 Capricci』

たまには存命の作曲家の曲を取り上げる。1947年生まれである。

wikipedia英語版を見ると来歴についてある程度まとまっている。

シチリア島パレルモ生まれ。12歳から作曲を始め、アントニーノ・ティトーネやトゥリ・ベルフィオーレのレッスンを受けたが、ほぼ独学らしい。

大学を出てから1969年にローマに移り、サンタ・チェチーリア音楽院でフランコ・エヴァンジェリスティの電子音楽コースを受講した。1977年にはローマからミラノに移り、1982年まで音楽院で教えていた。ウンブリア州のチッタ・ディ・カステッロに移り住み、現在に至る。その頃には作曲家として十分やっていけるようになったようだが、時折指導を続けているそうだ。主な教え子にフランチェスコ・フィリデイ、ルチア・ロンチェッティ、ダヴィッド・モナッキ、マウリツィオ・ピサーティなどがいるようだが、ちょっと詳しくないのでわからない。

1978年から1980年まで、ボローニャのテアトロ・コミュナーレ・ディ・ボローニャ、サンタ・チェチーリアアカデミック(ローマ)、バイエルンのアカデミック・オブ・ファイン・アーツ、ベルリンのアカデミック・オブ・アーツの芸術監督を務めた。

2013年よりキジアーナ音楽院で教鞭を執り、それ以前は1983年と2002年に作曲クラスを担当。最近では、ピエール・ド・モナコ賞(2003年)、フェルトリネッリ賞(2003年)などを受賞している。また、ザルツブルクが新たに創設した国際作曲賞であるザルツブルク音楽賞(2006年)の第1回受賞者でもある。声楽と器楽の可能性を更新し、その音素材の特異性が評価され、2011年BBVA Foundation Frontiers of Knowledge Award of Contemporary Musicを受賞している。


…という感じだが、読んで訳してからオペラシティのウェブサイトにより分かりやすくまとまった紹介があった。

https://www.operacity.jp/concert/award/judge/profile2011/index.php


取り上げたいと思っているのは6つのカプリース。

バイオリンを弾く人ならカプリースという形式の時点で超絶技巧のイメージを持っていると思うが、そのど真ん中を突き抜けていく作品である。

https://youtu.be/I9CZeR1TX6U

チッタ・ディ・カステッロに居を移し作曲に専念してからの作品で、サルヴァトーレ・アッカルドと協力して難解な奏法をうまく自家薬籠中の物としたようだ。

これだけ歴史の古い楽器で、楽器自体に手を加えることなく新しいテクニックや音響が開発されること自体、奇跡的だと思うが、それをバイオリニストが内輪で盛り上がる以上の意味のある立体的な響きを作り出したことが素晴らしい。

その昔、大学のアマチュアオーケストラをやっていた頃、同級生のバイオリン弾きと「フラジオレットって我々の世界では意味があるかもしれないけれど、楽器を全く知らない人からしてみれば、よく分からないかすれた汚い音を出しているだけなのではないか?」という疑問を投げられて考えこんでしまったものだが、こうして超絶技巧を聞いているとそうでもないような気がしてくる。


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